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サスティナビリティ

特集 | 第2回ソトコトSDGsアワード2022

EVのバッテリーを再利用し、緊急時用の電池として蘇らせる―Rebglo.が取り組む、SDGsなバッテリーづくり

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近年、BCPという言葉を耳にする機会が増えています。これは「事業継続計画」の頭文字をつなげたもので、災害時などに企業が事業を継続、あるいは復旧させるための手立てを指す言葉です。2011年の東日本大震災以来、注目されるようになったBCPですが、この課題に電池の分野から取り組んでいる企業があります。ここでは株式会社REBGLO.の代表である村越さんと同社の加東さんに、Rebglo.の手がける電池づくりについてうかがいました。

目次

災害時の事業継続性の重要度が高まるなかで、SDGsな電池を製造しているRebglo.とは

ソトコト Rebglo.(リブグロ)はBCPに特化した、SDGsなバッテリーを手がけているとうかがっています。

村越 誠さん(以下、村越) まず、BCPという言葉が耳慣れない方もいるかと思いますので、その説明からさせていただきます。BCPとはBusiness Continuity Planの略で、日本語では「事業継続計画」となります。これはどういうことかと言うと、たとえば自然災害や火災、あるいはテロなどの緊急事態に遭遇した際、損害を最小限にとどめつつ、事業を復旧・継続させるための方法・手段を取りまとめた計画のことです。

日本では2011年に東日本大震災が発生したとき、多くの中小企業がこのBCPを持たなかったために倒産する事態となり、以後、企業の事業継続性に対して重要なファクターとして見られるようになりました。

ソトコト
 東日本大震災を原因とする企業の倒産数は、2021年までに2,000件弱とされており、その影響は2022年現代でも残っていますよね。リブグロがBCPのためのバッテリーを手がけるようになったのも、それがきっかけなのでしょうか。

村越 少し、私の経歴のお話をさせていただくと、以前、私は九州石油株式会社(現ENEOS)に勤務し、石油エネルギー事業に従事しておりました。製油所でのプラント内の業務に当たる中、部署は違いますが、アスファルトのカスを燃やしてボイラーから発生する蒸気で発電し、それを電力会社に売るという部署の勉強もさせてもらっていました。その後に退職して上京し、前職の知識や自分が大事にしたい部分を活かして事業を始めるにあたり、リブグロ(Reboot Globalization)というコンセプトを立ち上げ、そのコンセプトに付帯した事業を探していました。その時に、注目したのが電池だったんです。そして、そのときに出会ったのが、技術者として本日も同席してもらっている加東でした。

加東 重明さん(以下、加東) 
よろしくお願いします。村越と出会った当時は、自動車メーカーを退職してEVに使われるバッテリーを再利用する会社の代表をやっていました。

村越 加東から「まだ使えるのに倉庫に積み上げられているバッテリーがある」という話を聞いて、リブグロ発想でバッテリー事業を始めることにしました。リブグロという名前は“リブート”と“グローバリゼーション”のかけ合わせて作ったもので、“再起動と拡大、繁栄”を事業コンセプトに持っています。リブグロ発想というのはそういう意味ですが、現状のこの事業では、使用済みのバッテリーをリブートし、広く世の中に還流させていくという意味を込めています。

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EVの電池を再利用することで、長期間、繰り返しの使用に耐える電池をCO2を排出せずに製造する

ソトコト 村越さんと加藤さんの出会い、そしてリブグロが立ち上がるまでの経緯をうかがいました。次に、そのリブグロのバッテリーについて、お聞かせいただけますか。

村越 国は、2030年までに温室効果ガスを46%削減するという目標を立てています。しかし、私たちの日常に存在する電池というもの、これを一から製造するには電池一つあたり3tのCO2が排出されると言われています。これは、約214本の杉の木が1年間に吸収するCO2量に相当します。それを、すでに作られたバッテリーを再利用することで大きく大きく削減することが見込まれます。先ほど申しあげたBCPの重要性に注目されるとともに災害時のバッテリーなどの需要も高まっています。しかし、それにあわせて電池を作っていてはCO2の排出量の増加につながってしまいます。そこでEVの使用済みバッテリーを再利用することで、企業活動を守りつつ、環境にも配慮した健全な社会づくりができるようになります。

ソトコト とてもシンプルかつ、わかりやすくSDGsな取り組みだと感じます。BCPとは直接関係がないかもしれませんが、企業でなく個人であっても、たとえばスマートフォンやタブレット、その他のデジタルデバイスが身の回りに増えるほど、電池を使うようになっていますよね。電池の製造に伴うCO2排出を防げるというのは大きな意義があると思います。

ただ、EVで使用済みのバッテリーを再利用するということですが、リブグロのBCPバッテリーの性能はどういうものなのでしょうか。

加東 「使用済みのバッテリーを再利用する」と聞くと、やはりそういった点が気になる方も多いと思います。リブグロでバッテリーになっているのは、EVで使用されていたものなのですが、出荷当時を100とするならば、まだ70はバッテリーとしての力が残っている、あまり劣化していない電池です。バッテリーは充電を繰り返すと徐々に劣化していきますが、弊社で取扱っているEVを卒業したバッテリーは2,000回充電を繰り返しても劣化の度合いが20~30%にとどめられる、非常に優れた品質のものなのです。

ソトコト
 生活するうえで使うぶんにはまだまだ十分な性能を持っているというわけですね。

加東 また、BCPという側面においてはあくまで非常用ですから、いざという時まで使わない時間がほとんどだと思います。非常用の蓄電池の抱える問題として、使わないことでも劣化して、2年ほどで容量が大きく減ってしまうということがあるのですが、リーフのバッテリーは3%ほどしか容量が減らず、使わない状態でも長持ちします。

ソトコト 防災用品を定期的にチェックするという場合も、使ってない電池を入れ替えることはあまりしませんよね。そういう状態が続いても容量が維持されるというのは助かりますね。

村越 また、付け加えると、蓄電池は充電をしながら電池として使う場面があります。これをパススルー運用といいます。このとき、充電中の状態から電力の供給が途絶えてしまった場合には蓄電池に蓄えられた電力を使うように切り替わるのですが、UPS機能というのがあって、この切り替えを非常にすばやく、具体的には10ミリ秒程度で切り替えられます。そのため、いわゆる“瞬断”と呼ばれる電力供給が途絶える時間がなく、サーバールームのような場所でも安心して使っていただけるようになっています。

ソトコト リーフの、すべてのバッテリーをBCPバッテリーとして再利用できるのでしょうか。

加東 バッテリーは、出荷されたときは生まれたばかりの赤ちゃんのようなもので、みんな同じなんです。しかし、30%の力を失うまで使われたときには、いわば個性とでもいうべき、それぞれのバッテリーごとの特徴を持つようになっています。たとえば、何度も急速充電されたか、それとも緩やかに充電されて使われたのかといったことでも差異が生じますし、極端な話、同じ使い方をしていても沖縄で使われたものと北海道で使われたものは、それぞれ状態の電池になっています。

ソトコト 電池に個性が出る、というのはおもしろいですね。

加東 それらをSDGsなバッテリーとして再利用するうえで、選り好みをすることはできません。そのため、いろいろな状態にあるバッテリーをすべてBCPバッテリーとして再生できるようにしています。

村越 加東の話では、EVの着想というのは意外と古く、1980年代にはもう存在していました。ただ、当時は電池の技術が追いついておらず、2010年にEVが誕生するまで待たなくてはなりませんでした。ついに結実したEVのバッテリーは、技術大国であった日本の粋が集められており、古典的名作とでもいうべき、非常にすぐれた品質のものだったんです。しかし、その当時はバッテリーがある程度消耗したあと、何かに再利用するということは考えられていませんでした。いま、リブグロがEVのバッテリーをBCPバッテリーとして再生できているのには、ひとえにリブグロに協力してくれている加東ら技術者の努力があると思っています。

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電池を電池で終わらせない。新しいかたちでの再利用法や発電を通じて社会に貢献していく

ソトコト では最後になりますが、リブグロのBCPバッテリーのこれからについて、展望などをお聞かせください。

村越 日本国内に電池メーカーは約300社以上あるといわれています。しかし、そのなかでも、元となるEVのバッテリーも含めて国内生産にこだわり、クオリティの高い製品をお届けできているのが私たちリブグロの強みだと考えています。今後もBCPに訴求した電池づくりを進めていきたいと思っていますが、それだけではなく、現在は、発電機と蓄電池を合わせた発電システムを作り、よりエコな、環境負荷のかからない発電事業を促進していきたいですね。また同時に、BCPの概念を啓蒙することも、私たちの使命と考えています。より多くの企業が非常時にも安定して事業を継続できる、その助けになれるようにがんばりたいですね。

加東 いま、使用済みのバッテリーを新しいバッテリーとして再生するということをやっていますが、技術者としてはこれをさらに推し進めたいという気持ちがあります。たとえば、電池のなかにはレアメタルと呼ばれる希少な鉱物が含まれていますが、これを電池という形にとらわれずにリサイクルできるようになれば、資源に乏しい日本であっても、新しいモノづくりにつなげられるかもしれません。電池をすみずみまで新しいものに蘇らせるという夢をかなえるのが、現時点の目標です。

ソトコト ありがとうございました。

Rebglo(リブグロ)公式サイトはこちら
https://rebglo.co.jp/

村越 誠
株式会社REBGLO. 代表 
高校3年の1997年 春夏甲子園連続出場(両大会ともベスト16)
1998年 九州石油株式会社(新日石、現・JXTGエネルギー)入社
2013年 法人設立、創業。2018年に海外法人設立
2020年 3月合同会社REBGLO.設立。2021年11月より株式会社に改組
NISSANとの連携が深く、大手事業アライアンス進行中

加東 重明
株式会社REBGLO.バッテリーアドバイザー・顧問
1979年 日産自動車株式会社入社
2009年 日産自動車株式会社生産・品質担当SVP(常務取締役)
2014年 オートモーティブエナジーサプライ(AESC)の代表取締役
および日産テクニカルアドバイザー(EVおよびバッテリー担当)
2018年 LB Engineering Japan, Inc を設立
2019年 Rebglo. バッテリーアドバイザー就任後、Rebglo.と資本提携

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