折り返し地点は、あえて同じキーワードを2回
「関係人口の最強キーワード7」シリーズも、全8回のうち今回で4回目。実は7つあるキーワードの中で、「二拠点思考」だけがこの2ヶ月連続で取り上げられています。前回は建築家の馬場正敬さんが多拠点居住の「生き方」ともいえる思想を語ってくださり、今回はその考え方をサービスとして実装されてきた佐別当さんが登壇しました。理論と実践、両方の視点から同じテーマを見つめる、シリーズならではの構成となりました。
「家守」という仕組みが、二拠点生活を”暮らし”に変える
ADDressは、住まいのサブスクリプションサービスとして2019年にスタートし、現在は全国およそ300物件まで拠点を広げています。個室を完備しつつリビングやキッチンは共有するシェアハウス型が中心で、利用料には家賃や光熱、Wi-Fiまでが含まれる仕組みです。
このサービスの核にあるのが「家守」と呼ばれる存在です。物件の管理だけでなく、地域との交流を橋渡しする役割を担っており、食事会や山登り、地元の職人や生産者とのつながりをつくる場を用意しています。一度きりの宿泊で終わらず、「またこの人に会いに行きたい」という気持ちが、延泊やリピートにつながっていくのだと佐別当さんは説明します。空き家問題や人口減少に悩む地域にとっても、旅行者ではなく地域に関心を持って通い続けてくれる人が増えることは、大きな意味を持つといいます。
二拠点は「新しい自分に出会う機会」
佐別当さん自身も、北海道・札幌と静岡・三島という二つの拠点を行き来してきた実践者です。もともとは東京でIT企業に勤めていたそうですが、40代になってから、山登りにのめり込んだり、地元の八百屋や肉屋で買い物をして料理をすることが好きになったりと、これまで気づかなかった「自分の関心に出会う機会」が一気に増えたといいます。一つの場所に定住していると見えてこない好きなものが、住む場所を変えることで少しずつ姿を現す。それが佐別当さんの考える二拠点生活の本質です。
地名に反応する感覚こそ、二拠点思考の入り口
クロストークでは、ホストの指出が「二拠点思考」という言葉に込めた思いを語りました。地域に足を運ぶことは、その場所を心の中に背負うことでもある、というのが指出の考えです。かつて登山家に教わったという「知ることは背負うこと」という言葉を引きながら、ニュースで自分の関わりのある地名を見かけたときに、心がわずかに動く感覚こそが、二拠点思考の証なのではないかと投げかけました。佐別当さんも、好きな地域の名前がニュースに出るとつい反応してしまうと応じ、二人のやり取りからは、二拠点思考が必ずしも「移動」を前提にした話ではないことが伝わってきました。
まとめ:あなたの中にも、きっと複数の”拠点”がある
セミナーの終盤、指出は参加者に向けて、自分の心の中にある「二拠点」がどことどこなのか考えてみてほしいと呼びかけました。仕事の拠点だけでなく、家族や趣味、思い出の場所まで含めれば、実は誰もがすでに多拠点的に生きているのかもしれません。二拠点生活は特別な誰かのものではなく、住む場所を一つに固定しない生き方そのものへの入り口なのだと感じさせてくれるセミナーでした。
本セミナーのアーカイブ動画は、日本関係人口協会の会員の方に限定公開しています。
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