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仕事・働き方

「農業を仕事にしたい人」と「農業の担い手がほしい人」が出会える「新・農業人フェア」!

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「農業を知りたい」「農業を仕事にしたい」「農業にかかわってみたい」「農業の担い手がほしい」、そんな思いを持つ人たちに向け2003年度から始まった国内最大級の就農イベント「新・農業人フェア」。2025年度の開催前に、フェアをきっかけに農業の担い手を受け入れた団体や企業、憧れだった農業や酪農を仕事にできた人たちの声を紹介します。

目次

2024年度は、延べ4,000人以上が参加

日本の農業は今、大きな変革の時を迎えています。高齢化による後継者不足、持続可能な農業の実現、スマート農業の導入など、課題はありながらも新たな可能性も広がっています。そんな中、農業を志す人々を支援し、新たな担い手を育成するイベントが「新・農業人フェア」 です。

2024年度は東京都・大阪府で計5回実施。全国各地の自治体や農業法人、関連団体が一堂に会しているので、農業の魅力や実際の現場の声を直接聞くことができます。農業に興味がある人、これから就農を目指す人、地方移住を考えている人にとって、情報を得る絶好の機会で、来場者は延べ4,000名を超えています。

「新・農業人フェア」は、東京、大阪などで年に数回開催され、新規就農を考えている人が大勢訪れる。

新しく農業に挑戦する人にとって、今大きな選択肢となっているのが「雇用就農」と「独立就農」です。農業法人などで働きながら経験を積み、安定した環境で農業に携わる「雇用就農」。自ら農地を取得し、経営者として挑戦する「独立就農」。それぞれの道には、異なる魅力があります。 そこで、「新・農業人フェア」をきっかけに、雇用就農者として働きながら技術を磨く人、独立就農者としてゼロから農業をスタートさせた人、そして彼らの就農を支えている人、それぞれの視点から見える農業のリアルや成功の秘訣、苦労、そして未来への展望まで、生の声をお届けします。

フェアは酪農家と就農希望者がダイレクトに話ができる貴重な機会 COWROAD(北海道弟子屈町)

COWROADで育てているのは乳牛で、成牛、育成牛、合わせて約1,000頭がいる。出荷乳量はおよそ6,084トン(2024年度)、牛の餌となる牧草やデントコーンも作っている。

北海道東部、阿寒摩周国立公園の自然が広がる弟子屈町(てしかがちょう)で、65年以上にわたり酪農を営んでいる「株式会社COWROAD」。始まりは家族経営の「渡邉牧場」でした。

「弟子屈町は酪農が盛んですが、後継者不足などで離農する人も増えています。地域を荒廃させないためにもそうした土地を買い、牛を増やしてきましたが、家族経営では限界があります。そこで15年前に会社を立ち上げ、従業員を雇用しています」

そう語るのは、COWROAD代表の渡邉良雄さんです。現在、従業員は22人。そのうち20代が11人、30代が5人、道外出身者は10人。さまざまな年齢や経歴の若い人が全国から集まっています。

当初はハローワークや民間の求人サイトを通して従業員を募集しましたが、思うように効果が上がりませんでした。そんなときに「新・農業人フェア」を知り、2020年からフェアに参加しています。

左/COWROAD代表の渡邉さん。右/酪農の仕事がしたい人と対話ができるフェアはリクルートの絶好の機会だ。

「アンケートによれば、来場者で酪農を志している人は1%程度。しかし、熱心で酪農をやりたい思いの強い方が多いので、最初から具体的で深い話になることが多いです。対面で話ができるので、知識や経験、人柄を感じることができるのがフェアの魅力です」

澤田宗成(さわだ むねなり)さんは、2023年のフェアをきっかけにCOWROADに就職した、いわゆる雇用就農者です。東京で声優として働いていましたが、将来に不安を感じ転職を考えていたときに、フェアの存在を知り、参加しました。

「高校、大学で農業や畜産について学んでいたので、その経験を生かしたいと考えていました。ただ自分で牧場の経営をしたいわけではなかったので、社員として働くことができ、社会保険などの福利厚生制度があるCOWROADは希望にあっていました」

渡邉さんから澤田さんの元に連絡があったのはフェアの翌日。その半年後には就職が決まりました。酪農の知識はあったものの、現場で働くことは初めての澤田さんが「ここで働きたい」と実感できたのはインターンシップの期間でした。

「ブースに来るのは、酪農の知識がある人や将来は自分で牧場をやりたい人、情報収集に来た人、未経験者などさまざまで、新しい仕事への不安もあると思います。COWROADにはインターンシップ制度があるので、現場を見て、町で暮らして、その上で就職するかどうか決めてもらえます」と渡邉さんは語ります。

左/牛たちと楽しく働く澤田さん。右/インターンシップだけでなく、入社時研修や社員研修など、常に学びの場がある。

現在、澤田さんのメインの仕事は搾乳です。ただ乳を搾るだけでなく、牛の体調やお乳の張り具合のチェック、掃除など牛の生育環境の整備などを任されています。乳がよく出ていると「自分の世話がよかったからかな」とうれしくなるそうです。

澤田さんは「今はCOWORADに骨を埋めるつもりで働いています」と語りますが、従業員の中にはより専門的な研究がしたいと大学院に進む人や、自分の牧場を手に入れ独立していく人などもいます。渡邉さんはそれは「仲間が増え、その活動が広がることで、COWROADにとってもいいことですし、応援しています」と語ります。

「私はこの仕事が未来永劫続いてほしいと考えています。そのための会社化ですし、渡邉家の人間にこだわらず優秀な人がトップにつくことが、酪農の生き残る道だと考えています。酪農は身近な職業とは言えませんが、だからこそフェアで酪農家とダイレクトに話ができる貴重な機会だと思います。コロナ禍で開催の回数が減っているのが残念ですが、これからもフェアを通して酪農に興味があり、一緒に働く仲間と出会いたいと思います」

JAと地域の自治体が協力し、農業と暮らしをサポート JAみなみ信州(長野県南信州14市町村

飯田下伊那地域の田園風景。14市町村からなるエリアで、地域ごとに特色ある農業が営まれている。

JAみなみ信州(みなみ信州農業協同組合)が管轄する「飯田下伊那」地域。長野県南部の14市町村から構成される農業が盛んな地域で、野菜・果樹から菌茸・畜産など標高などに応じた多くの農畜産物が生産されています。JAみなみ信州は1997年に6つのJAが合併して誕生した広域JAで、「新・農業人フェア」にはフェアの開始当初から出展しています。

南信州のブースの看板には「南信州・飯田市」のように、JAと各市町村の名前が併記されています。これは管内自治体とJAが「南信州・担い手就農プロデュース」を組織して出展しているからです。JAみなみ信州担い手支援室所長の澤栁実也さんは、その理由を次のように語ります。

「まず、南信州というエリアを認識していただけること。南信州といっても自然環境や特産品など農作物も異なります。参加者との対話から『この町・この村と話しましょう』などと紹介もします。行政と協働して出展するメリットは、農住相談(就農+移住)として就農と移住が一緒にできること。相談者にとっては、就農だけでなく、生活環境や教育、医療、福祉などの情報も大事だからです」

就農と移住を同時に相談できる南信州のブース。相談者からの希望をじっくりと聞き、希望に沿った自治体を紹介する。左が澤栁さん。

澤栁さんは長年フェアに足を運ぶ人たちを見てきて、大半は漠然と「農業をやってみたい」と考える人たちが情報収集のために来ていると感じています。

「フェアで出会ってすぐに移住就農となるケースはありません。興味を持っていただいた方には、次に長野県や南信州などが主催する就農フェアに来ていただき、南信州にも来ていただく。それを繰り返す中で、南信州での農業や暮らしがイメージできるようになり、そこに魅力とやりがいを見出し、生活設計ができると農住につながると思います」

1回のフェアで話ができるのは15人前後。その中で興味を示された10人ほどに、次の相談会などの案内を送り、実際に現地に足を運ぶのは2〜3人くらい。農住に至る人は年に1〜3人ほどだそうです。それでも「このフェアは十分に有効です」と澤栁さんは言います。フェアは移住就農への第一歩。ここでの出会いから関係を育み、南信州で農業を営もうと本気で考える人を確実に就農に繋げようとする姿勢がうかがえます。

上(2点)/市田柿の栽培から干し柿にするまでの工程や夏秋きゅうりの栽培を学ぶ研修生。下左/収穫前の市田柿。下中/2024年度市田柿コンクールで、研修所の卒業生が最優秀賞を受賞した。下右/夏秋きゅうり。

南信州では「南信州担い手就農研修制度」を整えていて、JAが研修施設を持っています。フェアをはじめ、さまざまルートで集まった新規就農希望者は、この研修を通して「栽培の基本と基礎」を覚えることができます。

「研修は2年間で『夏秋きゅうり』の栽培と、南信州のGI取得特産品の『市田柿』の栽培と干し柿の加工を研修します。この品目は、地域で一番安定した収入になるからです。研修修了生には、就農1年目で5年後の目標販売額を達成した人もいます。研修した上で真剣にやればできるんです。経験を積み、経済的に余裕が生まれたら他の作物を手がけるなど、自分が目指す農業に取り組んでいけばいいと思います」

研修中も修了後も、農地や住宅は市町村が、農業技術習得や販売はJAみなみ信州がサポート。市町村とJAが両輪となり、新規就農者を支える仕組みが、南信州・担い手就農プロデュースの機能です。

「『新・農業人フェア』は最初の出会いの場であり、就農への意欲と覚悟をお互いに認識する場と捉えています。昨年のフェアではスタッフ『南信州』の腕章をつけたところ、来場者はフェアのオフィシャルスタッフだと思ったのか、問い合わせなど声をかけてくれる人が増えました(笑)。今年もフェアで多くの人と触れ合い、長野県南信州への就農希望者を見出して、誘致・勧誘を進めていきたいと思います」

果樹農家になるという夢への一歩を踏み出す 阿部郁弥さん(新潟県佐渡市)

左/佐渡のシンボル、トキ。右/佐渡ではトキとの共生を目指し、田んぼの生態系に配慮した米作りや、棚田の景観を守る活動が活発に行われている。

阿部郁弥(あべ ふみや)さんは、2025年4月から佐渡市内に借りた農地で、独立農家として洋梨や柿の栽培を始めます。以前はインターネット関係の仕事をしていましたが、「デスクワークではなく、体を動かして働きたい」と茨城県の農業法人に転職。その後、独立就農の道を模索する中、2022年に出会ったのが「新・農業人フェア」でした。

「茨城県の農業法人では和梨の栽培をしていました。剪定したり、摘果したり、と自分が手をかけて育てる感覚がおもしろかったので、果樹農家に繋がりそうなブースをいろいろ回りました。2回目に参加した10月開催のフェアで、JA佐渡と出会いました」

左/「新・農業人フェア」の佐渡のブース。中/佐渡は、おけさ柿(新潟県で生産されている種のない渋柿)の代表的な産地でもある。柿の木の剪定の講習を受ける阿部さん。右/濃厚な甘みが特徴の洋梨、ル・レクチェ。

佐渡は米農家も多いが、柿や洋梨の栽培も盛んです。洋梨に興味のあった阿部さんにとって、ル・レクチェと呼ばれる洋梨の栽培に力を入れている佐渡は魅力的でした。そこからの動きは速く、フェアの翌月の11月に佐渡に行き、いろいろな農業の現場を見学。その上で3月からJA佐渡が主催する就農研修制度を活用し、佐渡での就農に踏み出しました。

「研修では米や柿、洋梨などの栽培を学びました。栽培技術以外に農業簿記や税金関係、また販売や流通・加工など、就農に向けた知識や技術を教えてもらいました。研修生中はJA佐渡の職員扱いなので、収入面の心配はありませんでした」

島外からの移住者ははまず、佐渡市が提供するお試し体験住宅に住むことができます。そして研修中に地域の方々とのつながりを作り、そこから農地や住宅を紹介してもらう、ということが多いそうです。阿部さんは研修の途中で、離農する方や規模縮小を希望する方から農地を引き継ぐことができ、3年予定の研修を2年で修了し、独立果樹農家として出発することになりました。

「洋梨は病気にかかりやすいので気をつけたいです。地域にいる洋梨農家さんに教わりながらやっていきたいと思います。以前は、会社の窓から青空を見ていましたが、それよりも青空の下に出て働くほうがずっと開放的でストレスもありません。農業をやりたいと考えてフェアに参加する方は、多くのブースを回って、できるだけたくさんの情報を出展者から引き出してください。それが自分の将来につながると思います」

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