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連載 | Web3.0でつくるローカルの未来

「地方創生DAO」とは? DAOを使った組織づくりのメリット&デメリット

ローカル×Web3.0編集部

ローカル×Web3.0編集部

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各地方でDAO形式のプロジェクト立ち上げを検討している方に向けてDAOの活用方法や導入するメリットやデメリット等に関して、分かりやすく解説しています。

前回の記事では「地方創生型DAO」とは何か、またイメージしやすいように具体事例の解説を行いました。今回はさらに踏み込んで地方創生型DAOのメリット・デメリットを整理し、具体的な組成の仕方を解説していきます。
この連載企画は、国と地域を問わずローカルでの活動にWeb3.0の技術や思想を活用している事例を紹介するメディア『ローカルWeb3』からのコンテンツ提供でお届けしています。当記事は『ローカルWeb3.0』にて、2023年5月30日に公開されたものを再編したものです。
目次

地方創生DAOを導入する5つのメリット

地方創生DAOの導入には、地域活性化に役立つ多くのメリットがあります。次に、その主な5つのメリットをご紹介します。

1. 地域資源の活用促進

地方創生DAOでは、地域外のメンバーも参加します(全世界から参加が可能です)。

自分が住んでいる地域の魅力には気付きにくいもので、地域外のメンバーによって、新しい視点がもたらされる可能性があります。これにより、地域に眠る自然や文化などの資源が再発見され、新たな観光スポットや産業が生まれる可能性が高まります。

地域資源の活用が進めば、地元住民の雇用機会が増え、地域経済が活性化することが期待できるでしょう。地域資源を活用したプロジェクトや施策が成功すれば、地域の魅力が向上し、観光客や移住者が増える可能性も考えられます。

2. 地域外からの資金調達が可能になる

地方創生DAOを通じて、地域外(海外含む)の投資家や企業から資金を調達することが可能になります。

地域外からの資金調達が可能になることで、地域内の資金だけに頼らず、より多くの資金を活用して地域の課題解決に取り組めるようになるでしょう。さらに、地域外からの資金調達で地域の認知度が向上し、新たなビジネスチャンスや人材の流入が期待できます。

3. データのオープン化と情報の非対称性の解消

地方創生DAOでは、ブロックチェーン技術を活用して取引データがオープン化されます。

これにより、情報の非対称性がなくなり、誰もが判断に際して同じ情報を持つことができます。情報が透明化されることで、地域住民や投資家がプロジェクトや施策の進捗状況や成果を確認でき、信頼性が向上します。

4. 意思決定の永続的な保存

ブロックチェーン技術を活用した地方創生DAOでは、意思決定や取引履歴などのデータが半永続的に保存されます。これにより、過去の意思決定やプロジェクトの成果が後世に残り、将来の地域発展に役立てることができるでしょう。

また、データが改ざんされるリスクが低くなるため、地域の施策やプロジェクトが透明性を持って運営されることが保証されます。

5. トークン導入によるリスクリターンの共有

地方創生DAOでは、トークンを導入することで、参加者がリスクとリターンを共有することができます(トークンの価値をあげることが、誰にとっても利益になるため)。トークンを通じて、地域住民や投資家が地域のプロジェクトや施策に直接関与することができ、地域の発展に対するモチベーションが高まります。

加えて、トークンの流通によって地域内での経済活動が活性化し、地域経済の発展に寄与することが期待されます。

地方創生DAOを導入する3つのデメリット

地方創生の取り組みの一環として、DAOの導入が全国各地の自治体で、注目されています。しかし、その導入にはいくつかのデメリットが存在します。

1. 技術的なハードルが高い

DAOを導入するには、ブロックチェーン技術やスマートコントラクトの知識が必要となります。ブロックチェーン技術や、スマートコントラクト等の技術はまだ新しく、多くの人にとっては未知の分野です。そのため、専門的な知識を持つ人材を確保することが難しく、技術的なハードルが高いと感じることでしょう。

2. 法規制の不確実性

DAOは、法的な存在ではないため、法規制や税制に関する不確実性が存在します。法的リスクを懸念して、投資家や企業などが参加をためらうことがあり、地方創生への取り組みが制約される場合があります。将来的な法規制の変更により、事業展開が困難になるリスクも考慮する必要があるでしょう。

先進的な取り組みを行っている事例として、米国『ワイオミング州』が挙げられます。ワイオミング州は、DAOに対して法人格を認める法案を成立させ、これによりDAOが法的に認識される地位を確立しました。日本においても今後、海外の事例をもとに徐々に導入が検討されていく予定です。

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3. メンバーが不安定になりがち

DAOでは組織への参加、脱退が従来の組織と比較して手軽に行えます。DAOへの参加・脱退には誰の許可もいらないため、メンバーの流動性が高くなりやすい傾向にあります。気軽に参加や脱退ができるという特徴を持っているからこそ、DAO運営側としては如何に組織の求心力を高めるかが、大事なポイントになってくるでしょう。

地方創生DAOの設立方法

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地方創生DAOの設立方法について、4つのステップに分けて説明します。

1. 目的と目標の明確化

地方創生DAOを設立する際には、まず目的と目標を明確にすることが重要です。地域の特性や課題を理解し、どのような取り組みを行って地域を活性化させるかを検討してください。ただし、これは何か目的を達成したい場合です。DAOは趣味の集まりにも適した組織形態なので、目的を決めずにゆるっと集まるのにも向いています。

2. ルール作り

理想的なDAOでは、ルールがスマートコントラクトによって規定されています。現実的には、スマートコントラクトによる自動執行ですべてを決めることは難しいです。次のルールは、スマートコントラクトで規定されていることが望ましい項目です。

・お金の出入り
・意思決定方法
・トークンやNFTの発行、償却

その他の細かいルールは、意思決定によって決められた執行者もしくは、サブDAOをつくって決めて行く方式が現実的でしょう。

3. メンバーの選定と役割分担

DAOは、組織・プロジェクトそのものが特定の会社や個人に帰属せずコミュニティに帰属しています。このコミュニティに参加するための参加権として、トークンやNFTが使われます。そのため、メンバー選定や役割分担も自律的に行われることが理想です。一方で、自然発生的にコミュニティができることは現実的ではありません。まずは、ファウンダーとコアなメンバーが必要になります。

地方創生DAOの場合、コアメンバーは地域のリーダーや専門家、地元住民など、多様なバックグラウンドを持つ人々で構成されることが望ましいです。DAOの初期段階ではリーダーシップを発揮し、組織やプロジェクトを適切に進める必要があるでしょう。リーダーが方向性を示し、参加者が共通の目標に向かって協力することで、組織は成長し、次第に自律的な運営に移行していくことができます。

DAOの発展には、「初期段階でのリーダーシップ」と、「徐々にその役割が自然発生的かつ自律的な運営に移行するプロセス」が重要です。

4. 資金調達

地方創生DAOの設立が進んだら、NFTや独自トークンを発行し資金調達を行います。

DAOでは、発行したNFT、トークンの保有量に応じて投票権が与えられます。つまり、DAOにおける資金調達は株式による資金調達と極めて似た性格を持ちます。通常の株式と同じように、どの程度の資金をいつ誰に向けて、どのように調達するのかは極めて大事な事柄です。専門家の助言を受けつつ、検討する必要があります。

地方創生DAOの運営を成功させる3つのコツ

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地方創生DAOを成功させるためには、適切な運営方法や戦略が重要です。次に、地方創生DAOを成功させるための、3つのコツをご紹介します。

1. コミュニティ運営とコミュニケーション

DAOコミュニティ運営の代表的なツール

■ colony(コロニー)

colonyは、オンラインでDAOを立ち上げることができるツールです。コーディングが不要で、メンバーへのインセンティブの仕組みなどを構築することができます。

■ Discord(ディスコード)
Discordは、テキストチャットや音声通話、ビデオ通話ができるコミュニケーションツールです。DAOコミュニティでは、Discordがよく使われており、チャンネル別に議論を進めたり、ミーティングを開催したりすることが可能です。

■ Gnosis Safe(グノシスセーフ)
DAOのお財布となるウォレット管理ツールです。複数名でのウォレット管理ができるようになります。

■ Snapshot(スナップショット)
Snapshotは、オンチェーン(※1)でのガバナンストークンホルダー投票を支援する、オフチェーン(※2)ガバナンスツールです。コミュニティメンバーが提案を行い、トークンホルダーが投票することで、意思決定が行われます。

上記のツールを組み合わせることで、DAOのコミュニティ運営やコミュニケーションが円滑に行われ、組織の目標に向かって効果的に進めることができます。

※1&2:ブロックチェーンで処理されていることを「オンチェーン」、されてないことを「オフチェーン」と言うことがある。

2. トークンエコノミーの構築

トークンエコノミーは、地方創生DAOの運営において重要な役割を果たします。DAOはトークンやNFTを発行して資金調達を行います。これは一見クラウドファンディングと同じように見えますが、違いはリターンとして何がもらえるかという点です。

クラウドファンディングでは、リターンとしてプロジェクトから生み出される商品(例えばエコフレンドリーなコーヒーなど)を受け取るケースが多いと思います。DAOは、代わりにトークンやNFTを受け取ります。トークン、NFTはDAOの活動如何で価値が変動します。

この仕組みを活用して、参加者や投資家にインセンティブを提供することで、地方創生の取り組みを促進することが可能です。

3. 持続可能な事業モデルの確立

地方創生DAOの運営を長期的に継続させるためには、持続可能な事業モデルが必要です。次に、持続可能な事業モデルを確立するためのポイントをご紹介します。

✔️収益源の多角化
地方創生DAOの収益源を多角化することで、リスクを分散させ安定した収益を確保できる。トークンやNFTの販売のみにこだわらず、補助金や地域企業との協業などキャッシュポイントをたくさん作ることが重要。

✔️地域のニーズに応じた事業展開
地域住民のニーズに応じた事業展開を行うことで、地域との連携が強化され事業の持続性が向上する。地域住民や関係者からのフィードバックを取り入れ、柔軟な事業運営を心掛ける。

✔️継続的なプロジェクトの進化
成功したプロジェクトを継続的に改善・拡大し、新たなプロジェクトも創出していくことで事業モデルの持続性を確保できる。革新的なアイデアや技術を取り入れ、地域創生の取り組みを常に進化させる。

地方創生DAOの将来性と今後

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地方創生DAOは、地域の課題解決や発展に寄与する新しい形態の組織であり、その将来性は非常に大きいといえるでしょう。今後の地方創生DAOの発展には、次のような要素が関与します。

✔️プロジェクトの多様化
今後、地方創生DAOが広がることで、さまざまな地域課題に対応するプロジェクトが実現され、地域の活性化が加速する。

✔️技術革新の促進
地方創生DAOにおける技術的な取り組みが進むことで、地域のイノベーションが促進され、新たなビジネスチャンスが生まれることが期待される。

✔️グローバルな連携
DAOの国境を越えた取り組みが増えることで、異なる地域間の知識や資源の共有が進み、地方創生の取り組みがさらに広がる。

✔️住民参加の促進
住民やステークホルダーが主体的に関与することで、地域に根ざした持続可能な取り組みが実現し、地方創生の効果が長期的に持続されることが期待される。

✔️法規制の整備
今後、DAOに関する法規制が整備されることで、より多くの地域で地方創生DAOが導入され、安定的な運営が可能となる。

2023年4月に自民党デジタル社会推進本部web3プロジェクトチーム(「web3ホワイトペーパー 誰もがデジタル資産を利活用する時代へ」(以下「自民党WP」と言います。)が発行されました。自民党WPの中でもDAOへの法人格付与が言及されており、DAOの活用はますます進んでいくことが予想されます。

<著者プロフィール>
岡 拓馬
デジタルマーケティング専門家、プロのwebライター・webディレクター、フリーランスのSEOアドバイザー。2014年に独立し、デジタルマーケティングのフィールドに足を踏み入れる。SEO・コンテンツマーケティングを核としたプロジェクトで成功を収め、クライアントのビジネス成長を支援。その傍ら、DAOに興味を持ち、リサーチとアドバイザリー業務にも携わるようになる。現在は、デジタルマーケティングとDAOの知識を活かし、クライアントとのパートナーシップを通じて事業成長を加速させている。特に、ブロックチェーン技術と組織運営の新たな可能性に魅せられ、DAOに関する啓発活動と実践に力を注いでいる。

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