「強い農林水産業」、「美しく活力ある農山漁村」の実現に向け、農山漁村が有するポテンシャルを引き出すことにより地域の活性化や所得向上に取り組んでいる優良な事例を「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」として選定し、全国へ発信する取り組みにより、優良事例の他地域への横展開を図るとともに、地域リーダーのネットワークの強化を推進しています。第9回選定となる令和4年度は、全国から616件の応募の中からアワード受賞者が決定されました。
【特別賞ー若者とっとり賞】NPO法人bankup
鳥取県鳥取市のNPO法人bankupは、職員7人と大学生ボランティアスタッフ107人が構成員。平成14年から大学生ボランティアを農村へ派遣し始めて20 年以上継続して実施。交流企画や地域特産の加工販売を行う「農村 16きっぷ」、米生産から販売まで行う「田舎応援戦隊三徳レンジャー」等と、地域活動のプロジェクトをおもしろいネーミングで運営しています。
◯今回応募したきっかけ
◯20年以上活動を継続しているなかで、いちばん活動で大事にしていることを教えてください
外から関わる人が、興味を持つ、おもしろがることをデザインして関係性を作っています。そんなひと手間を入れることが20年続いているポイントでもあると感じています。
◯地域活動のおもしろいネーミングはどんな形で決められていますか?
◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?
【特別賞ーNOUHAKU賞】一般財団法人丘のまちびえい活性化協会
北海道上川郡美瑛町にある一般財団法人丘のまちびえい活性化協会は、農家に代わって畑の大切さを伝えるガイド(インタープリテーションガイド)の案内で、生産農家の畑をリアルに体感できる各種プログラムを実施。景観と農と食を結びつける本物体験型プログラムを展開。観光マナー問題の解決に向け、農泊事業を通じ生産者と一体となって実施しています。
◯今回応募したきっかけ
◯観光マナー改善のための施策で一番苦心した点、一番成果のあった点を教えてください
主役はあくまで農家さんであり、我々はその代弁者として動く。畑にも農家さんにも負荷を与えず、持続可能なプランニングにするという点を意識しました。
成果としては、単なる収穫体験や農業体験という概念に留まらない、確固たるポリシーと独自のオリジナリティ溢れるプログラムになったのではないかと考えています。
◯体験型プログラムに参加されるお客様がいちばん満足される点はどんなところですか? またそれが参加者の増加につながっていますか?
ガイドの案内も好評で、ただ風景を眺めていただけではわからなかった、さまざまな新しい発見を知ることができてよかったという声をいただいています。
参加者の増加という点では、美瑛は夏だけに一極集中してしまう観光地でしたが、冬の丘を歩く絶景スノーシュー体験が人気を集め、冬にもたくさんの方が来ていただけるようになったという効果がありました。
◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?
どうして勝手に畑へ入ってはいけないのか、それがどんな影響をもたらすのか、そうした事実を知ることによって、自然と畑を大切にする気持ちや、農家さんに対する感謝の心が芽生えてきます。この体験プログラムを通して、訪れる方々が皆さんそういう気持ちになっていただけたら、いつかこの観光マナー問題をなくすことができるのではないかと願っています。
【特別賞ージビエ賞】高知商業高等学校ジビエ商品開発・販売促進部
高知商業高等学校ジビエ商品開発・販売促進部は、高知市役所レストランでジビエ部の活動として高校生ジビエ・レストランの名で販売を実施。高校生が地元のシカやイノシシ肉を原料として商品開発を行い販路拡大に寄与。クラウドファンディングによって森林の保護活動の資金を調達し返礼品にジビエ商品を活用。県内のシカの食害が著しい地域で植樹や防鹿ネット敷設作業を実施しています。
◯今回応募したきっかけ
◯実際に高知市役所レストランでジビエ部の活動として高校生ジビエ・レストランを実施するなかで、レストランに来るお客様の反応を教えてください
若い方からお年寄りまで多くの世代にご賞味いただく中で、「ジビエにトラウマがあったが、これを機に食べてみる」や「思っていたジビエとは全く違う。おいしい」、「高校生が取り組むジビエを利活用し野生鳥獣の食害を受けた森林を保護するという循環型社会貢献活動に協力したい」という多くの意見をいただきました。
高知の中心地でジビエの魅力と私たちの活動を社会に広めることができました。
◯クラウドファンディングをやってみて苦労した点、実施してよかった点を教えてください
・苦労した点
生徒が返礼品の発注作業を自分たちで手配したこと、また、鹿の革製品を自分たちの手で作製し、支援者のみなさんに送り届けたことです。部員たちは放課後、部室で鹿革コースターの作製を行いました。しかし、一連の作業の中で、社会の先進的な取組の一端に触れたことで、生徒たちは大きく成長しました。
・よかった点
支援金だけではなく、北海道から沖縄までの全国の方からの応援メッセージです。ジビエ部がジビエを利活用し、野生鳥獣被害という地域課題の解決に向けて循環型の社会を実現しているこの活動にご理解をいただいたみなさまからの応援メッセージに生徒たちが勇気づけられたことです。この応援メッセージのおかげで、「答えがない課題に対してもチャレンジしたい」という前向きな意見を持つ生徒が増えて来ました。
◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?
その過程で、生徒たちは海山川は繋がっていることを認識しました。森林を守ることで川が豊かになり、海洋資源が豊かになります。人間社会の持続性を維持するための基本がここにあるとジビエ部員全員が信じています。
【特別賞ーむらの宝食文化賞】高木 幹夫
愛知県大府市の高木幹夫さんは、昭和50年代、地元の在来タマネギから播種作業を始めて40 年以上、種苗会社が扱わない「あいちの伝統野菜」を栽培・播種。「次世代につなぐ採種作業」をテーマに講座・講演・食イベントを通じて「あいちの伝統野菜」の普及活動を実施しています。
◯今回応募したきっかけ
◯あいちの伝統野菜の伝承活動を続けるために苦心した点を教えてください
結果、仲間づくりに心がけるとともに、食にまつわるさまざまな資格(調理師、野菜ソムリエ、フードコーディネーター、薬膳マイスター etc.)を取得、自ら伝統野菜を主軸とした「食」イベントを開催して広めていくことしかありませんでした。
◯ここまで活動を続けているなかで、活動してきて良かったと思える(具体的な)エピソードがあれば教えてください
そして長く続けてきたことで伝統野菜がメディア(TV、新聞、雑誌など)に取り上げられる機会が増え伝承活動に役立てることができました。また、地元で生まれ育った野菜がその土地、土地の食文化を育ててきてくれたことを肌身で感じることもできました。
◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?
【特別賞ー地域復興大賞】株式会社やまもとファームみらい野
株式会社やまもとファームみらい野は、耕地面積の約8割が津波被害を受けた宮城県亘理郡山元町で、地域農家と協力し営農組合を設立。平成29年5月に「復興創生とまと」として初出荷し、令和3年からはさつまいもの輸出を開始しています。
◯今回応募したきっかけ
◯どんな想いを持って事業を始めたのか教えてください
そこには、ご支援をいただいた世界中の方々への感謝の気持ち、再生整備された畑地を価値のある農地に仕上げ、貸していただいた地権者の方々へ恩返し、雇用の創設、スマート農業技術にチャレンジと普及など、単に再生だけでなく新たな創生が事業目的にあります。