熊本市内にある『神水公衆浴場』は、自宅の1階を銭湯にしたプロジェクトである。いまどき銭湯を新しく造ること自体珍しいことで、地元の保健所の人曰く、28年ぶりの銭湯の新規登録だったらしい。
きっかけは、2016年の熊本地震である。被災した構造家の黒岩裕樹さん一家が、震災後に風呂に入れず大変な苦労をしたことで、銭湯が実は地域の防災拠点であったことを再発見する。実力派建築家の西村浩さんに相談をし、建て替える自宅の1階を街の人のための銭湯にするという驚くべき提案に至る。2階の住居部分には浴室は設けずに、家族6名も1階の銭湯を使う。住宅なのだが、街の暮らしを支える小さな公共的建築である。
熊本地震は本震クラスの揺れが連続で起きた激烈な災害だったが、この住宅では、構造家の自宅ということもあり、構造システムの工夫がすごい。屋根をCLT構法という最新構法のアーチ屋根とし、木造在来工法を工夫した重ね梁を組み合わせることで、ローコストながら激烈地震でも災害拠点として使える造りになっている。構造美を活かした大きな軒下空間が特徴的で、これは近所にタワーマンションばかりが立ち、路上から人の気配が失われていることへの抵抗であるという。確かに部活帰りの高校生や近所の人の銭湯待ちや、子どもたちの遊び場空間になっていて、軒下が日本の街の表情をつくってきたことを改めて考えさせられる。機会があって、黒岩さんに話を伺うことができた。コロナ禍のステイホームと働き方改革で、夕方以降は番台で店番をしながら構造計算をしているのだという。こんな未来が来るなんてと良い意味で驚いてしまった。
熊本地震は本震クラスの揺れが連続で起きた激烈な災害だったが、この住宅では、構造家の自宅ということもあり、構造システムの工夫がすごい。屋根をCLT構法という最新構法のアーチ屋根とし、木造在来工法を工夫した重ね梁を組み合わせることで、ローコストながら激烈地震でも災害拠点として使える造りになっている。構造美を活かした大きな軒下空間が特徴的で、これは近所にタワーマンションばかりが立ち、路上から人の気配が失われていることへの抵抗であるという。確かに部活帰りの高校生や近所の人の銭湯待ちや、子どもたちの遊び場空間になっていて、軒下が日本の街の表情をつくってきたことを改めて考えさせられる。機会があって、黒岩さんに話を伺うことができた。コロナ禍のステイホームと働き方改革で、夕方以降は番台で店番をしながら構造計算をしているのだという。こんな未来が来るなんてと良い意味で驚いてしまった。
『神水公衆浴場』
住所:熊本県熊本市中央区神水2-2-18
施工年: 2020年
住所:熊本県熊本市中央区神水2-2-18
施工年: 2020年
藤原徹平
ふじわら・てっぺい●建築家。1975年横浜生まれ。2009年より『フジワラテッペイアーキテクツラボ一級建築士事務所』主宰。2010年より『一般社団法人ドリフターズインターナショナル』理事。建築、地域計画、まちづくり、展覧会空間デザイン、芸術祭空間デザインと領域を越境していくプロジェクトを多数手がける。2012年より横浜国立大学大学院Y-GSA准教授。受賞に横浜文化賞 文化・芸術奨励賞など。
ふじわら・てっぺい●建築家。1975年横浜生まれ。2009年より『フジワラテッペイアーキテクツラボ一級建築士事務所』主宰。2010年より『一般社団法人ドリフターズインターナショナル』理事。建築、地域計画、まちづくり、展覧会空間デザイン、芸術祭空間デザインと領域を越境していくプロジェクトを多数手がける。2012年より横浜国立大学大学院Y-GSA准教授。受賞に横浜文化賞 文化・芸術奨励賞など。
©Shigeo Ogawa
記事は雑誌ソトコト2022年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。