2020年7月に発生した熊本豪雨で被害を受けた人々を支援するために、被災地の熊本県人吉市から泥で汚れてしまった「革靴」を預かり、再生するべく立ち上がったプロジェクト「泥水で汚れた本革クツ再生支援」。企画したのは、自身も人吉市出身のReHug株式会社、代表の本永敬三さんと靴磨き職人のSHOESHINE FACTORY 代表の仲程秀之さん。「沖縄から人吉市のためにできること」として8月初旬、被災地から預かった革靴を甦らせるまでの様子を取材した。
“大丈夫だからまだ捨てないで!”
故郷、人吉市への想いが革靴の再生支援へ
ReHug株式会社代表の本永さんは被害にあった熊本県人吉市出身。
人吉市在住の家族や親戚は早めの避難で難を逃れたものの、川のすぐ近くだという自宅は1階部分がほとんど浸水。故郷の大切な人たちの力になりたいが、すぐに駆けつけられないもどかしさの中、「遠方からでも何かできないか」と沖縄県内で靴磨き職人として活躍する仲程さんから提案があったという。泥水に浸かり、普通ならもう履けないんじゃないかと思うほど汚れてしまった革靴を現地のボランティアスタッフから預かり、今回9足の靴が集まった。
革靴の特徴として、一見もう履けないような状態に見えても本革(天然皮革)であれば手入れ次第で再び履けるよう再生することが可能な場合が多い。
逆に合皮(合成皮革)の靴は近年本革にも劣らない見た目のものも多くあるが、特性上一度水に長く浸かってしまうとボロボロと剥がれてしまうことがあるので再生が難しい場合がある。
また、今回の支援にあたり、靴の輸送費や手入れの料金は受け取らず、無償で持ち主の元へと届ける。
「第1章」と銘打って集まった靴を無事届けた後も、現地からのご依頼をいただければ、第2章、第3章とこの活動を継続していきたいと企画した2人は意気込みを見せた。
大切な革靴が再生するまで
8月初旬、那覇市にあるReHug株式会社運営のコミュニケーションスペースReHug“D”Questの軒先で被災地から預かった靴を再生するべく作業が決行された。
泥も臭いもこびりついて取れなくなった革靴をバケツにドブンと浸けるところからのスタート。前日のSNSでの呼びかけに賛同したメンバーも集まり、修復に向けて一致団結、日中作業が続いた。
1.靴についた泥を洗い流す
2.ニオイを取るために水に浸ける
3.日陰で乾かす
4. 防カビ剤と保湿クリームを塗る
5.磨き
この日4時間ほどかけておおよそ全ての靴を磨きの工程まで終えることが出来た。作業を終えた靴は仲程さんが預かり、自宅兼工房で仕上げの作業を終え8月11日に9足分の靴が沖縄から熊本県人吉市へと届けられた。
大切な靴だからこそ
長く履いて新たな一歩へ
無事故郷の人吉市へ再生した靴を届けた本永さんと今回の支援を企画した仲程さんに活動を終えた感想を聞いた。
本永:「全ての靴が光を取り戻せなかったとしても、その人にとっては人生の門出で奮発して購入した靴だったり、思いを受けて手に入れた靴だったり、あるいは亡くなった大事な人から受け継いだ形見の靴かもしれない。その人にとっての大切な思い出を失って欲しくないし、人吉市に住み続ける選択がこの先も残っていてほしい。
第2章以降もお預かりした靴は可能な限り再生します。今はまず、自分のことに集中して休むときは無理せず休んで下さい。そして、落ち着いたらまた、生まれ変わった靴を履いて新たな一歩にして欲しい。」
仲程:「ReHug株式会社の協力のもと、“靴磨き屋ができる熊本支援”として自身のレベルアップにも繋がった。大事な靴を預からせていただける方がいる限り、第2章、第3章とこの活動を継続していきたい。」
本革靴の再生支援については下記URLから ※第2章は先着10足
https://peraichi.com/landing_pages/view/re-shoeshine
プロフィール
本永敬三(もとなが けいぞう)
代表取締役 勇者。公認会計士(Lv.20)
生まれ故郷の熊本県人吉市で2000年に公認会計士試験に一発合格後、会計監査だけではなく、金融検査官などの経験を経て、終の住処である沖縄に移住後、中小企業の事業再生支援を経験し、ReHug株式会社を設立し、代表取締役勇者に就任。公的機関で多数のセミナー講師をつとめ、地方の創業支援と地域の企業の事業再生支援に取り組んでいる。
ReHug株式会社
仲程秀之(なかほど ひでゆき)
SHOESHINE FACTORY代表。店舗を持たない靴磨き屋として2017年に起業。沖縄県内を駆け回り、イベント出店や出張お預かり、自宅サロンにて対面磨きなどを行う。自身の企画するイベント「俺の蚤の市vol.4」を9月に開催予定。
SHOESHINE FACTORY