持続可能、そして世界で活躍できる子どもを育てる教育を考える連載「インターナショナル教育とSDGs」、第2回目は「動物としての人間に本当に大切なもの」になります。
SDGs(Sustainable Development Goals)、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されていますが、では、そのS(Sustainable)、即ち「持続可能な」とは何が、または誰が、「持続可能」なのでしょうか?よく「持続可能な地球のため」とか「地球を救おう、守ろう」ということを耳にしますが、気温が少々高くなろうが、気象の変化が激しくなろうが、はたまた、人間の間の貧富の差が大きくなろうが、地球は、「持続可能」です。
現在、推定されているように太陽の寿命が100億年くらいで、残り50億年くらいだとすると、地球もあと50億年くらいは「持続可能」であるとも考えられます。ちなみに、人間(ホモ・サピエンス)の歴史は、これまで46億年と言われる地球の歴史の中で、20万年程度だと言われています。人間の存在期間は、地球が「持続」してきた時間の長さから考えると、ほんの一瞬の出来事です。
即ち、そもそも地球は、人間が絶滅し地球上からいなくなっても存在し続けますし、地球という大きな存在を前に、地球上に住まわせてもらっている一(いち)生物の分際で、「地球を救おう」などと言うのは、少し傲慢な感じもします。このことから考えると、SDGsのS「持続可能な」を目指すのは、地球ではなく、「人間の快適な生活」だと分かります。
そして、この「人間」は、地球に生存する動物の一種です。このことは、都会で生活し、人や人工物ばかりの中で生活を送っていると、忘れがちであったり、意識することがあまりなかったりするかもしれませんが、紛れもない事実です。その為、動物である人間が生きていくには、最低限、水や空気、食べ物が必要となりますし、ある程度の快適さを求める中で、住まいや衣服が必要となります。
無人島に漂着したという設定のプロジェクトです。まず、水を確保するために、(漂着したと想定された)ペットボトルなどの透明容器を使用して、空気中の水分を昼夜の寒暖差を利用して集めました。この結露については、理科室で実験し、その原理、即ち、温められた空気が冷えると水が出てくることについて学びました。
次に、食べ物を確保するため、ペットボトルを加工して、魚取り用の罠を作り、実際に学校の水槽で魚が掛かるかどうか実験しました。また、陸上の小動物を捕まえるための単純な罠を考えたり、身近な食べられる植物について学んだりしました。
そして、廃材を利用しての住まい作りでは、建てるのに最適な場所や方向を考え、友達同士で話し合いながら作りました。また、衣服を作る際には、どの素材が保温性に優れているかについて、ゆで卵を包んで冷蔵庫に入れ、ゆで卵内の温度変化を計測して学びました。更に、調理や暖を取るために必要な火についても、火起こし器を使ってみて、どれほど火を起こすことが大変かも体験しました。
そして、このことは、SDGsに関する取り組みを実施していく上で、その根本となる大切なものだと考えています。現在、SDGsに関して、世界各地で様々な取り組みが行なわれていますが、それらが、どんなに大規模で、どんなに高度な技術を用いた取り組みであっても、その実施に当たっては、まずその根幹として、何(誰)の為の取り組みなのか:即ち、地球の為ではなく「人間の快適な生活」の持続可能性を目指したものであること、そして、そのために、最も大切で守ろうとしているのは何なのか(空気や水、食べ物など)を頭の中に明確にした上で、取り組んでいくことが必要だと考えています。
サイエンス顧問:村上正剛さん
オーストラリア、マレーシア(ボルネオ島)にて環境教育に従事。東北大学、北海道大学の他、カナダやオーストラリアの大学(院)にて、人と自然との関わりや科学技術コミュニケーション等について研究。現在も引き続き京都大学にて研究中。