大学では建築を学ぶも、「これからの人口減少時代に新しく建物を建てるのではなく、既存の建物や空き家を有効活用するまちづくりがしたい」と、兵庫県姫路市の家島町へ。迷ったときには本を開きながら、島の魅力を発信し、まちづくりに奮闘しています。
移住した頃、大阪市の実家に戻ったときに父の書斎で見つけたのが『日本の島再発見』です。著者の池内嘉正さんも大阪の方で、還暦を機に日本の島を60めぐって自費で出版されました。製作した印刷会社に父が勤めていたことから、この本が家にあったのです。日本のさまざまな島を訪れ、食や風景、歴史、文化、暮らしぶりなどを島民に話を聞きながら書いた旅行記で、家島も載っています。旅館の主人や船会社の社長に話を聞き、漁業のほかに盛んな採石業や海運業に着目する一方、自然が失われつつあることを指摘するなど的を射た内容になっています。
僕は学生時代、ゼミで中山間地域や離島を訪れ、「住民意識調査」を行いました。大学があった九州の島にもよく足を運びました。島ごとに異なる仕事や人々の暮らしぶりにおもしろさを感じ、島が好きになりました。この本は、そんな日本の島への興味を深め、島の多様性を未来に残したいと思わせてくれる一冊です。
2冊目は、『さびない生き方』。生き方や考え方がいろいろな角度から語られ、悩んだときに背中を押してくれます。たとえば、二流であっても、それを掛け合わせることで成功できると。一流のお笑い芸人やカリスマ美容師になれなくても、「お笑い芸人のようにおもしろい美容師」にはなれるかもしれません。「あの店の美容師、腕はぼちぼちだけど、しゃべりがめっちゃおもしろい」と評判になれば、それも一つの成功。著者の藤原和博さん自身が、「ビジネスパーソンが公立中学校の校長に」という「掛け合わせ」を実践された人ですから説得力があります。僕も「島の魅力を伝えたい」という気持ちと、「島の人から島のことを教えてもらうのが好き」という気持ちを掛け合わせたら、ちょっと変わった観光ガイドになっていました。「島にはなぜ猫が多いか?」「あの掲示板の貼り紙の意味は?」と島民に聞いた島の不思議を、その背景を交えながら語っています。
この本もわかりやすい言葉で語られているので、10代・20代の方たちにぜひ読んでほしいです。
武田祐吉訳、中村啓信解、角川学芸出版刊
三木 清著、新潮社刊
森 博嗣著、集英社刊
還暦を迎えた著者が年齢と同じ60の島を巡り、食や文化、産業や暮らしぶりを旅行記としてまとめて自費出版。日本には多くの島があるなかで、家島や皆さんの好きな島がどんな特徴を持っているのか比べながら読めます。
さびない生き方 ―戦略的人生設計のための41の方法/藤原和博著、大和書房刊
2003年に、民間企業から杉並区立和田中学校の校長に就任したことで話題となった藤原和博さんが書いた人生の指南書。真似をしまくった後に、自分流が噴き出してくるとか、若い人を勇気づけるアドバイスも多いです。