「強い農林水産業」、「美しく活力ある農山漁村」の実現に向け、農山漁村が有するポテンシャルを引き出すことにより地域の活性化や所得向上に取り組んでいる優良な事例を「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」として選定し、全国へ発信する取り組みにより、優良事例の他地域への横展開を図るとともに、地域リーダーのネットワークの強化を推進しています。第9回選定となる令和4年度は、全国から616件の応募の中からアワード受賞者が決定されました。
【特別賞ーHOPE・希望賞】天明環境保全隊
天明環境保全隊は、熊本県熊本市の30集落14団体(福祉事業所含む)のべ3,546人の隊員で構成。平成19年に設立し、様々な農村環境保全活動、文化活動を実施。天明の魅力・歴史を伝えるため、毎年継続して地域内の小中学校(7校)で出前講座や生き物調査を実施するほか、環境保全活動やしめ縄、かかし作りなどの伝統文化普及活動を実施しています。
◯今回応募したきっかけ
◯小中学校での啓発活動を行うときに大事にしているポイントがあれば教えてください
◯天明環境保全隊の活動とそのネットワークを拡大する際に一番重視していることと、無理なく活動を続けるための秘訣があれば教えてください
そして、集落間の連携により他地区での取り組みも徐々に輪が広がりました。
管内には従来よりNPO環境団体・福祉事業所・学校関係・農業団体等の16団体で地域づくり活動が展開されていて、これらを対象に、相互理解を深めるために交流を図り、連携による活動が進みました。この交流と連携を一番大事にしています。
自らの発意で今できることをできる分だけ・・という精神で、押付けでない取り組みを目指しています。
◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?
それと課題に真剣に取り組む熱意を持った仲間は必ず発掘すればいるので、全国でいろんな活動の輪が広がって欲しいです。強く・美しく活力ある農山漁村の実現に向けて県内外へ向けて伝統文化地域を繋げる活動にも力を入れて行きます。
【特別賞ースマート水産業賞】株式会社リブル
株式会社リブルは、牡蠣不毛の地と言われていた那佐(なさ)湾(徳島県海部郡海陽町)での養殖に成功し、データやアプリを活用して養殖技術の見える化(=スマート養殖)を図り、養殖技術支援と強い種苗の生産の新規産業を創出しました。IT技術を駆使した新たな水産業への理解醸成に向けて小学校などの教育現場へ出前授業や漁場案内等を実施しています。
◯今回応募したきっかけ
◯牡蠣不毛の地で養殖を成功するために苦心したこと、工夫したことを教えてください
また、オーストラリアの資材やノウハウを導入したり、国内外の養殖現場へ赴くなど、自分たちのやり方や考え方に囚われず常に最善策を模索し続け、検証結果(生産履歴)を客観的に振り返り次のステージに活かすことができる仕組みづくりを進めています。
◯小学校への出前授業や漁場案内を通した理解醸成のなかで、子どもたちはどんな反応を示しますか?
また、普段訪れる機会のない那佐湾の干潟や藻場に足を踏み入れ、水産業の現場や養殖されている牡蠣を実際に目にすることで、海陽町の新たな魅力の発見や教科書では学べない様々な気付きにもつながっています。
◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?
また、リブルの取り組みを通して、例え「難しい」「無理だ」といわれることに直面しても見識を広めて可能性を見出しチャレンジすることの大切さや面白さを次世代を担う子どもたちに伝えられたらと思います。
【特別賞ー優れた景観賞】稲倉の棚田保全委員会
稲倉の棚田保全委員会は長野県上田市にて、平成15年に周辺の自治会や市、JAと連携して設立。棚田の保全・多面的機能向上のため、五穀豊穣等祈念に松明を持って歩く「ししおどし祭り」の開催・小中学生の農業体験受入など多種多様な取り組みを実施しています。
◯今回応募したきっかけ
棚田に関心、興味を持ってもらい「カカワレルタナダ」に関わる新たな仲間を拡大したいと考えました。
◯棚田を活用した多種多様な企画を実施されていると思いますが、イチオシの企画について立ち上げた経緯と、推しポイントを教えてください
棚田は高低差があり、そこでの農作業はきつく大変であるが、素晴らしい環境の下、スポーツやアウトドア感覚で楽しむのが農作業体験です。
「棚田CAMP」は4月上旬と11月上旬に田んぼ内で、棚田の段差を活かしたキャンプイベント。農閑期の棚田の有効活用にもなり、稲倉の棚田から始まった企画です。
また、子どもたちが棚田に関心・興味を持ってもらう為に「泥んこASOBI」「焼芋FIRE」を企画。代掻きや野焼きの農作業を子ども向け体験イベントとして始めました。他には、棚田周辺の竹林を利用した竹提灯の製作も好評を得ています。
◯棚田により消費者ニーズに合わせたコースを展開していくなかで、どんな点を工夫されているか教えてください
また、眺めるだけの「ほたる火祭り」も、松明や竹提灯をもって練り歩く「ししおどし祭り」へと参加型のイベントにしました。性別・世代で異なるニーズに向けて、多方面からカカワレル仕組みづくりを工夫しています。
◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?
また、稲倉の棚田を教育・福祉の場として活用した地域づくりの観点も大切だと考えています。
【特別賞ーエンカレッジ賞】稲作本店
栃木県那須町の稲作本店は「田んぼの価値最大化」を目指すとともに、「お米農家」から「お米専門ブランド」としての定着に向けた活動を実施。クラウドファンディングを活用し「田んぼでカフェ」の開催や米粉ワッフル・ポン菓子「イナポン」などの製造・販売を実施。田んぼの魅力を発信しながらビジネスとして成長しています。
◯今回応募したきっかけ
◯田んぼの魅力を発信するなかで苦心した点、ビジネスの成長を実感した点を教えてください
「農業を食糧生産だけで語る論調に一石を投じたい」そんな想いから「田んぼの価値最大化」をコンセプトに掲げました。当初は小さな声でしたが、徐々にSNSを中心に共感の輪が広がり、クラウドファンディングの成功、商品やECの販売額が増加するなど、着実にファンや消費者が増え、田んぼでカフェやキャンプ、直売所のオープンなどの形で進化してきました。
◯『米を作るな、未来を創れ!』がユニークなキャッチフレーズですが、今後より魅力を発信するために考えている構想があれば教えてください。
田んぼに触れ、そこから生まれる商品を食べ、農業の素晴らしさやリアルを感じていただくことで、つくる人と食べる人が結ばれる世界をつくっていきたいと思っています。
◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?
私たちは、もう一度、「食」と「農」が、この国の風景や文化、歴史を支えていることを知ってほしい。日々、みなさんが食べるもので、この国の未来の景色を決めているということを知ってもらいたい。「未来に何を遺していきたいのか」考えるきっかけを創出していけたらと考えています。
【特別賞ースポーツ連携賞】NPO法人越後妻有里山協働機構
新潟県十日町市のNPO法人越後妻有里山協働機構では、新たなライフスタイルの提案、女子サッカー選手など多様な人材による棚田保全、アートによる地域活性化に寄与。ドローン、水位センサー等のスマート農業の導入により作業負担の軽減。棚田オーナー制度で都市部と地元住民の交流の機会を展開しています。
◯今回応募したきっかけ
◯サッカー×地域活性が非常にユニークな取り組みですが、きっかけを教えてください。
その2つの課題を掛け合わせて考えた時に、女子サッカー選手が担い手となり農業をする事で地域に貢献し、サッカーの時間を確保する事で選手生命も長くなるという2つの課題が解消に近づく新しい取り組みが考えられました。
◯棚田オーナー制度導入で生まれた地元と都市部でどんな交流が生まれたのかエピソードを教えてください
また、移住スタッフ(FC越後妻有のメンバーなど)が農作業を行うことで、地元農家さんが先生となり教えてくださるという交流があります。そして、FC越後妻有の試合では、地元農家さんがサポーターとして応援してくださったり、選手が体操教室を行いストレッチや運動を教えることでお互いに良い交流ができていると思います。
◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?
そして、興味を持った方々が実際に越後妻有地域に訪れ、地元住民と交流することによって、この地域が持つ課題を解決していけるような地域に根差した取り組みをしていきたいと考えています。