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サスティナビリティ

都市内有機農家「えんちゃん農場」に学ぶ、援農者が集まるコミュニティづくりのコツとは

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週末にさまざまな人が畑を訪れ、みんなで農作業をする。そんな珍しい取り組みをしているのが、横浜市にある「えんちゃん農場」。援農者が集まるコミュニティづくりのコツや、後世にバトンを繋ぐためのカギとなるお話について伺いました。

目次

都市内有機農家「えんちゃん農場」とは?

パートナーズデイ
農体験の様子(写真提供:えんちゃん農場)

横浜市旭区にある、無化学肥料・無農薬栽培の農家、えんちゃん農場。

前編では、えんちゃん農場の特徴についてご紹介しました。

▼前編の記事はこちら!
都市内有機農家「えんちゃん農場」が新規就農するまでの道のりと、人手と笑顔を増やす農業体験(前編)

参加メンバー
左から、パートナーズ運営メンバーながのさん、農園主長岡さんの奥様、農園主長岡さん、パートナーズリーダー伊藤さん、七草店主南雲さん(筆者撮影)

後編では、援農者が集まるコミュニティづくりのコツや、えんちゃん農場と飲食店・七草の関係性について伺っていきたいと思います!

今回も、農園主である長岡さんの他に、えんちゃん農場の野菜を扱う飲食店、七草の店主・南雲さんと、えんちゃん農場パートナーズ運営メンバーの伊藤さん・ながのさんにも参加していただきました。

こちらがえんちゃん農場の農園主、長岡親一郎さんです。

長岡さんプロフィール
長岡親一郎(ながおか・しんいちろう)さん(筆者撮影)

《長岡親一郎(ながおか・しんいちろう)さんプロフィール》

えんちゃん農場農園主。神奈川県横浜市出身。1970年生まれ。大学卒業後、広告の制作会社に15年間勤めるが、脱サラし2012年に生まれ故郷である横浜市で新規就農。無化学肥料・無農薬の野菜を栽培(年間約60~80種類)。

援農者が集まるコミュニティ「えんちゃん農場パートナーズ」

畑作業の様子
定期イベントの様子(写真提供:えんちゃん農場)

えんちゃん農場では、えんちゃん農場パートナーズというコミュニティを通じて活動を行っています。

《えんちゃん農場パートナーズについて》

無化学肥料・無農薬栽培に取り組むえんちゃん農場と、生活に農を取り入れたい/農に関わりたいという人たち=パートナーズが、農起点のさまざまな活動を広げるコミュニティ。学生から主婦、アーティストやサラリーマンといった多種多様なメンバーが集まり活動中。

現在コミュニティを運営する運営メンバー(アクティブメンバー)が約20人。パートナーズ(一度でも参加したことのある人)は約150人(2021年2月現在)。運営メンバーと参加者の垣根を作らないために、運営メンバーのことを“アクティブメンバー”と呼んでいる。

月に2回、えんちゃん農場パートナーズdayという農業体験イベントも開催

えんちゃん農場パートナーズができた経緯やイベントの様子は、前編をご覧ください!

援農者が集まるコミュニティづくりのコツ

えんちゃん農場パートナーズが目指しているのは、「持続可能なえんちゃん農場」。それは、今の畑を守り続けることだけではなく、えんちゃん農場の屋号が続いてほしいという意味でもなく、想いが続いていってほしいという意味なのだそう。想いをつないでいくために、長岡さんとパートナーズのメンバーは、居心地の良さを大事にしていると言います。

えんちゃん農場の援農者が集まるコミュニティづくりのコツは、以下の3つ。どのように居心地の良いコミュニティにしているのか、一つずつ伺ってみました。

  1. どんな人でも受け入れる
  2. コミュニティ内に考えの偏りを作らない
  3. コミュニティに奥行きをつくる

どんな人も受け入れ、雰囲気づくりを大事にする

移動中
畑までみんなで移動中(写真提供:えんちゃん農場)

パートナーズリーダー伊藤さん(以下伊藤) シンプルなことですが、集まってきた人を否定しないとか、そういう居心地の良さがここに来る一番の理由にしたいと思っています。参加者どうしの会話とか、楽しい空気感を大事にしているんです。有機農業について知らない・興味のない人にも来てもらって、畑作業を通してその良さを体感してもらえたらいいなと思います。

長岡さん(以下長岡) 人が人を呼んで様々な年代の人が集まってくれて、いろんな話ができる、いろんな人がいる、だからつい自分の事も相談してしまう、みたいな雰囲気が自然と生まれているんだと思います。

シンプルだけど難しい、どんな人でも受け入れること。それを大事にしているからこそ、居心地の良いコミュニティになるのだと感じました。

コミュニティ内に考えの偏りを作らない

メンバー
畑には多種多様な人たちが集う(写真提供:えんちゃん農場)

高校生のパートナーズアクティブメンバーながのさんは、コミュニティとして考えの偏りがないことが居心地の良さにつながっていると言います。

ながのさん 高校生はコミュニティに参加する機会が少ないから、コミュニティ内の考え方に偏りがあると、抵抗感が生まれてしまう。でもここはいろんな職業の方やいろんな考え方を持っている人がいるから次も行きやすい、っていうのはあると思います。視野が最初から広がっている感じが、居心地の良さにつながっているのかも。

伊藤 「こういうのを解決しよう!」って気を張って無理していると、長く続かないと思うんです。持続可能なコミュニティにするために、考えの偏りをつくらないことは大事にしていますね。

コミュニティに奥行きをつくる

虫標本
虫に詳しいメンバーが、子ども向けのワークショップを開催(写真提供:えんちゃん農場)

伊藤 集まった後に知り合った人たち同士が、普段やりたいけどやれていないことを形にしてみたりとか、集まった人たちで別の活動が生まれたりとか、“畑から派生した何か”がないと奥行きがないなと思っています。これから何年も付き合う仲間になるには、多分畑だけじゃなくて、そこから生まれた何かがあったほうが持続可能だろうなって。

どんな人も受け入れることで居心地の良さが生まれ、居心地の良さがあるからこそ、そこからメンバーの自主的で自由な活動が生まれていく。そうやって想いの循環がつくられていることが伝わってきます。


えんちゃん農場とともに歩んできた飲食店・七草との関係

ともに歩む、えんちゃん農場と飲食店「七草」の関係

南雲さんと長岡さん
農園主・長岡さん(左)と七草店主・南雲さん(右)(筆者撮影)

えんちゃん農場の大事なつながりの一つに、えんちゃん農場の野菜を扱う飲食店「七草」の存在があります。お互い同じ時期に独立を迎え、ここまでともに歩んできたえんちゃん農場と七草。その稀有なつながりについて、七草の店主である、南雲信希さんにもお話を伺いました。

えんちゃん農場と七草の出会い

《南雲信希(なぐも・のぶき)さんプロフィール》

横浜市石川町にある飲食店「七草」店主。1980年生まれ。好きなもの:古道具、うつわ、自然。好きな野菜:「1~2月はいろいろなだいこんや人参、かぶ、ほうれん草などがおすすめ」とのこと。

えんちゃんサラダ
七草では、えんちゃん農場の旬の野菜を使ったサラダなどが味わえる(筆者撮影)

筆者 えんちゃん農場とのつながりはいつからだったんですか?

南雲さん(以下南雲) 私はその時は別の店で料理の仕事をしていたんですが、東日本大震災の時あたりから自分の作ってる料理や、使っている食材に疑問を感じることがあって。自分で初めて間借りでお店をやることになって、農家さんを探していた時にえんちゃん農場に出会いました。それでお野菜を使わせていただくことになったのが始まりですね。自分で看板を持ってお店をやり始めたばかりの時に、ちょうど長岡さんも農場を始められてまだ2年目で。お互いにスタートの時期が重なったこともあって、今までずっと一緒にやってこられたんだと思います。

店内
七草の店内の様子(写真提供:七草)

伊藤 七草さんが素敵なお店で、えんちゃんの野菜の美味しさもしっかり伝えられているので、七草さんの存在は大きいと思っています。

長岡 多分うちのメンバーは、えんちゃん農場と七草にギャップを感じていないと思います。ひとつながりで捉えられているんです。ここで野菜を育てて収穫をして、その野菜を美味しく食べられる七草があって。畑も七草も気持ちよく過ごせる空間なんだと思います。

七草では、えんちゃん農場の畑で採れた、新鮮な季節の野菜をいただくことができます。素材の味を活かした見た目も美しい料理は、どれも絶品です。

七草ホームページ

えんちゃん農場の有機野菜の美味しさが土台

長岡さん自身も、七草の南雲さんとお付き合をする中で、勉強し、話し合いながら改良を続けてきたのだそう。そしてその野菜の美味しさが、たくさんの人たちが畑に集まる理由の土台になっています。

えんちゃん農場の野菜の魅力

野菜
長岡さんが七草に直接届ける、季節の野菜(写真提供:七草)

筆者 えんちゃん農場の野菜と他の野菜の違いはどこにありますか?

南雲 それまでの勤め先では、スーパーに並ぶものと同じような野菜を使っていたんですが、自分のお店をやる時に初めて有機野菜をえんちゃん農場で食べて、感動しました。同じナスでもこんなに違うんだなって。長岡さんはたくさんの種類の野菜を作ってくださるので、これも美味しい、こんなのもあるんだって知れて楽しいですし、今でもすごく勉強になっていますね。

伊藤 僕らメンバーも全員、えんちゃんの野菜が美味しいと思っているのは大事なことですね。

芽キャベツ
生で食べても美味しい芽キャベツ(筆者撮影)

筆者 どういうところに美味しさを感じているのでしょうか。

伊藤 やっぱり香りですかね。

南雲 あと味の濃さも。

野菜
形が個性的なのは、自然の証(写真提供:えんちゃん農場)

伊藤 形が個性的なのも、美味しいですよね。あとは、生で食べられる野菜を得意としているので、オクラとか普段生ではあまり食べないような野菜を生で食べられるのも魅力の一つです。

多種多様な人が集まり、野菜を扱う飲食店との密なつながりができるのも、長岡さんのつくる有機野菜の美味しさがあってこそなんですね。

ストーリーを食べる

畑作業
人の顔を思い浮かべながら食べる野菜は、どんな味なのでしょうか(写真提供:えんちゃん農場)

パートナーズリーダーの伊藤さんは、野菜の美味しさは素材の味だけではなく、想いにも関わっていると言います。

伊藤 味以外にも、自分がどんな人か知っている人が作っているのって、味に影響すると思っていて。味には関係ないでしょ、と思われるかもしれないけど、僕にとっては大きいこと。自分が大好きな人が作ってると想いながら食べるとか、その安心感の中で食べるとか。ちょっとでも自分たちも土に触って関わっていることで、より美味しく感じられますね。

長岡 ストーリーを食べるってあると思うんですよ。舌や鼻だけじゃなく、情報や想いで食べているところもあると思っています。

人とのつながりで紡ぐ、えんちゃん農場のこれから

かぶ
えんちゃん農場の野菜を味わえるイベントも企画中(筆者撮影)

えんちゃん農場では今後、野菜販売だけでなく、野菜を使った料理を提供するイベントなども考えているのだそう。

長岡 やりたいことや想いがあるので、それらの実現に向けてみんなで話し合っています。いろんな人が集まって農とじかに向き合う団体はあまりないかもしれないので、これからもどんどんメンバーたちが自律的に活動して、カスタマイズしていってほしいですね。若い人がやりたいことに突き進むのを見守るのも年上の仕事だと思うので、意思があれば伝えてもらって、その受け皿になりたいと思っています。

メンバーの活動を見守ることに対して、「それが楽しいんです」と笑顔で話す長岡さんの姿が印象的でした。

 

生活に農を取り入れたい人と、みんなで農の選択肢を豊かにしたい人がいる。

みなさんのお話を聞く前は、「お互いにメリットのある関係がいいな」と思っていました。でも、実際にお話を聞くと、ただメリットがあるだけの関係ではない」と気づかされたのです。

それは、お互いにとってのメリットを超えた、人との温かなつながり”があるということ。

どんな人でも畑に受け入れ、若い世代の活動を見守る長岡さんと、長岡さんの人柄と野菜の美味しさに惹かれるパートナーズの関係性があるからこそ、温もりを感じられる畑になっているんだなと感じました。

居心地の良さを大事にするえんちゃん農場の温かなコミュニティは、きっとこれからも、その想いとともに続いていくでしょう。

 

えんちゃん農場の活動について気になる方は、ぜひホームページやSNSをチェックしてみてくださいね。

えんちゃん農場ホームページ

えんちゃん農場Facebook

えんちゃん農場Instagram

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