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アートには地域の魅力を発見する力がある。福島・かつらお村へ行ってみた!

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福島県・葛尾(かつらお)村は、東日本大震災およびそれによる原子力災害後、全村避難を経験しました。2016年に避難指示の大部分が解除され、今、全力で新たな村づくりに取り組んでいます。その力の源になるのが「アート」。若年層の移住者が増えているという葛尾村に行ってみました!

目次

自然豊かな里山とともにある葛尾村

福島県の葛尾村は、阿武隈山系に囲まれ、自然豊かな里山が暮らしとともにある山村です。村の中心部の標高は434メートル。夏は涼しく、冬が寒いのが特徴です。主な産業は農業と畜産業で、都内の三ツ星レストランにも卸されるおいしい羊肉を育てる畜産農家もいます。
こんにちは かつらお|福島県葛尾村移住定住ポータルサイト (142729)

葛尾村は福島県浜通りの阿武隈山系に属し、双葉郡の最北端に位置する。
『葛尾村移住・定住支援センター』のホームページ「こんにちは かつらお」から引用。
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葛尾村移住応援ガイドブック2022『こんにちは かつらお』より。葛尾村には羊肉のほか、高品質ニットや蕎麦など数々の特産品がある。

若年層の移住者が増えている村

そんな葛尾村ですが、2016年6月に一部を除いて避難指示が解除され(※)、住民の帰還が始まりました。今年10月1日現在の人口は1314人。実際に住んでいる村民は467人です。

ただ、その467人のうち135人は避難指示解除後の新たな移住者です。新しいことにチャレンジする若年層が増えてきているそうです。

そして葛尾村では今、「アート」の力を使って村の魅力を再発見し、さらに移住定住の促進にもつなげていこうという試みが始まっています。

※葛尾村で避難指示が継続していた野行地区について、特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が今年6月に解除された。

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葛尾村の風景。農業と畜産業が盛んで、里山暮らしが楽しめる。
写真提供:葛尾むらづくり公社

「人とアートに触れる旅〜1泊2日移住体験ツアー〜」を開催

そのアートをテーマにした村の取り組みの一環として、9月下旬に行われたのが、「かつらお村の人とアートに触れる旅〜1泊2日移住体験ツアー〜」という一般公募のツアーです。

「『アート』を後押しする移住ってあまり聞いたことがなく、興味を持ちました」などと、アートや田舎暮らしに関心を持つ方が、東京都や埼玉、山形、福島県内などから参加しました。

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ツアーには葛尾村長の篠木弘さんも出席。参加者に村の魅力などを語った。
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ツアーでは紙バンドを使ったコースターづくりも体験した。
このツアーの内容を企画したのは『葛尾むらづくり公社』が運営する『葛尾村移住・定住支援センター』で、地域プロジェクトマネージャーを務める成田朱実さん(27歳)と山口和希さん(25歳)。実はこの二人もそれぞれ東京から今年2月、3月に移住をしてきた方です。
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移住者でもある『葛尾村移住・定住支援センター』地域プロジェクトマネージャーの成田朱実さん(左)と山口和希さん(右)。
成田さんは「以前は外資系のIT企業で働いていました。自然がある場所への移住を考えていて、葛尾村の求人を知り応募しました。村の人はやさしく接してくれますし、川のせせらぎが聞こえてきたり、満天の星空を楽しめたり、本当にいいところです」と話します。

また、山口さんは葛尾村へのアート移住のメリットについて、「人口が少なく、土地はあるので、作品制作はしやすいと思います。村営の体育館や使われていない中学校の体育館もあるので、展示に使えたりもします」と教えてくれました。

学生たちによる展示「第2回 松本家展」を見学

ツアー中には、村の中心部にある『葛尾村復興交流館あぜりあ』で開催されていた「第2回 松本家展―昨日の記録、1万年の記憶―」を見学する時間もありました。

これは、インターンなどをきっかけに葛尾村に関わるようになった村外の学生など若者たちが、震災を機に人が住まなくなった「松本家」という一軒家に集まり、そこにあった営みをそれぞれの方法で「記録」した、その取り組みの展示会です。

松本家がある地区には縄文時代の人の居住遺跡があり、松本家の畑からは江戸時代のたたら製鉄によるものと見られる鉄くずも出てくるそうです。

1万年にも及ぶ記憶の蓄積を、今の若い世代が掘り起こし、文章や写真、映像、模型などで記録した展示会になっていました。

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2018年6月に完成した復興のシンボル的な交流施設『葛尾村復興交流館あぜりあ』。
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『あぜりあ』で開催されていた「第2回 松本家展―昨日の記録、1万年の記憶―」のトークイベントと展示作品。

アーティスト・イン・レジデンスの展覧会も

また、村立葛尾中学校の校舎と体育館では、『葛力創造舎(かつりょくそうぞうしゃ)』主催によるアーティスト・イン・レジデンス事業「Katsurao AIR」の展覧会「Travel in the Hole」が開催されていました。

Katsurao AIRは「対話」「参加」「協働」を目標として運営しています。主に外部からアーティストを招き、村に通ったり滞在してもらいながら作品制作や地域のリサーチを行ってもらう事業です。アーティストの活動を通して、地域の魅力を再発見、発掘し、その内容をアートの力で広く伝えてもらうことも目的の一つにしています。

展覧会では、招聘アーティスト2名が村で暮らす人々と時間をかけてコミュニケーションをとり、そこから得た考えやインスピレーションをもとにした映像作品などを展示していました。

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「Travel in the Hole」の会場となった村立葛尾中学校の校舎と体育館。
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招聘アーティスト・赤坂有芽さんの作品展示。
土着[vernacular]のための習作
ビデオインスタレーション
2022~
(C)Yume Akasaka
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村立葛尾中学校の校舎では、定期的にアートのワークショップも開催されている。
(ワークショップ事業担当大山さんによる説明)

葛尾村から新しいカルチャーのネットワークを広げる

『葛力創造舎』代表理事の下枝浩徳さんは、アーティスト・イン・レジデンス事業を行い、それを移住定住促進へつなげるビジョンを持っています。下枝さんはこう言います。

「(全村避難を経験し)一度ゼロベースになってしまった葛尾村の『畑』を耕すために、アーティストに来ていただきたいです。葛尾村の新しい地域資源を掘り起こし、魅力を見つけ、発信してもらいたいのです。そして、この村を好きになる人を増やしていきたい。その支援をしていきます」

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ツアー参加者との懇親会であいさつに立つ『葛力創造舎』代表理事の下枝浩徳さん(中央奥)。
また、この事業を運営・担当する「Katsurao Collective」の統括兼ディレクターを務める森健太郎さんは「今後は、アーティストだけでなく、デザイナーやクリエイター、フードコーディネーターなどにも来ていただけるよう、受け入れの層の幅を広げる予定です。そういった方々と村の地場産業や企業との接点もつくっていきます。葛尾村から新しいカルチャーのネットワークが広がっていくことを目指します」と、今後の方向性について教えてくれました。
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「Katsurao Collective」統括兼ディレクターの森健太郎さん。

ゼロからイチを生み出していく。移住者を支援する制度も多数用意

葛尾村では「空き地・空き家バンク」もあり、成田さんや山口さんらがさらなる物件の掘り起こしも進めています。また、県外から村内に移住し、5年以上居住する意思を持つ方向けの住宅取得支援事業や、同じくアーティスト向けの復興移住支援金の制度などもあります。

さらに、お試し移住ができる住宅や賃貸物件としての村営住宅もあります。葛尾村移住・定住支援センターに相談をすれば、制度の詳しい内容説明や、役場の窓口の紹介などをしてもらえます。

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葛尾村の村営住宅を見学。まずは賃貸から移住をスタートすることも可能だ。
村の伝統行事が復活したり、新しいイベントなどが少しずつ、確実に増えてきている葛尾村。

山口さんはツアー参加者に「葛尾村は自分たちの力でゼロからイチを生み出せる、可能性を秘めた場所です。たくさんの人とここで楽しいことをしていきたいです。ぜひ、また来てください!」と呼びかけました。

これから新しい魅力がどんどん掘り起こされ、自分たちで「つくる」ことができる人が集まってくる、そんな未来に向かって走り始めていることを実感したツアーでした。

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▼葛尾村移住・定住支援センターのホームページ「こんにちは かつらお」はこちら。移住に関する情報が満載で、葛尾村の全貌が見えてきます!
https://konnichiwa-katsurao.jp/

▼ソトコトオンライン掲載記事「福島県・葛尾(かつらお)村で暮らす」はこちら。
https://sotokoto-online.jp/local/15068

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