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日本一ラーメンを愛する県はどっち? 山形VS新潟、ラーメン王国の奥深い話【山形県・新潟県】

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総務省の家計調査で、1世帯あたりのラーメン年間支出額が常に上位に君臨する山形市と新潟市。近年は山形市がわずかにリードしていますが、新潟市との差はほんのわずか。毎年のように両市が首位争いを演じています。今回は、この二つのラーメン王国の奥深い文化をご紹介します。

目次

なぜ山形と新潟なの?

「ラーメンといえば東京でしょ?」と思った方もいるかもしれません。でも実は、総務省が都道府県庁所在市と政令市を対象にした家計調査で、ラーメン消費額が常に上位に名を連ねるのが山形市と新潟市なんです。

近年は山形市がわずかにリードしていますが、新潟市との差はほんのわずか。毎年のように両市が首位争いを演じています。

人口10万人あたりのラーメン店数でも、山形県が全国1位、新潟県が2位。もはや両県にとって、ラーメンは外食というより、日常に欠かせない「食のインフラ」と言っても過言ではありません。

山形――夏でも冬でも、ラーメン!

冷やしラーメンという発明

山形市のラーメン文化を語る上で欠かせないのが「冷やしラーメン」です。山形市の老舗『栄屋本店』が発祥とされるこの一杯は、昭和20年代に誕生しました。

山形は盆地特有の気候で、夏の暑さが厳しいことで知られています。そんな暑い日でも美味しくラーメンを食べたい――そんな想いから生まれたのが冷やしラーメンでした。

氷を浮かべた冷たいスープに、冷水でしめた麺。一見シンプルですが、この存在によって山形では一年を通じてラーメンが食べられるようになりました。冷やしラーメンの存在こそが、山形のラーメン消費量が夏でも落ちない最大の理由なんです。

エリアごとに違う、山形ラーメンの多様性

山形県の面白いところは、県内のエリアごとに全く違うラーメン文化が根付いているところです。

赤湯温泉の「赤湯からみそラーメン」は、辛味噌が特徴。『龍上海』が発祥のこの一杯は、旨辛の味噌が麺に絡み、クセになる美味しさです。

酒田市の「酒田ラーメン」は、あっさりとした醤油ベースに自家製麺が特徴。漁港のまちらしく、魚介の旨みが効いています。

新庄市の「とりもつラーメン」は、鶏のモツ(ハツ、レバー、砂肝、鶏皮など)から出たコクと旨みが凝縮された一杯。『梅屋』などの名店が地元で愛され続けています。

鉄棒で打つ、ちぢれ麺

山形ラーメンのもう一つの特徴が、鉄棒を使った独特の製麺法です。鉄棒で打つことで生まれる強いコシと、波打つようなちぢれ麺。この麺が澄んだスープと絶妙に絡み合います。

この製麺技術は、実はそば文化が深く根付いた山形ならでは。そば屋が中華そばも提供するようになったことで、そばの技法がラーメンに応用され、独自の麺文化が花開いたんです。

天童市が発祥とされる「鳥中華」は、まさにそば屋から生まれた一杯。和風の出汁に中華麺を合わせたハイブリッドなラーメンで、地元で長年愛されています。

新潟――五つのご当地ラーメンが共存する多様性

新潟五大ラーメン

新潟県のラーメン文化の最大の特徴は「多様性」です。新潟五大ラーメンと呼ばれる「新潟濃厚味噌」「燕三条背脂」「長岡生姜醤油」「三条カレー」「新潟あっさり醤油」。これほどまでに多様なご当地ラーメンが一つの県に共存している例は、全国を見渡してもそう多くはありません。

燕三条系ラーメンは、極太麺と背脂がたっぷり浮かんだ煮干しスープが特徴。工業地帯で働く人々のために、冷めにくく高カロリーなラーメンとして発展しました。地域の必要から生まれた一杯なんです。

長岡生姜醤油ラーメンは、生姜の風味が効いた醤油スープが身体を温めます。豪雪地帯である長岡ならではの工夫ですね。

三条カレーラーメンは、その名の通りカレー味のラーメン。『正広』などの人気店が、独自のカレースープを完成させています。

米どころだからこそ、外食は麺

興味深いのは、山形も新潟も日本屈指の米どころだということ。家では美味しいお米を食べているからこそ、外食では麺を選ぶ――。そんな食の使い分けが、ラーメン文化を支えているという指摘もあります。

新潟市内を車で走ると、幹線道路沿いにラーメン店が次々と現れます。その密度の高さは、他県からの訪問者を驚かせるほど。

そして職場では、連日のようにラーメンの話題で持ちきり。「あそこの新店が美味しかった」「あの店の味が変わった」といった情報交換が、日常会話の一部になっているんです。新潟では、ラーメンの話題が尽きることはありません。

ラーメンに人生を捧げる人たち

山形には、500種類を超えるラーメンレシピを考案した方がいます。人生を山形ラーメンに捧げ、地域のラーメン文化を記録し続けているんです。

新潟には、山形県出身でありながら新潟ラーメンを愛しすぎて、新潟のラーメン文化に魅了された方もいます。職場でみんながラーメンの話ばかりしていて衝撃を受けたそうですが、今ではすっかり新潟ラーメンの虜に。

こうした「ラーメンに人生を捧げる」人々の存在が、地域の食文化を次世代へとつなぐ原動力となっているんですね。

地域を支えるラーメン店

両県のラーメン店を訪れて感じるのは、それぞれの店が地域コミュニティの核となっているということです。

常連客同士が顔見知りになり、店主との会話を楽しむ。家族連れ、サラリーマン、学生、高齢者――あらゆる世代が集う場として、ラーメン店は機能しています。

また、地域経済を支える存在としても重要です。地元の食材を使い、地域で雇用を生み出し、地域内でお金を循環させる。こうした地産地消の仕組みが、持続可能な地域経済の土台となっています。

山形県では「山形ラーメン王国」を掲げ、観光資源としてのラーメンをPR。新潟県も同様に、ラーメンを核とした地域ブランディングに力を入れています。

東京でも食べられる、でも現地で食べたい

両県のラーメンは、東京への進出によって全国区の認知を獲得しました。

燕三条系の『らーめん 潤』が2005年に東京・蒲田に進出し、背脂煮干のパンチあるスープで話題を呼びました。続いて長岡生姜醤油ラーメンの『青島食堂』が2009年に秋葉原に出店し、行列必至の人気店に。

山形からも多くの名店が東京に進出。『龍上海』の赤湯からみそラーメンは、都内でも熱狂的なファンを獲得しています。

でも、東京で食べるラーメンと、現地で食べるラーメンはやっぱり何かが違うんです。地域の空気、水、そして人々の暮らしと一体となったラーメンこそが、本当の「ローカルラーメン」。機会があれば、ぜひ現地で味わってみてください。

あなたの地域のラーメンは?

山形と新潟のラーメン文化を見つめると、一杯のラーメンに込められた地域の知恵、歴史、人々の想いが見えてきます。

厳しい気候を乗り越える工夫、地域の食材を活かす知恵、世代を超えて受け継がれる技術。そして何より、美味しいものを囲んで人々が集い、語り合う――そんな豊かな時間が、そこにはあります。

あなたの地域には、どんなラーメン文化がありますか?地域の気候や歴史、人々の暮らしから生まれた、その土地ならではの一杯がきっとあるはずです。

山形市か、新潟市か。あなたはどちらのラーメンを食べに行きますか?


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