国連の持続可能な開発目標SDGsには、「2030年までに世界の食料廃棄を半減する」という目標が掲げられている。一方、日本では食料の約6割を輸入に頼っているにも関わらず、「食品の製造日から賞味期限までの期間を3等分して、納品期限・販売期限を設ける」という“3分の1ルール”や小さな汚れ・キズなどが原因となり、多くの食糧を廃棄している。その量は、約612万トン。国民全員が、お茶碗1杯分のご飯を毎日捨てているのと同じ計算だ。フードロス大国の日本で、食糧廃棄の解決を継続的なビジネスにするにはーー。
フードロスをwin-winで解決するプラットフォーム「KURADASHI」。
社会貢献型フードシェアリングプラットフォーム「KURADASHI」では、まだ食べることができる食材・食品等をサプライヤー(提供者)から入手してWEB上で販売し、売上の一部を環境保護や動物保護、フードバンクなどの社会貢献団体に寄付している。この仕組みにより、これまで余り物を廃棄するしかなかったサプライヤー側はコーポレートイメージを守りながら商品を提供でき、消費者側は「KURADASHI」を通して安く品物を手に入れるとともに社会貢献もできるという、双方にとってwin-winな仕組みを実現している。現在、食品メーカーや農家などのサプライヤーは約800社、買い手となる登録会員は10万人ほどいるそうだ。
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一人ではなにもできない無力感と、未来をつくる世代への思い。
「KURADASHI」は2015年にサービスを開始した。運営会社の『クラダシ』代表取締役社長・関藤竜也氏には2つの原体験があるという。1つ目は1995年の阪神淡路大震災。当時大阪在住の大学生だった関藤氏は、発災後いてもたってもいられずバックパックに水や救援物資を詰めて震源地に向かったものの、一人でできることには限界があり、無力感に包まれた経験があった。そして2つ目は新卒で入社した総合商社で働いていた頃、食べられるにもかかわらず大量に廃棄されている食料があるという事実を知ったこと。仕入れたチキンのサイズがわずかに規格より大きいからと廃棄される、日本の仕様書の厳しさが食糧廃棄を生んでいる様子を目の当たりにしたのだ。食糧廃棄がいずれ生態系に影響を与え、子どもや孫の世代で「食糧が足りない」という未来をつくらないために、そして一人ではなく誰もが利用できる仕組みを構築して課題に向き合いたいという思いから、フードロスを継続的に解決するためのプラットフォームの構想に行き着いた。
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なぜ食糧廃棄は起こるのか。
日本では毎年600万トン以上の食料が捨てられているが、これは日本における一年の米の総収穫高である約800万トンに匹敵する。またこれは、国連などの機関が食料飢饉で苦しむ国々へ支援をしている量の2倍ともいわれている。
食糧廃棄と聞くとコンビニやレストランでの廃棄が大半を占めているのではと思われるかもしれないが、事業者側で起きているフードロスは大きく2つに分けられ、フードサプライチェーンにおける廃棄が全体の3分の2、飲食店舗での廃棄が残りの3分の1である。業界的な慣習や少しのサイズ違い、また「傷物は贈答用には使えない」などのマナー・エチケットが、我々が目にする前の段階で「規格外の廃棄」を生んでしまっているのだ。
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大量の廃棄をするくらいなら安くして売ってしまえばいいという考え方もある。しかしながら、安売りするとブランドイメージが壊れてしまう・ディスカウンターに卸すと百貨店との取引が打ち切られてしまうなど、ブランドイメージと市場価格を守りたいというメーカー側の理由がある。ほかにも、店舗に納品する際に賞味期限の3分の1を過ぎているものは、賞味期限が残り3分の2あるにもかかわらず廃棄となる「3分の1ルール」というものが業界に存在するなど、さまざまな要因が絡み合ってフードロスは発生している。
三方よしの仕組みをつくる。
この複雑なフードロスの問題の間に入ることで、フードサプライチェーンの廃棄を無くすのが『クラダシ』の使命だ。単なる安売りではないため、企業にとってはブランド価値毀損や市場価格の崩壊にもならず、フードサプライチェーン全体の経済的メリットにつながり、さらにSDGsやESGといった点で企業価値向上にもつながる。そして利用者にとっても、フードロスの事実を知ることで「スーパーの牛乳を後ろから取る」という行動に変化が生まれるかもしれない。
サスティナブルであるためには、それぞれにwinがある「三方良し」の仕組みが欠かせない。社会貢献型フードシェアリングプラットフォーム「KURADASHI」は、課題解決に挑みながら持続可能な未来をつくっているのだ。