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多様性

写真で露わとなったマイクロプラスチック。

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青や赤、黄、緑など、色とりどりの小さな塊。まるで鉱石のような透明感のある美しい物体に見とれてしまう本作は、岡田将の初写真集『THE MICROPLASTIC BOOK』。その名のとおり、マイクロプラスチックを撮影した作品だ。

町や川などに落ちている砂粒を撮影した前作『無価値の価値』で、若手写真家の登竜門と言われる「写真新世紀」の優秀賞を受賞した岡田は、次の被写体にマイクロプラスチックを選んだ。この小さな物体を求めてさまざまな海を訪れ、波打ち際などで目を凝らし、1~2ミリメートルほどのマイクロプラスチックを採取。顕微鏡で拡大して撮影を行った。被写体の手前から奥まで、ピント位置を変えて約200枚撮影したものを合成して1枚が作られるため、その像は隅から隅までクリアだ。小さすぎて肉眼では見ることができない被写体のディテールが、つぶさに浮かび上がってくる。プラスチックが経年劣化してできた、貝殻の模様のような傷、鉱物の結晶のような形、ミジンコのような海の生物を想起させる有機的な物体など……。

増え続けるマイクロプラスチックが海や生物に与える影響は世界中で大きな問題となっているが、その問題を日々の生活の中で実感することはそう多くない。しかし、岡田が個体を露わにした「何か価値のあるもの」のようにも見えてくるマイクロプラスチックの写真を眺めていると、自然に考えさせられるのだ。これらが、いつかどこかで自分が捨ててしまったペットボトルの破片だとしたら、海の中の魚が、これらを食べてしまっているとしたら、そしてその魚をほかの生物や我々が食べているとしたら――。

この先の未来はどうなるのか? 存在感を増した写真の中のマイクロプラスチックは、静かに問いかけてくる。

『THE MICROPLASTIC BOOK』

 (124229)

岡田 将著、私家版
text by Nahoko Ando

記事は雑誌ソトコト2022年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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