環境意識の高い福岡県北九州市で行われている、資源循環プロジェクト。回収した古紙を新たな紙にして再び使用するという取り組みに、地域の企業・学校・団体が参画している。
再生紙を生むサイクルを 小さくして、地域を巻き込む。
そんな北九州市で2020年10月より『エプソン』が取り組み始めたのが、「KAMIKURU」の愛称で親しまれている『紙の循環から始める地域共創プロジェクト』。地域の自治体・企業・学校で使用済みの古紙を回収して、新たな紙に再生して再び使用する取り組みだ。紙の再生に際して、同地区の『九州ヒューマンメディア創造センター』1階に置かれた乾式オフィス製紙機「PaperLab」が活躍している。
これは、『エプソン』が開発した古紙から新たな紙を再生する機器で、紙に衝撃を与えて線維化し、結合して成形するドライファイバーテクノロジーを搭載している。機器内の湿度を保つために少量の水を使用するが、それ以外の水は不必要。使用済みの紙を投入してから新たな紙ができるまでにかかる時間は、わずか約3分で、1時間で約720枚(*)の紙を生み出すことができる。
*90g/㎡ A4サイズの場合。
「『エプソン』はプリンターを届ける企業として環境に対してどう社会的責任を持つか、紙を限りある資源としてどう扱うかを考えて、水を極力使わない乾式技術での再生紙化に取り組みました」と『エプソン販売』の徳永裕美さんは説明する。デジタル化が進み、タブレット端末などの普及を背景にペーパーレスが加速する今、それでもやはり紙が必要になる場面は出てくる。『PaperLab』は、オフィスなどに置いて企業内で製紙を行うことができ、必要な時に必要な量だけ再生して使う。これにより新たな紙の購入を減らし、再生紙を作って再び使うという資源を循環させる取り組みに誰もが参加できる、そんな社会を可能にしているのだ。
「KAMIKURU」循環図
co-creation_1 KAMIKURU & NONPROFIT ORGANIZATION
障害のある人が、新たな経験を積んで自信につながる。
『KAMIKURU』を通じて、関わる企業や団体がこれまでにないスピードで増えてきた。いろいろな人が認め合い、心が穏やかになる社会を目指す『わくわーく』は、障害者雇用に関心がある企業の相談に乗りながら、自分たちの仕事の幅を広げていくつもりだ。
co-creation_2 KAMIKURU & DEPARTMENT STORE
百貨店に期待される環境活動の第一歩にしたい。
そんな中で出合ったのが「KAMIKURU」だった。2020年9月から参画し、各部署から発生する古紙を紙袋にアップサイクルしている。これを担当するのは同社CSR・ESG担当マネージャーの中尾裕さんだ。
「KAMIKURU」への参画後、中尾さんは月に一度自ら台車を押して約35ある本店部署を回り、古紙を回収している。取り組みから約11か月で古紙約10万枚が集まり、それが『わくわーく』の活動によって紙袋約2000枚とA4サイズの再生紙およそ2万枚に生まれ変わった。その紙袋は、本店6階にある北九州地域の特産品を集めた『きたきゅうコロンブス』で使われている。お店のロゴをあしらい、落ち着いた色のデザインだ。「お客様とのコミュニケーションになればと思い、紙袋を作りました。持ち手なしの小さな袋のほか、手提げ袋も無料のものと繰り返し使える有料のラミネート製を用意。この有償のものが一つのきっかけとなって、お客様にも環境について考えていただける次のステージに進むことができたらと思います」と中尾さん。百貨店から環境を変えるアクションが育まれている。
https://kamikuru.jp
記事は雑誌ソトコト2022年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。