有限会社日光 星の宿は、栃木県日光市に平成17年6月に開業した老舗旅館です。日光東照宮の目の前に位置し、日光を代表する食材、日光温泉を庭園とともに楽しむことができます。今回は、日光 星の宿 代表取締役 髙田賀奈子氏にSDGsの取り組み、そして変化のなかで見据える未来についてお話を伺いました。
今回はダイキンエアテクノ株式会社石川大地様にもご同席いただき、サービスについて補足いただきました。
非日常空間の提供と省エネ
髙田代表取締役(以下、髙田):日光 星の宿は2005年6月に開業いたしました。日光東照宮に歩いていける距離に位置し、以前は「星の宿 小西」の名で親しまれてきました。そちらを引き継ぐというかたちで2005年6月にリニューアルし、現在に至ります。
筆者:コロナウイルス感染症が拡大している昨今、様々な影響を受けていると拝察いたします。
髙田:そうですね。海外からのお客様がいらっしゃらなくなってしまったことが大きいです。当館は海外からのお客様が17%ほどいらっしゃいましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大以降は全くいらっしゃらなくなりました。最近は特に、旅行日時の直前にご予約される方が非常に多いです。お客様自身も今後の状況を予測することができない日々が続いているので致し方ないことですが、旅館にとっても数ヶ月先の見通しがつかない状態です。
筆者:非日常空間を提供する日光 星の宿さんのような旅館では、なかなか省エネ・節電対策を行う難しさがあると思います。何か意識して行っている省エネ・節電の取り組みはありますか。
髙田代表取締役:電気はこまめに消しています。また、館内の照明は6年ほど前にすべてLEDに変更しました。ただ、正直なところ省エネに対する取り組みが最も後回しになっている部分です。うちは古くからあるため、それゆえに修理しなければならない設備が多くあります。まずは館内を綺麗にする、お客様の満足度をあげる、そうやって目に見えるところから綺麗にしなければならないのでの省エネを考えるのは難しいです。ただ、エアアズアサービスさんに空調を運用していただき、EnergyColoringさんにAIで電力量の診断をしていただいたことが省エネを意識するきっかけとなりました。
空調機の刷新を機に業務改善
髙田:導入を考えたきっかけは2つあります。1つは空調機が古くなってしまったことです。開業当初は空調がなく、リニューアルの際に空調設備を導入しました。しかし、リニューアルから10年近くが経ち故障頻度が増え、冬場は故障のたびに客室に電気ストーブを持っていく等の対応をしていました。また、宇都宮の業者さんに電話をして来ていただいておりましたが、宇都宮から40分ほどかかることもあって急な故障への対応がとても難しかったです。もう1つは、家庭用の空調を使用していたことです。空調をつけていてもなかなかお部屋が温まらず、涼しくならず。こういった状況から空調機の刷新を考え始めたときに、たまたま新聞でダイキンエアテクノさんが出資するエアアズアサービスが目に留まりました。
筆者:空調機の刷新にあたって様々な会社さんのサービスと比較したと思います。エアアズアサービスに決定した決め手は何でしょうか。
髙田:決め手はいくつかあります。まずは、空調を事務所で集中制御をすることが可能であることです。サービス導入以前は、お客様がチェックアウトをするとスタッフが客室をまわって、1つ1つ手作業でついている空調を消しに行っていました。お客様が空調をつけたままお帰りになったのか、消されてお帰りになったのか分からず、全客室を確認する他なかったのです。しかし、サービスの導入時に事務所のなかですべての客室の空調を一括管理できる提案をしてくれました。また「空調の調子が悪くなったら事前に分かるので故障することはないと思います。」という言葉がとても印象に残っています。
石川様:遠隔で常にモニタリングしておりまして、故障の予兆を把握しています。空調の調子が良くないと感じたらサービスマンが来るという仕組みをつくっています。
髙田:こういったサービス内容の土台ともなる信頼関係を築くことができたことも大きいです。半年以上かけて計画し、13年という長期契約に至りました。
筆者:サービスの導入前は電力使用量等に関してどのくらい把握されていたのでしょうか。
髙田:毎月の使用量の明細から旅館全体の電気使用量のみを把握していました。エアアズアサービス導入後は客室空調の電気使用量が把握でき、全体の10%程度と少ないことが判明し、それ以外のどこで電気が多く使われているかが知りたくなりました。
そこで、今年になってEnergyColoringを導入したところ、ほとんどリアルタイムに電気の使用量を把握することができるようになり、AIの分析で電気の使用場所、使用されているタイミングまでもが簡単に分かるようになりました。これまでは30分間に使用した電力の平均値であるデマンドのみが指標だったので、電力量に対する見方も変わりました。
髙田:実は2月末にダイキンエアテクノさんに社員への勉強会を開いていただきました。スタッフ全員が参加して、導入したサービスや設備だけでなく、節電や省エネについての勉強会です。例えば、料亭の換気装置は季節毎に換気モードを変更すると省エネに繋がること、日光という土地柄やエアコンの特性から冷房よりも暖房のエネルギー消費が多くなっており、重点的に暖房の省エネ対策をすると効果的であることを教えていただきました。このように働きかけないとなかなか自分ごととして捉えることが難しいですが、社員の意識も変化しつつあります。
石川様:電力の内訳もたくさんの電力量計を使用すれば測れますが、やはりコストが高くなるので、EnergyColoring1台で見える化を図りました。まだ更新していない共用部の空調、浴室ポンプなどの内訳がわかりやすい円グラフとして表示され、次の対策の優先順位が付けられるのではないかと思っています。
髙田:冷蔵庫の後ろ側に消費電力とかって書いてあるけれど、これが一体1ヶ月でいくら使っているのかっていうのはわからないです。調べればわかるのでしょうけど、一台一台やっている余裕もありません。どの設備の電気使用量が多いのかを大雑把に把握し、その設備が古いのであれば、次はそこの対策をしようと予定が立てられます。 壊れる前に見積もりをしてもらうとか、お客様に迷惑がかからないように更新計画を立てたいと思っています。
新たな取り組みと地域の繋がり
髙田:afterコロナに向けて、少しずつ館内設備を刷新しております。また新しい技術、サービスを取り入れ、いらっしゃる皆様により快適な滞在を提供できるように準備しております。例えば、お風呂の混雑状況を可視化できるようなサービスも導入しました。各客室のQRコードをスマートフォン等で読み取っていただくとお風呂がどのくらい混雑しているのか、お客様ご自身でご確認いただけます。
筆者:3密を避けることを意識するようになった今にぴったりなサービスですね。
髙田:そうですね。また、以前屋上にあった客室用の21台の室外機を建物裏に5台に圧縮して設置するようになりました。屋上に出ると星が綺麗なので、空いたスペースにデッキを作り、いらっしゃる方が星を楽しめるようになればという思いも抱いております。ただ、まずは何よりも新型コロナウイルス感染症の収束、そしてその後お客様が戻ってきてくださることを楽しみにしております。
髙田:日光にいらっしゃる方のなかで、久しぶりに日光に来ると新たな発見があり衝撃を受けたとおっしゃる方が多いです。一方で、一度行ったことがあるからと2度、3度と訪れる方が少ないという印象もあります。だからこそ集客をはからなくても観光客は来てくれると構えているのではなく、少しずつ変化をしていかなければならないと思います。地元に目を向けたり、意識的に名前を売っていったりすることも大切だと思います。
日光 星の宿でも新たな取り組みを取り入れていますが、そういった取り組みのなかでネットワークを広げていきたいと考えています。ダイキンエアテクノさん、EnergyColoringさん、エアアズアサービスさんとのつながりも1つの輪です。料亭では地元の食材にこだわり、日光市の農家さんとの地元の繋がりがあります。そういった輪を日光 星の宿から広げていければと思います。
エアアズアサービス
https://airasaservice.com/
EnergyColoring
https://www.energy-coloring.com/
有限会社 日光 星の宿 代表取締役
1983年日本女子大学卒業。三菱商事株式会社に勤務後、主婦業を経て2005年6月に日光 星の宿 代表取締役に就任。