「実践人口」を増やすための合言葉が「やってこ!」である。「やってこ!」が世代を超えたつながりを生み、ローカルをおもしろくする。不安と好奇心半分でタネを蒔いてこ!
こんなスタンスのため、クライアント候補の人たちに会社の性質をわかってもらうまでには、時間と距離の詰め方が必要となる。なので自ら身体を現場に運んで、人間同士のコミュニケーションが欠かせないわけだが、これまで信条的に実践してきた「仕事のタネ蒔き」にこそ、会社がそれなりに成長しているワケがあると思っている。小さな規模で胸を張れる数字ではないものの、5期目の決算を終えて「スーパーホワイトですね!」と、税理士さんから太鼓判をもらったばかりだ。
2022年のカギは、移住4年目「長野県」が握っている
東京のスタッフが定期的に通って、社内コミュニケーションの性質を引き上げたいし、移住希望の知り合いをどんどん巻き込んでいきたい。また、小さなコワーキングスペース的な機能も擁する。閉じたオフィスではなく、人と空気が循環する空間を目指して、コンセプトは『窓/MADO』とした。タネ蒔きとして約500万円の費用は安くない。編集を軸としたハードとソフトの提供は、必ず価値を生むからこそ、いっちょやってみんぞ!
そして2つ目のカギは、「サーキュラーエコノミー」の編集。SDGsとともに脚光を浴びつつあるサーキュラーエコノミーの概念。「暮らし×経済×自然」を前提とした循環型の取り組みは、ボトムアップ的なおもしろさを内包していて性に合う。今後、長野市で運営している店舗『シンカイ』で、全国のサーキュラーエコノミー関連のいい商品をキュレーションしていきたいと思っている。
これまで全国で取材してきた取り組みを含め、長野県の単位でも「元々やってるんだよね」の視点が実に多い。移動の制限が行われていた江戸時代はもちろん、集落単位で目の前の自然でやりくりしていた中山間地域の歴史に触れたらわかる。「やるしかねぇからやっていた」。例えば、佐久鯉で有名な佐久地域。浅間山から流れる川の流域で鯉の養殖をしていて、キレイな水と早瀬のパワーが鍛え上げる。そして田んぼに鯉を放ち、稲穂につく虫を食べさせていたのだとか。これぞサーキュラー! 必要に駆られた現実と工夫を汲み取りつつ、長野県を舞台にサーキュラーエコノミーの概念を咀嚼し、実践の中で学びながら、自分なりに編集していきたい。めちゃめちゃおもしろいから。この蒔いたタネが芽吹くには数年かかるかもしれないが、先にリアル店舗を持っていることの優位性もまた仕込みの延長だったんだなとしみじみ感じている。無理してやっていてよかった。
そのほかにも、長野県内の有名な企業や場所にまつわる商業施設プロジェクトにも関わっている。チームディレクションからコンセプト立案、施設のコピーやネーミング、PRの視点を踏まえた情報発信まで。出版レーベルも立ち上げるし、プロダクト開発の話も進んでいる。いわゆる編集プロダクションの役割を超え、非合理な実践を5年間積み重ねてきたからこそ、「なんだってやる!」の結晶が少しずつ形になっている気がしてならない。2022年は40歳の節目を迎えるが、思考を止めずに動き続けたい。「第二次やってこムーブ」はすでに始まっている。