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関係人口

家族のようなつながりをつくりたい。秋田県鹿角市のゆるやかな挑戦

ソトコト事業部

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関係人口のその先の進み方、それは“地域を自分ごとに捉える”ことでもある。その地域が好きでも、いざ関わろうと思った時に躊躇してしまったり、やり方がわからなかったりすることが多い。秋田県鹿角市(かづのし)で開催された『かづコトアカデミー』は地域の解像度を上げて、自分の中で考え、発表する講座。自分が鹿角でできることを考える時間となった。

目次

地域のキープレーヤーを見つけたい

秋田県の東側に縦長に広がる鹿角市は温泉、農産物、文化遺産、スキー場などなどバラエティ豊かなまち。今回「地域を自分ごとに捉えてくれるキープレーヤーを見つけたい!」という強い思いで『かづコトアカデミー』を開催した。

鹿角市では、平成27年に『鹿角ライフ促進班』が立ち上がり、移住者や関係人口を受け入れる体制が本格的に始まった。中でも、独自の取り組みとして、当時の市役所の職員が命名した『鹿角家(かづのけ)』では、関係人口を家族に見立てた政策として年々会員数が増え続けている。月1回のメールマガジンの送付や、年に2回“家族会議”と称して交流会を開催するほか、家族が鹿角の困りごとを助け合う“関わりしろマッチングツアー”も実施している。

「鹿角を盛り上げるキープレーヤーを見つけることが今回の目標です。地域の中で活動している人と受講生、また受講生同士がつながって新たな気づきや、動きが出てくれるとうれしいです」と担当者である鹿角市役所・似鳥さんは話す。

誰でも鹿角の関係人口になれる『鹿角家』。詳しくはこちらから。
https://kazuno-gurashi.jp/kazunoke

フィールドワーク 鹿角愛が強い人たちを巡る

『かづコトアカデミー』のフィールドワークは、メンターの勝山さゆりさん(NPO法人関善賑わい屋敷・事務局長)が集めてくれた“鹿角愛が強い人”たちを訪ねる。

地域おこし協力隊を経て独立した方、農家を応援したいとスタートしたサンドイッチ屋さん、地元と景色を守りたいと活動する方やりんご園を営む農家さんたちと交流する超濃厚な3日間。地域に住む人が地域のことを話すと、そのリアルな強い言葉によって鹿角の解像度が上がっていった。

オリエンテーション 互いがご機嫌であるために

「ものごとは止めてはならない」と、メイン講師を務める『ソトコト』編集長の指出一正は話す。地域の人口減少率は目に見えて進んでしまっているが、一方では地域という“心のルーツ”を取り戻そうとしている人たちもいるそうだ。今回の受講生たちの中には、鹿角を知らなかった人から、地元に戻りたいと思って何かできないかと考えて参加した人もいる。『かづコトアカデミー』を通して、受講生たちと鹿角が互いにご機嫌でいられる在り方を模索した。

『GRACE KITCHEN』のサンドイッチ

レタス、鶏肉、トマト、たまごがたっぷりぎゅうぎゅうに入ったサンドイッチ。これは地域の頼れる明るい存在、阿部さんが経営する『GRACE KITCHEN』の自慢の逸品。新鮮な野菜がたくさん食べられる大満足の食べ応え!

燻製屋猫松 松村さん活動紹介 9年住んで言えるのは

『燻り大根漬け』や『燻りナッツ』など人気商品を生み出し続ける『燻製屋猫松』の松村託磨さんは、地域おこし協力隊として大阪から鹿角に移住した。

地域おこし協力隊時代に、県と市が主催するビジネスコンテストで『燻製ビジネス』を発表し銀賞を受賞。その話を聞いた近所の方が、松村さんの協力隊任期が満了する頃に「大根を植えたぞ、これでいぶりがっこを作れ」と託してくれたこともあった。

松村さんは「9年住んで言えることは、ここは良いところ、人があたたかい」と力強く受講生に話していた。移住者を“外の人”と呼び、受け入れに時間を要するところもあるが、松村さんにとってここは心地良く「鹿角じゃなければ残ろうと思わなかったはず」とも語る。

旧関善酒店 メンター・勝山さん活動紹介 地域のかかわりしろを作る関善

地域と関わりたいと思った時に、最初に誰に会うかが重要になることがある。かつて繁栄した『関善酒店』の建物を引き継いだ『NPO法人関善賑わい屋敷』の勝山さゆりさんは『かづコトアカデミー』のメンターとして地域と受講生の繋ぎ役を担う。「昔もここを中心に栄えたように、人との繋がりの場所として活用していきたい。受講生の皆さんにも鹿角に帰ってきたら“ただいま”と関善に寄って欲しいし、繋がりを持ち続けたい」と話してくれた。

1日目交流会 きりたんぽを囲って過ごす夜

おもてなしメニューでもある“きりたんぽ”。受講生たちはたんぽ作りに初挑戦。お米を潰して粘り気を出す作業“半殺し”をして、木の棒に上手に伸ばしていく。初めての作業に戸惑いながらも、完成。

テーブルいっぱいのご馳走と、お酒の力も借りつつ受講生たちも溶け込んで会話が止まらない交流会。片付けでは、それぞれが率先して作業をしてあっという間に終了。地域・鹿角という見えないチーム力を感じられた一幕だった。

『GRACE KITCHEN』阿部さん活動紹介 声をかける大切さ

「野菜を作っても1/3が破棄するものなんです。農家さんには、形が歪でも新鮮であればOKと伝えて野菜を仕入れします」と話すのは『GRACE KITCHEN』を経営する阿部めぐみさん。前職を辞めて、市役所の一角を借りてサンドイッチ屋さんを始めた。鹿角でも若い人の数は減っているため、同世代でもなかなか繋がりが持てなかったり、情報が届かかったりする場合が多い。そんな若い世代の繋ぎ役として買いに来てくれた人たちに声をかけていると阿部さんは話す。

ケマカツ・毛馬内商店街散策 赤坂さん活動紹介 子どものためにイベントを

ユネスコ無形文化財『毛馬内(けまない)の盆踊』が開催される毛馬内地区。ここも人口減少の波が押し寄せ、人通りが寂しくなっていた。どうにかここを盛り上げたいと立ち上がったのは、赤坂勲さん(毛馬内商店街活性化活動グループ 通称:ケマカツ)。ホコ天や季節のイベントを、仲間を集めて開催。「子ども達が楽しめるイベントを作ろうと思いました。自分がそうであったように、大きくなった子ども達が地域の原動力になってくれたらうれしいです」と話す。また、赤坂さんの案内で、毛馬内商店街から徒歩10分ほどにある、関係人口『鹿角家』のプラットフォーム『kemakema』も訪問した。

大湯観光りんご園 妹尾さん活動紹介 Uターンしてリンゴ園を引き継ぐ

「虫を殺してまで、リンゴを食べたくない」この言葉で受講生の心を打ち抜いた『大湯観光りんご園』の妹尾千夏さん。Uターンして実家のリンゴ園を引き継ぎ、自然と争うのではなく最低限の農薬でリンゴを育てている。農作業の傍ら『かづのSMILE☆RING』という若手農家チームに参加したり、ロケを呼ぶための活動『ロケーション鹿角』にも参加したりと、活動的だ。柔軟で、真をつく妹尾さんの言葉に、ハッとさせられた。

大湯環状列石見学 こんなにすごいものが鹿角にある

縄文時代後期の大規模な遺跡『世界文化遺産 大湯環状列石(おおゆかんじょうれっせき)』。ここには、2つの環状列石が残る。『大湯ストーンサークル館』にはここでしか見られない展示や特別映像がある。ロマンあふれる縄文時代に想いを馳せた。

最終日のワークショップ 鹿角愛に触れて

直接現地で見て、話を聞けることで、想像していなかった自分の新たな感情を生むきっかけになることもある。受講生達は、SNSで鹿角についてPRしたい、鹿角弁を話せるようになりたいなど、それぞれの想いを発表した。

最終発表会 自分ごとと鹿角をとらえて

『かづコトアカデミー』最終回。受講生達は自分ができること、挑戦したいことを発表する。

ストーリー仕立てで鹿角を巡るアプリの提案、きりたんぽを切り口にしたイベントの開催など、発想豊かな内容・プランが発表された。地元である鹿角と関東の二拠点で活動することを目指して参加した針生恵美さんは、都内でのマルシェの開催、鹿角に興味がある友人・知人のアテンドをしたり、現地の方との繋ぎ役を担ったりしたいと発表した。関係人口をどう地元と繋いでいくかに戸惑う地域も多いが、自分ごととしてとらえて発表することで、より一歩先に進んでいく姿が見えた。ここからスタート、今後続いていく鹿角と受講生達の繋がりが楽しみだ。

受講生発表例

地域のメディアを作りたい(埼玉県在住・田中恵理さん)

『ぽんタナ』という地域の紹介をするWEBメディアの立ち上げを提案した田中恵理さん。「“鹿角”を読めなかった私が、出会って5分で地元の人の家に上げてもらったんです。それがうれしくて。自分を表現しながら地域に携わることがしたい」と話す。

外の視点に刺激をもらった(鹿角市在住・奥寺雅善さん)

「自分の事業を行いながら、教育支援をしています。なので今回、教育という観点で何かできないかと発表しました。地元にいると当たり前に感じてしまうことが、みんなの話を聞いて刺激をもらった」と語る奥寺さん。

『かづコトアカデミー』の取り組みを通じて鹿角市や『鹿角家』が気になった方はこちらをご覧ください。
https://kazuno-gurashi.jp/kazunoke

【写真】奥崎有汰、鹿角市
【文章】根岸那都美

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