社会的価値と経済的価値の両立—味の素冷凍食品が「脱フロン」と「CO2削減」の2軸で推し進めるSDGsの取り組みを聞く

特集 | 第2回ソトコトSDGsアワード2022 | 社会的価値と経済的価値の両立—味の素冷凍食品が「脱フロン」と「CO2削減」の2軸で推し進めるSDGsの取り組みを聞く

2022.12.20

調味料や冷凍食品など、「味の素」の食品を利用しているという方は多いのではないでしょうか。この味の素冷凍食品株式会社は、古くから環境に配慮したサスティナブル経営を進めてきたことをご存じでしょうか。ここでは味の素冷凍食品が20年をかけて達成したフロンガスの全廃と、2030年に向けて進めるCO2削減の取り組みについて、同社の四国工場長を務める豊田 和宏さんにお話しをうかがいました。

2000年からオゾン層を破壊するフロンの削減に着手し、2020年にフロンの全廃を達成

ソトコト 本日はよろしくお願いいたします。日々の食事でお世話になっている味の素冷凍食品さんが、どのようなSDGsの取り組みをされているのか、とても興味があります。さっそくお話をうかがえますでしょうか。

豊田 和宏さん(以下、豊田) 味の素冷凍食品ではSDGsの17個ある目標のうち、No.13の「気候変動への具体的な対策」の項目に対して、重点的な取り組みをしています。かつて、冷凍食品を扱う当社の工場では、フリーザーの運用に“フロン”を冷媒として使用してきました。

ソトコト フロンとはフロンガスのフロンですよね。子供のころから「フロンガスがオゾン層を破壊する」といったフレーズを聞かされてきました。

豊田 はい、そのフロンのことです。フロンについては1984年に南極上空でオゾンホールが観測されたのち、1985年のウィーン条約と1987年のモントリオール議定書の採択を踏まえ、日本で1988年にオゾン層保護法が制定されました。さらに2015年にはフロン排出抑制法も施行されています。フロンはその発見以前に冷媒として使われていたアンモニアなどにくらべて扱いが容易で、人体には無害なのですが、甚大な環境破壊につながるものとして40年近く前から規制されてきました。

味の素冷凍食品にはこれまで9つの工場があり、そのなかで合計47機のフリーザーを稼働させるために年間70tの特定フロンを使用してきましたが、2000年より「脱フロン」に取り組み、2006年にフリーザーの脱フロン化の取り組みを宣言しました。これまで工場の建て替えや効率化を推し進め、工場の数を9から7に、フリーザーも20機を削減、冷媒には自然冷媒を取り入れることで2020年に特定フロンを全廃することができました。

ソトコト フロンを減らしたのではなく全廃という結果はすごいですね。しかし工場の数を減らすことなどは、経営面などに影響はなかったのでしょうか。

豊田 近年、よく耳にするようになった「アセットライト」という言葉をご存じでしょうか。アセット(Asset=資産)の保有を抑え、財務を軽くするという経営方針のことです。2000年からの脱フロンの取り組みは、同時にこのアセットライト化を進めることにもなっていました。

ソトコト なるほど、環境保護への取り組みだけでなく、経営のスリム化も同時に成し遂げられたわけですね。

豊田 特定フロンについては2020年をもって製造が禁止されたのですが、すでに製造されたものを使用することに関しては2030年まで許可されています。そのため、まだ特定フロンを使用しているメーカーなどもあり、それに関して違法性などはないのですが、国内の多くのメーカーに先がけて、私たちが脱フロンを実現できたことには大きな意義があったと感じています。

ソトコト 確かに、「リーディングカンパニーである味の素さんがやっているなら」と、後に続くメーカーが現れることにも期待できそうですね。

▲味の素冷凍食品、四国工場のフリーザー用冷凍機。アンモニアや二酸化炭素などの自然界に存在する物質を使った自然冷媒が取り入れられている。

温室効果ガスを2025年までに30%、2030年までに50%削減する大目標を設定。困難な道でも「やらなければならないこと」として全社で取り組む

豊田 味の素冷凍食品が取り組む、もう一つの大きな気候変動への対策として温室効果ガスの削減もあります。脱フロンのほかにできることは何かと考えたときに、たとえばサステナブル調達やフードロスやプラスチックごみの削減などと並んでCO2の削減にも着手しています。こちらは2018年比で、2025年にCO2排出量を30%、2030年に50%削減することを目標に活動しています。

ソトコト 国の定める排出削減目標は、2030年に2013年比で46%と定められていますから、それ以上の、非常に大きな数値目標だと感じます。

豊田 もちろん、決して簡単な道のりではないと思っています。しかし、脱フロンと同じように改革しなくてはならない課題であることも間違いないため、ダイナミックな取り組みをする覚悟で進行しています。具体的には省エネ・生産性向上・外部メーカーとの連携強化・大型設備、老朽化設備の更新・立地再編という5つのアプローチを定め、各項目についてCO2削減につながるアクションを起こしています。

一つ一つの取り組みは、たとえば照明のLED化ですとか、外部メーカーの機械の効率的な使い方を学ぶといった小さな取り組みも含まれますが、大きなことをやるにあたっては、こういう細部から変えていくことも重要だと考えています。7つあるすべての工場で専門の知識を持ったスタッフを選任し、また各工場から吸い上げたアイディアをすべての工場と共有し、取り組みを進めています。従業員も熱意をもって取り組んでくれており、改善点の募集には実に639件ものアイディアが寄せられました。

ソトコト 従業員の方からもモチベーションの高さがうかがえますね。こちらは、すでに目に見えるかたちでの成果の数値などは出ているのでしょうか。

豊田 2021年までのデータになりますが、2018年比14%の削減に成功しています。このCO2の削減は、社会貢献の側面ももちろんあるのですが、近年、著しい電気・エネルギー費用の高騰もあり、無駄を削減することによってエネルギー費用を抑える必要性も高まっています。社会のためだけでなく、自分たちのためにも必要なことであるという意識でもって取り組んでいますし、これはあらゆるメーカーに共通する課題とも言えるかもしれません。

ソトコト 他人のためのSDGsではなく、自分たちのためでもあると思って活動することが重要ですよね。

社会貢献を続けつつも、美味しさを損なうことはしない。社会的価値と経済的価値の両立を今後も目指していく

ソトコト 今回は「脱フロン」と「Co2削減」という二つの取り組みについてお話をうかがいました。それでは、最後に味の素冷凍食品のSDGsについてこれからの展望について、お話をいただけますか。

豊田 味の素冷凍食品ではASV(Ajinomoto Group Shared Value)として、社会的価値と経済的価値を両立させることを目標としてきました。脱フロン化やCO2の削減により、私どもの商品により多くの社会的価値を付与し、味の素冷凍食品の商品を利用することで自然とサスティナブルなアクションにつながるようにしたいと考えています。また、これらの取り組みによって決して味を損なうことはなく、これからも多くのお客様に愛される食品を提供し続けたいと思います。

ソトコト 本日は、ありがとうございました。

豊田和宏
1969年生まれ。1988年味の素冷凍食品(株)入社、九州工場製造部に勤務。アメリカ味の素冷凍食品社や味の素フーズ・ノースアメリカ社に出向した後、生産技術開発部を経て2019年埼玉工場長、2022年四国工場長。現在に至る。また、2022年10月よりサスティナビリティー委員会を兼務。