いまやパソコンは仕事や生活において欠かせないものとなっています。多くの企業では社用PCを一括で購入して運用していますが、画一的に用意されたPCでは個人個人の業務内容にフィットしないとの声もよく聞かれます。そこで、システム・アプリケーション開発の経験から、企業にも、そして地球環境にもベストなPCをリースする取り組みを続ける株式会社J-PROUT代表取締役の橋元龍二さんにお話をうかがいました。
橋元龍二さん(以下、橋元) J-PROUTは元々、システム・アプリケーション開発を請け負っていたのですが、様々な企業の担当者と話をする中で、社用PCに関する不満を聞く機会が増えました。
そのなかで調べてみると、業務内容に合っていないPCをメーカーの商品ラインナップの中から選択し、そのまま使っているケースが多くあったのです。例えば、CPUの性能は良いがメモリが不足している、あるいは業務に関係のないアプリケーションがインストールされていて、それが容量や処理能力に負荷をかけているなど、スペックがアンバランスなPCを使わされていることが多かったのです。
ソトコト それは、販売側がユーザーのニーズに応えられずにアンバランスなものを提供してしまっていたということでしょうか?
橋元 違います。敢えてアンバランスなものを提供していたのです。そうすることで、例えば10年使えるはずのものが5年で不満がたまってきます。そして、「買い替えませんか?」と迫るわけです。つまり、買い替えサイクルを早めるために、敢えてアンバランスなものを提供していたのです。
これ自体が責められるべきことかは、ここでは深く追及しませんが、このようにしてPCのゴミが大量に増えてしまいます。PCには様々な金属部品が使われているため、処分することが大変です。PCをゴミにしてしまうと、環境にとても大きな負荷をかけてしまうのです。
そこで、廃棄されたPCをアップサイクルし、企業に購入してもらうのではなく、レンタルする事業を始めました。
アップサイクルされたPCをレンタルで運用するのが一番スマート
橋元 それは問題ありません。たとえば、7年ほど前のモデルであっても、専門的な技術を使わない基礎的な修繕で、最新スペックと遜色ない性能にまで生まれ変わらせることができます。
また、このようなアップサイクルには、PCを取り巻く環境の変化も影響しています。現在のビジネスシーンでは、PCそのものの性能というよりも、クラウド上でデータを管理することでPCの容量の問題はある程度解決できますし、ChatGPTなどのAIのサポートを受けることで、PCそのもので作業する必要も減ってきています。そのため、比較的古いPCであっても、現在のビジネスに必要な性能を満たしているものもあります。
ソトコト PCの役割が変わってきているわけですね。以前は保管庫であり作業ツールであったわけですが、今ではそれらの機能をつなげる役目が主になってきていると。
橋元 そうです。なので、使い方を工夫すれば、元になったものがたとえ少し古いPCであっても、問題なく運用できるというわけです。そうすれば、PCにかける負荷も少なくなり、長持ちするので使う人にも、地球の環境にもいいことばかりです。
逆に、性能の悪いPCを短いスパンで買い替えていると、生産性は悪いしトラブルも起こりやすいし、ゴミも出てしまいます。しかし、売る側としては短いスパンで買い替えてもらいたいので、なかなかこういった状況が改善されないのが現状です。ここで、J-PROUTがアップサイクルされたPCをレンタルで運用することで、企業側は長期的な視点でPCを運用することができ、環境にも貢献することができます。
ソトコト いま「売る側」という言葉がありましたが、J-PROUTがPCを販売するのではなく、レンタルしている理由は何なのでしょうか。
橋元 これも、ゴミを減らすための取り組みのひとつです。新型コロナウイルス感染症の流行以来、人の働き方は大きく変わりました。これは企業側も同様で、たとえばオフィスを引き払ってリモートワークに移行したり、全社がそうでなくとも一部の部署をそのように切り替えたりといった変更をすることが増えました。そんなとき、購入したPCですと行き場がなく処分することになってしまいます。レンタルであれば、使わなくなったものは返却するだけですから、廃棄せずに済みます。
また、これは当たり前の話ですが、PCというのはただ購入しただけでは動きません。セッティングが必要です。購入したものは買ったらそれっきり、ということも多いですが、J-PROUTのレンタルではセッティングなども行います。さらに導入時だけでなく、万が一PCが故障してしまったときの対応も、レンタルサービスであれば迅速に対応できます。そして、廃棄することなく再利用することができるため、環境にも貢献することができます。
ソトコト レンタルのほうがさまざまなシチュエーションで柔軟性が高いわけですね。
橋元 はい、そうなんです。そして、コスト面でもレンタルにアドバンテージがあると考えています。PCを一度にたくさん購入すると、それなりな金額になりますから、経営面を圧迫することもあります。一方、レンタルであればコストを分割できるため、経営的に余裕を持ちやすくなります。
ソトコト PCをレンタルするとなると、多くの方が気になるのがセキュリティの面だと思いますが、こちらに関してはどのようにケアされているのでしょうか。
橋元 おっしゃる通り、セキュリティは非常に重要な課題です。レンタルが終了したものはすべて初期化し、工場出荷状態で返却いただくようになっているため、セキュリティ的なリスクは発生しないようになっています。もちろん、初期化の方法についても、わからないという方にはマニュアルを共有したり、オンラインでサポートを行うこともあります。これらの対策によって、お客様に安心してレンタルしていただけるよう努めています。
大切なのは、ゴミにしないこと。地域再生にも視野を広げるJ-PROUTのビジョン
橋元 「ゴミ」というものは、一度の仕事を終えたものであって、再び新しい価値を与えることができる可能性があるものです。例えば、飲み物が入っていた瓶は、中身を飲み干した後には「もう飲み物が入っていない瓶」として捨てられることがありますが、「空いている容器」として再利用することもできます。このように、ものに新しい側面を見出すことができると、さまざまな気付きを得られると思います。
昔から、瓶を溶かして再利用する方法はありましたが、この方法にはエネルギーを必要とする問題があります。今後のゴミの再利用には、エネルギーを使わず、一度も「ゴミ」として扱わない方法を見つける必要があると考えています。
私は大分出身で、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに大分でテレワークをはじめました。大分に戻る前は、「こんなところに何もない」と思っていましたが、この視点を持って戻ってみると、地方には都会にはないポテンシャルがあることに気付かされました。東京では生まれなかったアイデアが生まれることもあり、自分を都会とは違う場所に置くことも重要だと感じました。現在は東京と大分を拠点にしていますが、徐々に大分に居る比率が高まっています。
橋元 大分県杵築市では、後継者のいないガソリンスタンドに地域住民が立ちあがり、各家庭に灯油のタンクを設置し、スタッフが町を巡回することで、ガソリンスタンドが高齢化が進む地域の独居老人などの見回り機能を果たしています。こうすることで、ガソリンスタンドに新しい収益モデルと価値をプラスすることができます。既存のリソースや地域の課題を組み合わせて、新しい価値を設定するというのはとても素晴らしいアイデアだと思いますね。
ソトコト ものに新しい価値を吹き込むというアップサイクルの考え方で、新しいビジネスや地方の価値創出につなげていくわけですね。本日は、ありがとうございました。
https://www.j-prout.co.jp/
SDGs の目標12「つくる責任 つかう責任」のターゲットである「廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」への啓蒙活動として、企業のアップサイクルや、GOMITAIJIの取り組みを紹介するコンテンツを「ソトコト×GOMITAIJI」としてソトコトオンラインにて掲載していきます。
一般社団法人GOMITAIJI
https://www.gomitaiji.or.jp/