全国的に春の訪れが早かった2023年。例年にない早さで、桜前線が到達した北海道です。その北海道の東の町に、私は大阪から移住し15年が経過しました。生乳生産量日本一を誇る「別海町」。その町の中でも有数の酪農地帯で行われた、春の一斉清掃の話題と地域存続への住民の想いをお伝えします。
遥かなる緑の大地。別海町の上風連地区
これは関東地区だと千葉県柏市(114.7平方キロメートル)や神奈川県小田原市(113.8平方キロメートル)、関西では大阪府河内長野市(109.6平方キロメートル)、九州では福岡県宗像市(119.9平方キロメートル)を想像いただくと、上風連地区の広大さをイメージしていただけるでしょうか。
その時に見たままの地域を、上風連地区にイメージとして重ねていただくと、間違いはありません(笑)。
上風連地区に暮らすのは約120世帯・350名。ほとんどは、酪農業に従事されている方と、その家族です。
自助・共助の心が残る、上風連地区
2019年(令和元年)には開基100年を迎えましたが、遠隔地である所以や人口の都市集中、厳しい酪農経営などの問題も無風ではなく、人口減少が避けられないのも事実です。そのため「みんなで協力し、お互いが参画者」というイベントが多くあります。地域全員が参加する大運動会や、夏の帰省時期に合わせて行われるお祭り。植樹や本日お伝えする一斉清掃活動などもそのひとつです。
一斉清掃の始まり。見た限りではゴミも少ないですが…
この広い地域ですので、数日間、数か所の地区に分かれての清掃となります。市街地に住む世帯は少なく、多くは小学校・中学校の教員。私は地域の会館に集まり、ゴミ袋を片手に分かれます。集合場所から離れた地域に住む方々は、ご自身の自宅近くを清掃され、後に集まって来られるスタイルで清掃作業は始まりました。
広大な北海道のイメージ通りの、車線の広い幹線道路はゴミひとつ見当たりません。しかし、風で飛ばされた路肩には多くのゴミが散在していました。飲み物の空き缶、ペットボトル、コンビニ弁当の容器、タバコの箱。中にはそれらのごみが、そのまま入った袋なども見受けられます。
ゴミにも地域性がある? これはゴミなのか?
中心地からすぐ離れた場所には、エゾシカも当たり前のように居ます。数年前には、小学校から数十メートルしか離れていない通学路で、ヒグマの糞も発見されたことがありました。
広域なので、集まるゴミの量も種類も多くなります
集まったゴミを一旦広げて、みんなで分別していきます。瞬く間に、山積みのゴミ袋が増えていきます。いちばん多いのは空き缶、ペットボトル。お弁当の空き容器などがメインになります。
持続可能な生活を日々実践されている、上風連地区の素晴らしさを実感
普段から、小学校・中学校の環境整備や運動会、文化祭行事などの準備も「協力できる者」で、率先して行われています。生き物を扱う酪農家さんですので、突発的な事情で参加できなかったとしても「お互い様だからね」と、笑って許せる自助・共助の心で支え合っているのが上風連地区です。
学生の頃から自助・共助を実践。成人となって就農すると、飼育している牛から出た糞尿を肥料に変え、牧草を育て、その草で牛を育成する循環型農業の実践者。後継者となり、さらに次の世代へ紡いでいきます。
生活のなかで、当たり前のようにSDGsを実践する方々が集まる地域なのです。
コミュニティを守り続けることが、難しくなっている現実も
酪農環境も、乳製品の消費低迷や飼料の高騰、牛から発生するメタンガスの排出問題等から厳しい状況にあります。離農(酪農業の廃業)を選択する酪農家も増えており、北海道の酪農業全体の問題でもあります。とりわけ、ほぼ全員が酪農に従事する上風連地区にも大きな影響が生じています。
「みんなで協力して支え合って、この上風連を守り続けたい」
行事に笑顔で参加し協力する地域の方々を見て、気持ちが感じられるのです。
愛とふれあいの郷 上風連
100人程が参加した食事会にも関わらず、片付けも参加者総出で行うことで、10分もかかりませんでした。抜群のチームワークも見せてもらうことができました。
会場を後にしながら、心から願うのです。
この美しい自助・共助の心が、未来永劫続いてほしいと。
1975年、大阪生まれ。32歳の時に「趣味のオートバイで訪れ、その雄大さに魅了された」北海道・道東に移住。現役の男性看護師として地域医療・福祉分野に尽力するかたわら、15年を越える北海道生活を個人ブログ「なーしぃのひとりごと」で発信している。私生活では、妻と2人の子どもと暮らす。https://nursy-hokkaido.com/