わかったようでわからないSDGs。それって本当にSDGsとつながっているの? と疑問に思う一方で、こんなところにまでSDGsが浸透しているのか! と感心したりの繰り返し。そんなSDGsとの距離を縮めるために、SDGs改めジーズという愛称でおもしろがりながら、日々の生活の中で見聞きしたジーズなアレコレをつぶやいたりつっこんだりぼやいたり。
#11 大分は別府にて。鱧の骨切りならぬ、骨抜きのスペシャリテに出会う
前回(#10)は軽井沢でりんごの倒木を使った薪焼料理を味わった。そして今回は食通が通いつめる和食店特集のF画報さんの誌面に身を委ね、大分・別府にある次世代の和食料理人の店へ(何度も言うようだけど、妄想です)。
料理人いわく「せっかく別府に来てもらったのだから地元の食材を存分に」。こうした地産地消を謳うお店は全国にたくさんある。地産地消ってことも、すでにジーズだけど、ここでわたしの目にとまった一皿が氷の器に盛りつけられた鱧キャビア。
正確に言うと、目にとまったのは「サステナブルな価値を生みました」という料理の説明にあった文言で、一瞬「そこにジーズはあるんか?」と、どっかで聞いたようなフレーズが口から出ていたのです。
そんなわけで、ジーズの素といってもいい「サステナブル」というワードと鱧の関係をさっそく深読みしてみることにした。
鱧といえば骨切り。熟練した技を要すると聞く。記事によると、こちらの鱧。骨切りではなく骨抜きで処理を施しているそう。骨切りではなく、骨抜き? はてさて?
最初に言っておくと、わたしがこれまで鱧を口にしたのは数えるほどで、骨切り、骨抜きと聞いても正直ピンとこない。
調べるに、育ちすぎた鱧は市場価格が劣るとされ、骨も太く、個体差はあるが通常の骨切りでは湯引きで食すには適していないらしい。
食べられないことはないけど、おそらく規格外、不適合サイズの厄介モノめ! と言われ、嫌がられる鱧が存在するのだろう。嫌われた鱧の行く末までは知るよしもないけれど、破棄されずにしかるべき加工品かなんかになっていたなら太った鱧も救われるというもの。アーメン!
そう思うと、太った鱧じゃないけど、食べられるにもかかわらず、規格外ってだけで流通システムに乗らずに破棄される野菜や果物だって一緒だ。形がいびつでも、ちょっと曲がっていてもいいじゃない。みんな違ってみんな美味しいじゃない。そう言って、訳あり難あり食材をためらわずに手に取って料理を楽しめばいいじゃない。太った鱧から脱線しちゃったけど、いいじゃない。
いいじゃない音頭から、再び和食店に戻ろう。
こちらの料理人は、大きくなりすぎたゆえに骨切り不適合なサイズの鱧を丁寧に骨抜きし、見事な一皿に仕上げておられる。
わたしの憶測でしかないけれど、破棄されるかもしれない海の命に救いの手を差し伸べ、食材として活かし「サステナブルな価値を生んだ」のがスペシャリテの「鱧キャビア」ってわけね。つまり、そこに、その一皿にジーズはあったのだ。
鱧とサステナブルな関係を読み解きながら、おまかせコース2万円超えの和食店をあとにしたのだった(妄想だって、いいじゃない)。
手仕事、アート、茶の湯、お酒と器など、趣味と暮らしにまつわることを感興の赴くままに。ソトコトNEWSでは「これってSDGsかな?」と思うことを”ジーズな日常”と称して筆を走らせています。ときどき脱線しがちですが、”Please don’t bother”。東京在住。青森県生まれ。