鹿児島本土と沖縄県の間にある奄美群島。そのなかのひとつに徳之島がある。希少な動植物、日本有数の珊瑚礁がある自然豊かな島の人たちは、みな長生きで子だくさん。その秘密をひもときます。
さまざまな希少な生物こそが、徳之島のエネルギーの源。
2021年5月10日、ユネスコによる「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産登録の勧告が発表された。そんな今話題の島々の一つ、徳之島と聞くと、あなたは何を想像するだろうか?
戦後、沖縄が返還される前まで、新婚旅行の行き先に徳之島の名前がよく挙がっていた。人気の理由は日本の中でも有数のきれいな海があるということ。そして、幸か不幸かその後、沖縄が一大リゾート地になったため、徳之島にはきれいな海がそのまま残っている。さらに島の山や森の中には、ここにしか生息しない希少生物が多くいる。
その昔、ユーラシア大陸と地続きであった徳之島には、大陸と共通する生物が生息していた。しかし海面が上昇するなどの理由で徳之島を含む琉球弧の島々が大陸から分断。今では大陸では絶滅したが、島の中でだけそのままの姿で生き残っているものや、島の中で独自に進化していき、島の固有種となったものもいる。いずれも国の希少生物であり、種類はなんと31種類以上にも及ぶ。種類の多さに“東洋のガラパゴス島”と言っても過言ではない。
そんな自然豊かな徳之島だが、実は一番有名なのが“長寿の島”であるということだ。1995年までギネスブック公認の人類の世界最長寿、2012年までは男性としての世界最長寿として認定され、120歳まで生きたと言われている泉重千代さんに、チャーミングなキャラクターでマスコミに多く登場し、116歳(諸説あり)まで生きたと言われ“かまと婆さん”の名で知られていた本郷かまとさん。この二人とも徳之島出身なのである。
長寿だけではなく、出生率の高さも日本で有数の土地だ。厚生労働省の「市区町村別にみた合計特殊出生率の上位・下位50位」によると、徳之島には3つの町しかないのにもかかわらず、出生率トップ10位以内にすべてランクインしているのだ。
エネルギッシュな徳之島の人々。その秘密は島内の特産物にあるのではないだろうか。代表的な物は、タンカン、シークニン、シマアザミ、そしてジャガイモの4つ。タンカンはポンカンとネーブルオレンジをかけ合わせたミカンに近い柑橘系の果実。シークニンはシークワーサーの原種と言われる柑橘系の果実で、徳之島にしか自生していない。シマアザミは奄美群島に自生する伝統野菜。多量のポリフェノール、豊富なカルシウムなどが含まれ、スーパーフードとして注目されている。
ジャガイモはというと、北海道を想像される方も多いと思うが、実は徳之島がある鹿児島県は、日本第3位の収穫量を誇る。そして徳之島では鹿児島県で生産されるジャガイモの約3割もが収穫されている、一大ジャガイモ生産地なのである。そんな徳之島のジャガイモの特徴は、身が詰まっているということ。肉じゃがなどの煮物にしても、煮崩れしにくいのだ。
生命力があふれる自然と共存する徳之島。土地の豊かさこそが、毎年9割以上の新成人が「徳之島に生まれたことを誇りに思う」と回答し続けている秘密ではないだろうか。
南で育ったジャガイモはどこよりも甘い!
「徳之島のジャガイモは、身が大きくて中身がぎっしり詰まっているから、煮物に最高だよ」と生産者の『徳之島元気倶楽部』の河島洋仁さん。サンゴ礁と火山層という徳之島独特の地層は、ミネラルが豊富なので、その土で育つジャガイモは栄養満点。
ビタミンCたっぷりで子どもたちも大好きなタンカン。
タンカンを育てて20年になる生産者の『満田農園』の満田秀博さん。「うちのタンカンは、糖度が高くて島の人たちからも人気があるんです。だから、基本は島内でなくなってしまいます。食べたい場合はぜひ、徳之島まで来てください」。
身体にいいフラボノイドがミカンの60倍のシークニン。
抗がん性物質の抑制作用・脂質代謝改善などが期待されるフラボノイド。その成分がミカンの60倍、シークワーサーの20倍含まれているシークニン。「健康な栄養素たっぷりで、みんなこれ飲んでいるから長生きなんです(笑)」と生産者の大橋カツミさん。
実は栄養が豊富な、徳之島に自生している野菜・シマアザミ。
徳之島に自生している野菜・シマアザミ。ポリフェノール、α-リノレン酸(ω3脂肪酸)、カルシウム、マグネシウム、食物繊維が豊富。「そのままだと硬いから、サプリとしての人気が高いです」と生産者の『LCアイランズ』の藤井裕正さん。