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サスティナビリティ

実はエコな“コルク”。企業とNPO法人が手を取り合って広がる利用の輪

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明治時代からコルク製品、ゴム製品、瓶の王冠などを製造してきて、近年では木工製品も手がける永柳工業。特定非営利活動法人RE機構と協業し、会社の原点であるコルクのアップサイクルを通じてSDGsに向けた取り組みを行なっています。ここでは同社の代表取締役社長である丹羽浩之さんと、RE機構代表の清野眞里惠さんにコルクについてのお話をうかがいました。

目次

原点回帰!ゴミ拾いから始まったコルク工業

ソトコト 創業のきっかけや歴史について教えてください。

丹羽社長(以下、丹羽) 当社は明治時代の1896年に創業し、今年で126年目を迎えます。創業当時はワインが日本に入り始めた頃で、使用済みのコルク栓が川などに捨てられていました。それを回収して目薬などの更に小さな栓へと再加工したのが始まりです。

その頃は現在のようなネジキャップも無く、目薬は木製の栓で封をしていたので、ワイン栓の軽くて柔らかいコルクを再加工した目薬の栓は評判になりました。ワイン栓から小さな目薬の栓を何個作れるかという程度でしたが、同業者はおそらく10社ほどいて、同業組合もありました。それが日本のコルク工業の始まりです。

ソトコト リサイクルの先駆けですね。

丹羽 その後、日本で競馬が盛んになると馬が船で運ばれるようになりましたが、蹄を保護するため船底一面にコルクの樹皮が敷き詰められていて、馬が荷揚げされるとそれが全部捨てられていたんですね。それを回収し大量の原料コルクが一度で手に入るようになりました。

ちょうどその頃、ビールやサイダーが国産で作られるようになり、金属製の王冠の蓋が開発されました。その裏に付けるコルクの需要でコルク工業が一産業へと発展しました。ビールが売れ出すと、廃コルクを回収するだけでは材料が間に合わなくなり、ヨーロッパからの輸入貿易が本格的に始まりました。

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ソトコト コルクの特徴はどういった点でしょうか。

丹羽 コルクの原料はコルクガシという木で、木自体を切らずに皮だけを剥いでいるのが一番のポイントです。コルクガシの樹齢はだいたい250年で、最初の樹皮を剥がすまでには25年ほどかかりますが、その後は9年ごと樹皮が再生され、20サイクルほど剥ぐことが出来ます。

樹皮は剥がないと生えてきませんし、何度も剥いだ方がいいコルクになるのです。さらに皮を剥ぐと、自分を守ろうとして二酸化炭素を吸収し、新しい樹皮を作り出すので、二酸化炭素の吸収率が上がるという特性を持っています。

ソトコト 非営利活動法人とも協業されているそうですね。

丹羽 ある時、特定非営利活動法人のRE機構さんから、「ホテルなどから回収したコルクの栓をリサイクルできませんか?」という相談がありました。RE機構さんは、コルク栓の回収を通して、心身に不自由のある方々、障がいのある方々の雇用の機会を拡げ、安心して意欲を持って働くことができる環境を創り出すという社会貢献をされています。

単なるリサイクルではなくてアップサイクルをする、ということで意見が合い、コルク業界が廃品利用から始まったことを先代から聞いていた私は、これもご縁だと思い協業させていただくことになりました。

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ソトコト 回収はどのようにして行っているのでしょうか。

RE機構 清野理事(以下、清野) コルク栓の回収のスタートは、個々のお店ではなく大手ホテルでした。そのホテルでは1日に高級ワインが何本も抜栓され、ゴミ袋いっぱいのコルク栓が廃棄されていたのです。当初は毎日電車で通ってそのコルク栓を回収していました。

その後、ライオンズクラブやリファーシステム・ジャパンという運送会社が私たちの理念に共感してくださり、一緒に回収をしてくれるようになったのです。おかげで回収量も大きく増えました。

ソトコト ワイン栓にもコルクだけでなく種類がありますよね

清野 回収したコルクはまず洗浄し、プラスチックや樹脂などと分け、更にワイン栓やシャンパン栓などの種類別にも分別します。墨田区もこの事業に協力してくれており、洗浄や選別などの仕事は墨田区内の障がい者施設の方たちがしてくれています。

コルク栓の種類は目の見えない方でも、形の違いや質感、温度の差を触るだけで判別できるので、世田谷区の施設などからも手伝いに来てくださっています。そのように丁寧に分別して10kg単位にしたものを永柳工業さんにお渡しします。

丹羽 リサイクルコルクはバージンコルクに比べていろいろと不自由な点も多いですが、その欠点を何とか工夫してどうすれば製品にできるかをいつも考えています。私は料理が趣味なのですが、わざわざ材料を買ってきてつくる料理と「冷蔵庫の余り物だけで何か作れないか」という料理がありますよね。コルク栓のアップサイクルはそれとよく似ています(笑)。クラッシュ後にプレスして、靴の中物にしたり、建材や雑貨に再加工したり、いつもアイデアを捻っています。

実はエコ、SDGsで追い風が吹き始めたコルク

ソトコト コルクのワインが環境配慮型として見直されているんですね

丹羽 はい、先にもお話しした通り、コルクの環境への良い影響が見直され、ヨーロッパでは小売店やホールセラーなどで独自の環境基準に合致するには、コルク栓を使わなければという流れです。

清野 コルク栓1個あたりの二酸化炭素吸収量を計算する会社も出てきており、銀行からも「コルクのリサイクルは環境問題に貢献出来ているのではないか。もっと謳ってもいいのではないか」という意見もありました。

Cavaというスパークリングワインを作るスペインのワイナリーは、独自の基準、例えば酸化防止剤の含有量や、農薬使用量の少ないオーガニックワイン、ボトルの軽量化などで認定ワインを作っており、ガラス瓶を薄くしたりラベルを簡素にしたりと、いろいろ工夫してSDGsに貢献しています。そしてそこには必ず、コルク栓が使われます。

丹羽 今はコルクが足りなくなるほど、コルクのワイン栓が使われるようになってきました。日本も後追いで積極的にコルクを使い始めています。仕入れ原価も少し上がってきてはいますが、日本でもそういう気運が高まるのは良いことだと思っています。 私たちの活動がコルクを見直すきっかけになれるとよいですね。

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▲RE機構理事長 清野さん(左)と永柳工業の丹羽社長(右)。
永柳工業株式会社
https://www.nagayanagi.co.jp/
特定非営利活動法人 RE機構
http://www.re-kikou.org/regaiyo.html
■ソトコト×GOMITAIJI
SDGs の目標12「つくる責任 つかう責任」のターゲットである「廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」への啓蒙活動として、企業のアップサイクルや、GOMITAIJIの取り組みを紹介するコンテンツを「ソトコト×GOMITAIJI」としてソトコトオンラインにて掲載していきます。
一般社団法人GOMITAIJI
https://www.gomitaiji.or.jp/

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