MENU

サスティナビリティ

特集 | 未来をつくる本

サスティナブル・ブックガイド 食×三上奈緒さん

  • URLをコピーしました!

 新型コロナウィルスの影響で社会が大きく揺さぶられ、さまざまな分野で大きな変化が起ころうとしています。これからの未来はどうなっていくのでしょうか? 不安定な社会で暮らし、生きていくためのヒントをくれる、そんな“未来をつくる本”を紹介します。

目次

食×三上奈緒さん

 安価で便利な食の裏に潜む問題や、食に対する知識や体験の低下に警鐘を鳴らし、食についての気づきをもたらす活動に取り組む三上奈緒さん。今の自分と想いをともにする、食への気づきをもたらす5冊を紹介します。

1
左/食の未来のためのフィールドノート─「第三の皿」をめざして(上・下)(ダン・バーバー著、小坂恵理訳、NTT出版刊)。右/焚き火大全(吉長成恭編、関根秀樹編、中川重年編、創森社刊)

 元々は小学校で栄養士として働いていました。農家が直接野菜を販売するマルシェに出合ったのをきっかけに、食についてもっと学びたくなって、渡仏してレストランで修業しました。帰国後、都内のレストランで働きながら今後の方向性について悩んでいたところで、カリフォルニアのレストラン『Chez Panisse』の元・シェフに出会い、そのご縁で今度は渡米して働きました。地元産のサスティナブルで有機栽培の野菜を農家から直接仕入れ、メニューを畑に合わせて組み立てるという、私がやりたいことが詰まった場所でしたね。サラダや焚き火で調理した肉などシンプルな料理が多かったのですが、素材に力があるからこそ本当においしくて、調理テクニックに縛られた私を初心に戻してくれる、とても豊かな経験になりました。

大好きな生産者さんを紹介する一つの方法として料理があり、「旅する料理人」として、その土地と都市で食事会をして双方をかき混ぜることをライフワークにしています。屋外で料理することも多く、焚き火の良さも伝えています。また、子どもたちへの食育も大切にしていて、野菜を育てたり、火を起こして料理をしたりする”生きた授業“を実践しています。

 食を扱う者として私がとても共感した1冊に、『食の未来のためのフィールドノート』があります。この著者は、アメリカ・ニューヨークの3つ星レストラン『Blue Hi

ll』のシェフで自身の畑も持ち、アメリカで食の大切さを喚起することになった「Farm to Table」を実践している人物です。オーガニックの話、養殖の話、種の話など、現代の食が抱える問題やこれからの食のあり方について、身近にあふれる「なぜ?」をとことん追求しています。鶏肉が部位ごとに売買されることで起きた弊害についてもおもしろく、気づきがたくさんありました。

 そして、『焚き火大全』もおすすめです。内容は人間が火を使うことによって進化した歴史から、火の点け方、焚き火料理、森林保全にまで及び、焚き火を切り口に多角的な視点で書かれています。本のなかに出てくる「焚き火料理はスローフード」「焚き火はロマン」という言葉もおもしろいですね。確かに焚き火はこんなにも手間がかかるのに、その間の待ち時間すら楽しく感じる不思議な時間です。暖も取れておいしい料理もできるけれど、ときには煙が目にしみますし、火傷をすることもあります。これは、自然との付き合い方によく似ている気がしますね。焚き火は、便利な暮らしと引き換えに眠っている私たちの大切な感覚を呼び覚まし、野生に返る貴重な時間だと思っています。

三上さんおすすめの5冊

●食の未来のためのフィールドノート─「第三の皿」をめざして(上・下)(ダン・バーバー著、小坂恵理訳、NTT出版刊)
食材への徹底したこだわりと美しい料理で知られるレストランのシェフである著者が、現代の食のシステムが抱える問題に切り込み、未来の食のあり方を提言しています。食を扱う仕事を生業とする人はぜひ読んでほしいです。

●焚き火大全(吉長成恭編、関根秀樹編、中川重年編、創森社刊)
火をおこし、火を操ることに不慣れな現代人に向けて、焚き火の種類から材料と道具、技術・ルール、伝承文化、用途と幅広い内容を21人の研究者、作家、実践家が伝えています。写真や図が豊富で、焚き火のすべてが分かる決定版。

●都市と地方をかきまぜる─「食べる通信」の奇跡(高橋博之著、光文社刊)
東北の農業や漁業の現場を取材した冊子と野菜や魚などの生産物をセットで届ける『東北食べる通信』の初代編集長の著書です。「都市」と「地方」を切り口に、これからの農業・漁業、地域経済、消費のあり方、生き方を語っています。

●食育菜園 エディブル・スクールヤード─マーティン・ルーサー・キングJr.中学校の挑戦(センター・フォー・エコリテラシー著、ペブル・スタジオ訳、家の光協会刊)
『Chez Panisse』オーナーシェフのアリス・ウォータース氏が中学校に野菜などを植えた「食べられる庭」をつくり、教師と生徒の関係、学校と地域の関係が改善される食育を行ってきた実績をまとめた本です。体験学習の大切さがわかります。

●Dishing Up the Dirt(アンドレア・べミス著、ハーパー・コリンズ刊)
有機栽培の農園を夫と営み、「Farm to Table」を実践する著者による本で、旬の野菜を使い、シンプルで美しい料理の100レシピを豊富な写真とともに紹介しています。英語で書かれた本で、電子書籍で購入できます。

3
左/都市と地方をかきまぜる─「食べる通信」の奇跡(高橋博之著、光文社刊)。中/食育菜園 エディブル・スクールヤード─マーティン・ルーサー・キングJr.中学校の挑戦(センター・フォー・エコリテラシー著、ペブル・スタジオ訳、家の光協会刊)。右/Dishing Up the Dirt(アンドレア・べミス著、ハーパー・コリンズ刊)

 

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね
  • URLをコピーしました!

関連記事