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関係人口

特集 | 関係人口入門 2023

NPO法人『越後妻有里山協働機構』スタッフ・佐藤あゆさんが選ぶ「関係人口を理解する本5冊」

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作家や地域の方々とともに、「大地の芸術祭」を支えるサポーター「こへび隊」。彼らの活動をアシストする『越後妻有里山協働機構』の佐藤あゆさんに、芸術祭のサポーターを受け入れる際の心構えをつくる本を紹介してもらいました。

*今回の選書人は、それぞれの分野で関係人口に向き合い、関係人口を理解するうえで大切な活動をされている11名の方々です。これから関係人口を受け入れるみなさんや、今まさに地域と関わり始めた人がよりよいアクションができるように、おすすめの本を選んでいただきました。

選者 category:アート

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美術は地域をひらく─大地の芸術祭10の思想/北川フラム著、現代企画室刊
世界に類例のない、壮大な地域づくりプロジェクト「大地の芸術祭」の核心にある、協働の実践と全貌がまとめられた本。地域と人々が、芸術祭とどう関わるのかをしっかり理解し、説明するための教科書的な一冊です。

サードプレイス─コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」/レイ・オルデンバーグ著、忠平美幸訳、みすず書房刊
情報・意見交換の場、地域活動の拠点として機能する「サードプレイス」の概念を、社会学の知見から論じています。芸術祭自体が、「サードプレイス」になる可能性があるととらえて、環境づくりの参考としています。

2000年に新潟県南部の中山間地域を舞台に始まった「大地の芸術祭」は、3年に1度開催され、23年続いています。この芸術祭を、運営や作家とともに支えているのが、作品制作や清掃のお手伝い、作品や建物のメンテナンス、来場者の案内、ツアーガイド、草刈り、雪かき、農作業、祭礼への参加など、多岐にわたる活動を担うボランティアサポーター「こへび隊」です。

「こへび隊」に参加する方々は小学1年生から80歳代まで、地元だけでなく、大都市圏や海外からの参加もあります。人によって1日だけの参加もあれば、短期的に住み込むなどライフスタイルに合わせて関わる時間もさまざま。会期ごとに新規の参加者が加わったり、中心的に動いてくださる方もライフステージの変化に伴い、2、3年で入れ替わる流動性も特徴です。

このように「こへび隊」への参加者が新旧入れ替わる中で、変わらず伝えていかなければいけないことは何か。それを考えさせるのが、「大地の芸術祭」の総合ディレクター・北川フラムさんが、アートによる地域づくりとなる芸術祭がいかに構想され、実施してきたのかを書いた『美術は地域をひらく』です。開催年によって新作も設置されますが、開催当初から地域に残り守られている恒久作品も200点以上あります。それは、芸術祭のコアやコンセプトが23年間変わらないからです。芸術祭が長く続く中で、何が変わり、変わらないのか、そして主催者が何を考え、なぜこの地で芸術祭を実施しているのか、そういったことを掘り下げて知ることができます。

国内外から大勢の人が「こへび隊」として、「大地の芸術祭」に携わっています。「こへび隊」をサポートする『越後妻有里山協働機構』のスタッフは、「こへび隊」のみなさんが活動しやすい環境をつくる必要があります。そのうえで参考になるのが、書籍『サードプレイス』です。第一の家、第二の職場、そして見知らぬ者同士が気楽に混交する第三の場所が「サードプレイス」で、この「サードプレイス」では、居心地のよい新しいコミュニティが形成されます。「こへび隊」には、バックグラウンドも価値観もさまざまな人が集まっています。彼らがどこに住んでいて、どんな職業なのかにとらわれることなく、彼らが一人の人間として活動しやすい環境もコミュニティの一つだと考え、それを設定して整えるのも、私たちの役割だと考えています。

集落の教え100
原 広司著、彰国社刊
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建築家の原広司さんが世界中の集落を訪ね、生活や文化から教わったことを写真と文章で紹介しています。地域で大切にされ、受け継がれてきたことを知っておくと、地域について自分の言葉で説明することができます。
うしろめたさの人類学
松村圭一郎著、ミシマ社刊
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社会や人間関係の中の違和感や窮屈さに向き合う手がかりを、「構築人類学」という新たな学問手法で追究。毎回芸術祭に携わる人が変化する中、その時々で関わりやすい仕組みを考えるためのヒントを与えてくれる本です。
わかりあえないことから
─コミュニケーション能力とは何か

平田オリザ著、講談社刊
 (176352)

「こへび隊」の参加者は、価値観も背景もさまざまです。大前提として、多様な意見を取り入れながら共通の想いを実現することを大切にしています。この本は演劇の話を交ぜながら、円滑なコミュニケーションの取り方を学ばせてくれます。
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さとう・あゆ●新潟県新潟市出身、京都芸術大学大学院卒業。会社員勤務を経て、「大地の芸術祭」を機に地域おこし協力隊隊員として新潟県十日町市に移住。現在はサポーターの事務局やツアーを中心に「大地の芸術祭」の運営に関わる。
photographs by Jiro Matsushita text by Fumi Itose
記事は雑誌ソトコト2023年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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