米光一成さんが選ぶ「ゲーム╳ウェルビーイングを感じるアイデア本5冊」

特集 | 続・ウェルビーイング入門 | 米光一成さんが選ぶ「ゲーム╳ウェルビーイングを感じるアイデア本5冊」

2022.07.17

内容がおもしろいのはもちろん、プレイする人たちもご機嫌になれるゲームをつくり続ける米光一成さん。ゲームを楽しむことと、人がその場を「居心地がいい」と感じることには多くの共通点があるといいます。その理由や背景を考察できる5冊を選んでもらいました。

(左から) 1. アファンタジア ─イメージのない世界で生きる / 2. サードプレイス ─コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」
(左から)3. 日本の路線図 / 4. タロットと占術カードの世界 ─起源から21世紀まで / 5. 大人が楽しい トランプゲーム30選

ゲームを楽しむ時間や空間のことを、「マジックサークル」といいます。その中では日常生活の権力や生まれ持ったものに関係なく、誰もがゲームのルール上においてフラットな関係になれます。またゲームでは、失敗したり負けたりしても、ルールが明確なゆえになぜそうなったのかわかります。失敗してもそれを克服できる方法論をその場にいるみんなが共有できることは、ウェルビーイングでいるためには大切なのではないでしょうか。

『サードプレイス』は、第一の場所である家、第二の場所の職場、それに続く第三の場所、肩書を気にせず気軽にゆるく集えるカフェや居酒屋などのサードプレイスの機能について語った本です。これを読むと、ゲームはまさに純粋にその瞬間を楽しむためだけにプレイする、場所を限定しないサードプレイスなのだとわかります。ゲームでは外の不平等を持ち込むことはないし、終わった後の結果も持ち出しません。第一、第二の場所で、ふだん一緒にいる人の意外な素顔を見られることが息抜きになることもあるでしょう。

つくり手側としてウェルビーイングを意識できた本は、『アファンタジア』です。イギリスのエンジニアであったアラン・ケンドルが本書の中で定義した「アファンタジア」というのは、心的イメージを持てない人のこと。私もその傾向があるのですが、そういった人たちのインタビュー集です。さまざまな身体的、能力的資質や特徴を持つ人たちが、同じルールを共有する難しさに向き合うことは、ゲームを制作するにあたっては避けて通れません。そういった特徴のことを知ろうとするのは、より深く人やものを理解するのに役に立つと、この本を読むと感じます。また、私がゲームのルールや構造に興味を持つのは、映像的なものを補完するためなのかもしれないとも感じました。一般的にはマイナスと見なされがちな特徴ではありますが、環境によってはプラスに作用することもあるのです。

そんな私の特徴にも関係するのかもしれませんが、ゲームのつくり手として学ぶところが多く、プレイヤー目線でも楽しめる本に、『日本の路線図』があります。路線という複雑極まりない構造を簡潔にわかりやすく表現しようとするのは、絵柄や数字で情報を示す際の参考になりました。社会の中でただただ実用として使っているものでさえ、見方や示し方によってはいろんな楽しみ方ができるという実感もできました。

よねみつ・かずなり●ゲーム作家。代表作に「ぷよぷよ」「はぁって言うゲーム」「変顔マッチ」「BAROQUE」「記憶交換ノ儀式」など。新作に「あいうえバトル」「むちゃぶりノート」。デジタルハリウッド大学教授。池袋コミュニティ・カレッジ『表現道場』の道場主。

photographs by Yuichi Maruya
text by Kentaro Matsui, Reiko Hisashima, Sumika Hayakawa, Ikumi Tsubone, Yoshino Kokubo & Maho Ise

記事は雑誌ソトコト2022年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。