わかったようでわからないSDGs。それって本当にSDGsとつながっているの? と疑問に思う一方で、こんなところにまでSDGsが浸透しているのか! と感心したりの繰り返し。そんなSDGsとの距離を縮めるために、SDGs改めジーズという愛称でおもしろがりながら、日々の生活の中で見聞きしたジーズなアレコレをつぶやいたりつっこんだりぼやいたり。
#10 軽井沢の薪焼料理店に行った気になって、りんごの木を思う
このお店は新聞や雑誌が充実していて、お目当ての朝刊と週刊誌を読みあさるのが常なんだけど、この日はどれも出払っていたので、あえて読みくらべできそうな婦人雑誌2冊を手に取って席に着いた。
どちらもずしりと重みのある雑誌で、年齢的には確実にわたしも読者層に属している。誌面は優雅さに満ち溢れたヴィジュアルで、わたしの日常とはこれっぽっちも接点がなさそうな場所やお店が紹介されている。富裕層や世帯年収の高い家庭のご婦人の姿が目に浮かぶ。
K画報さんは軽井沢特集。F画報さんは和食店特集。ともに盛夏ならではの涼感を誘う企画だ。
ページをめくり、わたしは目を閉じる。そして、高級そうなレストランの扉を開け、案内されたテーブルに着き、最初のグラスを片手にしながら一皿目が運ばれるのを待っている。
「お待たせしました。ご注文のモーニングセットです」。
お得意の妄想劇場とはいえ、優雅な気分に浸って極上の料理に舌鼓を打つはずが、一瞬にして現実に戻された。
しかし、妄想レストランを楽しむのはわたしの自由だ。せっかくだから、何軒か訪れてみようかしら、ウフフ。そんなことをしていたら、なにやら小さなジーズと触れ合ったような気がしたのです。
まず一軒目は、軽井沢・美食探訪として紹介されている薪焼料理のお店。ここではりんごの倒木を利用して食材を焼いて提供している。
ところで、なぜにりんごの倒木なのか。
思い起こせば、2019年秋。台風上陸で長野・千曲川が決壊。新幹線の車両が水に浸かり、あたり一面、泥沼と化すほどの氾濫被害、浸水被害に見舞われ、その様子ははっきり記憶している。ちょうど台風の1週間前、長野を訪れたばかりだったこともあって、テレビに映る景色は信じがたいものだった。
大きな被害を受けたりんご農家も多く、雑誌によると「生産者が丹精込めて育ててきたりんごの木が倒れたままなのを見て、それをどうにか生かせないか」との思いから、りんごの倒木を使った薪焼料理が生まれたとある。
無残にもなぎ倒されたりんごの木が、めぐりめぐって軽井沢を訪れる美食家たちの舌を楽しませているのだ。
手に負えない自然災害や気象災害によって、地球環境に不具合が生じるのは今に始まったことではないけれど、相次ぐ異常気象や温暖化問題にひとたび意識を向ければ、もうちょっと地球に優しくできるかもしれないなと、ソムリエに次のワインの相談をしながら考えていたのでした(妄想で)
次回は大分・別府で鱧を食します(もちろん、妄想で)。
手仕事、アート、茶の湯、お酒と器など、趣味と暮らしにまつわることを感興の赴くままに。ソトコトNEWSでは「これってSDGsかな?」と思うことを”ジーズな日常”と称して筆を走らせています。ときどき脱線しがちですが、”Please don’t bother”。東京在住。青森県生まれ。