徳島県・佐那河内村

連載 | SUSTAINABLEDESIGN | 徳島県・佐那河内村

2022.04.17

淡い紫色の花が物語る暮らし。

5月頃、四国の山村や瀬戸内の島々を歩いていると、淡い紫色の花を見かける。桐の木である。材の内部が独特な気泡構造のため、最も軽い国産材で、湿気を通さず、燃えにくく、変形しにくい。江戸時代、安政の大地震のあと、燃えにくく洪水に遭っても水に浮き中身が無事であったため、桐箪笥が広まった。そんな材木としてとても優秀な桐の木だが、その姿を見ると、もうひとつの物語が思い浮かぶ。

江戸時代の本草学者・貝原益軒の『大和本草』にも「女子ノ初生ニ桐の子ヲウフレバ、嫁スル時其装具ノ櫃材トナル」と記されている。昔の農村では、女の子が生まれると桐の木を植える習わしがあった。15〜20年で成木となるため、その子が嫁入りする際にその木を材にして箪笥などをつくり、嫁入り道具とした。今は限界集落と呼ばれるような人の少ない地域でも、桐の花が咲いているのを見かけると、かつてこの地に女の子が生まれた際に植えられたものかもしれないと、思いを馳せる。 

徳島県唯一の村・佐那河内村では、材を炭にして、粉を油で練って火傷の患部に貼り、民間薬としていたと聞く。ほかの地域では、化粧の眉墨や研磨材として使われていた。地域によって植物と人の関わりは多種多様である。

ゆう さかな
神奈川県茅ヶ崎市出身のデザイナー。2010年、香川県高松市に移住。WEBメディア『物語を届けるしごと』では四国・瀬戸内海の美しい風景を世界160か国以上に発信している。https://yousakana.jp

photograph & text by You Sakana

記事は雑誌ソトコト2022年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。