問題です。色とりどりのカケラを内包したこのアクセサリー、どんな素材でできているでしょう?──おそらく正解できる人は少ないだろう。実はこれ、マネキンの塗膜や店舗装飾用品のカケラなのだ。製作するのは、マネキンや什器を製造する『七彩』。同社ではブランドの雰囲気に合わせマネキンをさまざまな色に塗装する。しかし、ノズルから噴射される塗料の約7割はオーバーミストとなり固まって塗装場内に蓄積される。固形化した塗膜が地層のような美しさを秘めていたことから、素材として再利用することにしたという。マネキンをメンテナンスする際に使った樹脂や役割を終えた装飾ツールなどと合わせ、独特の表情を持つ素材に生まれ変わらせている。
担当者の大島薫さんは、「衣料品の廃棄が問題となるなか、私たちもファッション業界に携わる一員としてできることをしたいと考えました」と話す。どんな業界にも、デザインを加えることで唯一無二の輝きを放つ廃材が眠っているのかもしれない。
すべて手づくりの「一点物」。素材の持つ美しさや意外性をフックに、ファッションディスプレイをめぐる問題を提起する。2021年秋に販売を開始したばかりで、毎年新しいデザインを発表していく予定。商品はオンラインストアから購入できる。
●ピアス3500円〜、キーホルダー3980円〜、ブローチ2500円〜
(七彩 www.nanasai-online.jp/pages/quint )
photograph by Jiro Matsushita text by Emiko Hida
記事は雑誌ソトコト2022年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。