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サスティナビリティ

19億円の資金調達をした若き技術者集団の挑戦。多重下請け構造の建設業界を、数学の力で改革する。

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左から:エンジニア 大森 友寛 氏/代表取締役 鴨林広軌 氏 /エンジニア 高橋 律視 氏

建設DXを推進するスタートアップ・株式会社Arentが、11月24日に総額19億円の資金調達を発表しました。大手企業とのジョイントベンチャーを設立するなど、プラント建設・運用における効率化を進めています。今回は、多重下請け構造の業界改革に挑む技術者集団Arentの3名にお話を伺いました。

目次

多重下請け構造の建設業界にどう挑むのか

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ソトコトNEWS まずは、代表取締役の鴨林さんにお聞きします。プラント設計の自動化に取り組もうと思ったのはなぜですか?

鴨林 建設業界はDXがなかなか進まず、抜本的な生産性の向上がされにくい業界と言われています。そもそも業界自体が労働集約型であり、職人の暗黙知によるところが大きく、現場での作業が多いことが理由です。
まだ手をつけられていない業界だからこそ、自分たちが変えたいという思いがあります。

プラントというのは巨大な構築物で、何万本の配管があるんですね。そのプラントを設計する際、これまでは熟練の技に頼るしかなかったんです。
そこで、職人の暗黙知を形式化して、効率的に設計ができるようなツールを、千代田化工建設様とともに開発しました。これが「PlantStream」です。
また、日揮様とともにプラントの保守・運用で使うツールの開発を進めています。
私たちArentが建設業界のDXを進める中で、まず第一に着手しているのが「プラント」。
設計業務や保守運用業務を効率化することで、慢性的な人材不足である建設業界を改善することが建設DXの第一歩と考えています。

ソトコトNEWS なぜArentのようなスタートアップが、業界大手の企業と次々と連携できたのでしょうか?

鴨林 私たちは「下請けとして」ではなく、「企業のコンサルティングから入る」ということを大切にしています。コンサルティングの中で課題を煮詰めて、開発、ビジネスの構築までを一緒に取り組みます。
通常のコンサルティング会社だと、最初の課題抽出とアドバイスに留まり、課題を解決するところまで手を動かしてくれるところは非常に少ないですよね。
例えば千代田化工建設様も、最初は仲介会社を挟んでコンサルティングをしていましたが、事業化のご提案させていただき、現在ではお互い半分ずつ出資して、「株式会社PlantStream」というジョイントベンチャーを立ち上げました。

ソトコトNEWS スタートアップだと、いわゆる下請けに留まってしまうというのは、よく聞く話ですね。コンサルティングの段階での信頼関係構築が肝になっているのでしょうか。

鴨林 私たちはコンサルティングの段階でプラントについてしっかり調査をしてから提案しに行きますので、「ここまで業界のことを理解している開発会社は他に無い」と思っていただけたのが大きいと思いますね。
多くの企業がDXを進める中で、よく「AIで何とかしたい」と言われることが多いですが、実際にはAIが最良の選択ではないことも多いんです。
「この課題はAIの苦手分野だと思うのでこの技術を使った方が良いですよ」と、ちゃんと中身をご説明すると「確かにそうだね」と。

日々新しい技術が進化しサービスが多様化する中で、自社の課題にはどの技術を使うのが一番正しいかを見極めるのは、どの企業にとっても難しいことです。
私たちはベンダーではないので、フラットに見てどの技術を組み合わせれば課題解決にとって最良の選択になるのかを提案できるところが、信頼関係を築けた理由だと思います。
千代田化工建設様との取り組みも2年にわたり、私たちは建設業界の知識を備えたDXの会社へと成長してきました。

ゲーム業界出身エンジニア、起業経験者など多様なバックグランドを持つメンバーが集う

ソトコトNEWS 鴨林さんは元々全く違う業界から、現在Arentで建設業界に関わっているわけですが、業界間のギャップは感じますか?

鴨林 私は元々ゲーム業界にいましたが、ゲームは個人が楽しければそれが全て。非常にシンプルでいて、だからこそ奥深い。
一方、建設業界では多重下請け構造の中で様々な企業や業者が関わり、それぞれの悩みがある。現場に寄り添いながら様々な立場の思いを汲み取り、課題を紐解きながら解決するにはどうしたらよいのだろうと常に考えさせられます。

「どんなやり方で?」「どんな技術で?」と、業界全体の最適解を考えながら課題解決に取り組んでいけるのが、難しさであり面白さでもあると感じています。

ソトコトNEWS エンジニアの高橋さんも、ゲーム業界から入ってこられたんですよね?

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高橋 前々職は家庭用ゲームの会社、前職ではソーシャルゲームの会社でエンジニアをしていました。特に私は数学を使った物理シミュレーションをやっていたんですよね。
3D計算や機械計算に関する知識があり、その経験を生かしたいと思いました。

ArentにはCADの3D計算に卓越したエンジニアがいて、一緒に製品開発ができると知り、興味を持ったことがきっかけです。
ゲームの開発と大きく違うところは、業界の方々から悩みを聞きながらプロトタイプを作り、改善をしながらどんどん製品をブラッシュアップできるというところです。
もちろん厳しいご指摘もありますが、よりよい製品にすることで業界に貢献できる。僕はArentでそれを実現したいと思い入社しました。

今、入社して半年ほどですが、建設業界の方と毎週ミーティングを行っています。業界の知見のある方からのフィードバックによって、自分たちの知識が日々ブラッシュアップされていくのを感じています。
入社したときは、全くと言っていいほど業界の知識が無かったんですけど、だんだんと専門家の方とお話できるような知識が身に付いてきたんですよね。
そして、製品も業界の求めているものに一歩ずつ近づいていっているなという手応えがあって非常に面白いですね。
いつか自分が開発したソフトウェアが業界のスタンダードになり、更には海外にも広げていけたら嬉しいなと考えています。

ソトコトNEWS 自分が関わったプロダクトが業界のスタンダードに。そんな思いを持って開発されているとは頼もしい限りですね。

エンジニアの大森さんは、どういう経緯でArentに参画したんですか?

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大森 私は前職は友人たちと立ち上げた会社の経営をしていました。転職活動時は、大手企業も含めて、何社かお声かけいただいたんですが、Arentに決めた理由は2つあります。

1つ目は、前職での仕事を評価してくれたということ。前職でも上場を目指していたので、上場を目指す会社に協力したいと思っていました。鴨林さんとなら上場が目指せるなと。
2つ目は、きちんと利益が上がるビジネスをしているということ。大企業にフォーカスしてコンサルティングをする事業の方が利益率も高いだろうと考えていたので、Arentのビジネスモデルは自分の考えと合致しました。自分なりにArentについて調べて、他のベンチャー企業とは違うと確信し、最終的にArentに決めました。

鴨林 大森さんは視点が凄く高いんです。学生で起業しているので経験が豊富ですし。何か新しいことをやろうとするときには、まず最初に大森さんに相談しています。
新規事業も率先してプロジェクトを進めてくれていますし、組織作りに関してのアドバイスも的確で。「とりあえず組織を作ると後から問題が出てくるから、ちゃんと考えて組織づくりしないと駄目ですよ」と、一緒に組織づくりをしてくれて本当に助かっています。

2人とも入社してわずか半年ですが、会社の根幹に関わる仕事をしてくれていますし、心強い。大手企業とのジョイントベンチャーで代表のポストにつくなど、若くして経営に関わる機会も多いです。自ら動いていろんな経験を積みたい、そんなメンバーがどんどん増えていってほしいですね。

暗黙知を形式化し、日本のDXを加速させたい

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ソトコトNEWS 建設業界を変えていくには、業界の暗黙知を紐解いていくことが必要だと思うんですが、並大抵のことではないですね。

鴨林 暗黙知って、人の頭の中にあることが多いんです。例えば、熟練の配管設計の方に「配管設計について聞かせてほしい」とお願いすると、「コップに入った水の飲み方って説明できる?そんなの説明できないでしょ。」と言われたこともあります。そこからが勝負ですよね(笑)。「つまり、こういう感じなんじゃないですか?」「こういう時はどうしたら良いんですか?」と具体例を用いながらヒアリングしていったんです。

人間の頭って本当は凄いので、知らぬ間に凄いことをしているわけですよ。その「知らぬ間に」を、「実は裏にこういうロジックがありますよね」と、分かりやすく具体例を用いて説明することで、脳から引き出していく。
熟練の方々とディスカッションを重ねて、その中から素晴らしい知見を取り出していく。この作業を積み重ねることが、暗黙知の形式化に繋がっていくと考えています。

ソトコトNEWS ヒアリングを嫌がられることはないんですか?

大森 手間が増えたり、自分たちの仕事が無くなってしまうんじゃないか、と懸念される方もいらっしゃいますね。DXやIT化においてはどこにでもある話だと思いますが。
ありがたいのは、私たちが関わっている企業は熱量が高い方が多いので、周りを説得してトントン拍子で進んでいくことが多いですね。

ソトコトNEWS 最後に代表の鴨林さん、​将来的にArentはどんな会社になっていきたいでしょうか?

鴨林 日本全体のDXをしっかり後押ししていきたいです。日本におけるDXは、海外と比較して遅れていると言われていますけど、原因は事業会社にエンジニアがいないことと、スタートアップのノウハウを取り入れる構造ができていないことだと考えています。

当社は、「外からでもDXをしっかり進めることができる」という成功例を増やしていきたいですね。
日本の素晴らしい技術や暗黙知を持った大企業と共に、Arentが化学反応を起こし、業界を変えていくこと、これが私たちの使命だと思っています。

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