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サスティナビリティ

特集 | 第1回 「ソトコト・ウェルビーイングアワード2023」

食だけでなく衣、住にもカカオの可能性を広げる―明治の「CACAO STYLE」とは

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大正時代より、100年以上チョコレートをつくってきた明治株式会社。2006年からは「メイジ・カカオ・サポート」として、カカオ豆の生産者を支援し、サステナブルなカカオ豆の調達を推進しています。また、チョコレートの製造過程で多くの部分が廃棄されてしまうカカオ豆の問題に着目し、チョコレート以外の食品を開発するなど、カカオ豆に関するさまざまな取り組みを続けてきました。そして今回、カカオの外皮、殻の部分である「カカオハスク」をアップサイクルしたライフスタイルブランド「CACAO STYLE」を設立。食以外の分野に飛び出してカカオ豆の可能性を追求し続ける明治のアクションについて、明治のカカオマーケティング部、CXSグループ長の木原純さんにお話を聞きました。

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木原純さん。
目次

カカオの新しい可能性を目に見えるかたちで暮らしに取り込む「CACAO STYLE」

ソトコト 今回、明治が新たに始めた「CACAO STYLE」とは、どういった取り組み、商品なのでしょうか。

木原純(以下、木原) 2022年に発表した「meiji New Action」のなかで、カカオの可能性を広げ、食べる人だけでなく、つくる人も含め、カカオに関わるすべての人が幸せになるための「ひらけ、カカオ」の取り組みを始めました。そこから約1年をかけて、チョコレートに加工する際に廃棄されてきたカカオの外皮、殻である「カカオハスク」をアップサイクルした小物や家具、建材の開発を進め、今回その第一弾を「CACAO STYLE」として協業先からの販売を開始しました。

ソトコト カカオはこれまで、チョコレートに加工される際に使われるのは全体の10パーセント程度、発酵のエネルギーとして使われる果肉を含めても価値に変えられているのが30パーセント程度で、残り70パーセント近い部位が積極的な活用をされてこなかったと聞きます。今回、アップサイクルの対象になったカカオハスクは、年間でどのくらいの量が廃棄されていたのですか。

木原 日本国内でいえば約4,900トンですね。

ソトコト その4,900トンの、本来ならば積極的な活用をされていないカカオハスクを資材として、新しいものづくりに着手されたのですね。今回、衣食住の「衣」や「住」の分野を選んだ理由は何だったのでしょうか。たとえば、エネルギーの分野に転用する選択肢などもありましたか。

木原 近畿大学さんと連携して植物からつくれる燃料であるバイオコークスにカカオハスクを使えないかという研究も進めていますが、明治としては「お客さまに見える取り組み方」を今回重視しました。そこで、食と同様に身近な存在である、衣や住の分野でカカオハスクを活かせないかと考えました。

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カカオハスクをアップサイクルした紙コップ用のハンドル付きカフェスリーブと、キャニスター(お菓子ボックス)。
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テーブルインテリアにもなる花瓶。
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カカオハスクを染料に使ったジャケット。
ソトコト カカオハスクを使ったこれらの商品の特徴を教えてください。

木原 私たちは当初、カカオの持つ香りがひとつの特徴になるのではないかと考えていました。ですが、実際にできあがったものを見ると、とても落ち着いた色合いのブラウンになっていて、この発色もカカオハスクの魅力になるのではないかと思っています。

また、これはカカオハスクを使ってものづくりをする職人さんの視点でのことなのですが、カカオハスクはその排出工程で非常に乾燥した状態になります。そのため素材にする際の手間が少なく、扱いやすいと言ったお声もいただいています。

ソトコト カカオハスクを使ったアイテムを配置した「CACAO STYLE ROOM」を見せていただきましたが、確かに全体が落ち着いた雰囲気で調和していると感じられたのが印象的でした。

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カカオハスクをアップサイクルした家具、床材、壁材を使用した「CACAO STYLE ROOM」。

「CACAO STYLE」を経て共有できたカカオへの想い

ソトコト 「CACAO STYLE」は、明治さんにとっては新たな挑戦となる、食以外の分野での取り組みとなりましたが、苦労した話や覚えているエピソードなどを教えていただけますか。

木原 カカオハスクを圧縮してつくられた30cm各のプレートができたとき、部屋中がカカオの香りに包まれました。この感動を、どうすればお客さまにアピールできるだろうかと考えたとき、「これはカカオハスクを使ったさまざまなアイテムでできた部屋をつくるしかない!」と強く思いました。

先ほど、カカオハスクが国内で年間約4,900トン出ていることと、それを使ったアイテムの特徴についてお話ししましたが、こういったアップサイクルの製品は、一般的な製品に比べて価格が高くなる傾向があります。なので、付加価値としての「体験」がとても重要になると考えました。価格を越えて選んでいただけるだけの付加価値が必要だと。そのためにはまず「カカオハスクの製品を暮らしに取り入れるってこういうことなんだ」と具体的なイメージがわく見せ方をしなくてはならないと感じたため、今回「CACAO STYLE」のアイテムを結集した「CACAO STYLE ROOM」をつくることにつながりました。

ソトコト 「CACAO STYLE」の各製品づくりは明治さんがデザインなどを主導されたのですか。

木原 いえ、私たちは材料となるカカオハスクを提供し、コンセプトなどはパートナー企業さまと一緒に構築しましたが、実際のものづくりはそれぞれのプロフェッショナルに一任させていただきました。

私たちがデザインなども含めて口出ししてしまうと「明治のやりたいこと、発信したいこと」ばかりが前面に押し出されてしまうので、それは違うだろうと。一番に考えるべきは「CACAO STYLE」の製品を使ってくださるお客さまの利便性ではないかと思いました。

また「CACAO STYLE」の取り組みに関わられた企業や職人の皆さんそれぞれに背景やストーリーがあります。それを大事にしたいと考えたということもあります。

たとえば、今回参加していただいた企業のなかに石川県・加賀市の伝統工芸品である山中漆器をつくられている方がいらっしゃいます。いま、漆器業界は林業従事者の減少や材料の高騰などで非常に厳しい状態にあるのですが、今回、カカオハスクを材料にした漆器づくりを通じて、技術の承継に役立てたいとおっしゃっていただきました。

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カカオハスクを使用した山中漆器のボンボニエール。ボンボニエールとはフランスのお菓子「ボンボン」に由来するお菓子入れのことです。
また、「CACAO STYLE」のプロジェクトを進めるにあたって、お客さまによりよいものを届けること、そしてカカオ生産国の方々にもよりよい未来を提供することを、社内だけでなく社外の方々と自然と共有できたことも、とてもうれしく思っています。

明治を「場」として使い、取り組みの輪を広げていく

ソトコト 「CACAO STYLE」を通じて食以外の分野にも進出されましたが、今後の「CACAO STYLE」の展望を教えてください。

木原 私たちはカカオの可能性を広げるべくさまざまな取り組みをしてきましたが、「まず、つくってみる、動いてみる」のが大事なのだという手ごたえがあります。たとえば、先ほどもお話しした年間約4,900トン排出されるカカオハスクについて、最初から「これだけの量をアップサイクルしよう」と、数字を第一の目標にしてしまうと、それに合わないものを切り捨ててしまうことになります。

なので、今回はまず「カカオハスクってこう使えるんだ」というムーブメントの第一波を起こすことが重要だったと感じています。「CACAO STYLE」の取り組みを見て「うちでもカカオハスクを使ってみたい」と思ってくれる人が現れたり、あるいは「CACAO STYLE」の製品を知って、さまざまな意欲的なものづくりをしている人がいることが認知されたり、そういう新しい流れをつくりだしたいですね。私たちは「カカオハスクを使って一緒に何かをやりたい」という方には、その入り口になるスタンスでいますので、ものづくりに関わるたくさんの方が明治という企業を“みんなが集まる一つの場”としてつながっていくことが、私たちの目指すカカオの可能性を広げることになるのではないかと思っています。

木原純(きはら・じゅん)
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木原純(きはら・じゅん)
株式会社 明治マーケティング本部 カカオマーケティング部CXSグループ長。
「CACAO STYLE ROOM」にて、カカオハスクを使用した各種ウェアとともに。

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