【海苔の日】「江戸前海苔」として知られる千葉県の海苔養殖にせまる

【海苔の日】「江戸前海苔」として知られる千葉県の海苔養殖にせまる

2022.02.06

千葉県の東京湾沿岸で養殖されている海苔は、香りがよく色も味も濃いのが特徴で「江戸前海苔」として親しまれ続けています。富津市で海苔の養殖から乾燥までを家族で行っている「松金(まつきん)」の松下久美さんに、海苔ができるまでの過程についてお話を伺いました。

千葉県は海苔の生産量が全国1位だった!?

海苔の産地として、千葉県を思い浮かべる人はいるでしょうか? 近年の海苔生産量ランキングベスト3を調べても千葉県は出てきませんが、千葉県が全国1位だったこともあったようです。

江戸前を200年間守り続ける
……海苔の生産額は昭和初期まで東京都が全国1位でしたが、昭和15年には千葉県が東京を抜いて1位となりました。その後、昭和30年代後半には、東京の海苔養殖が消滅し、現在では江戸前海苔の97%を千葉県の約200人の海苔漁師が守り伝承しています。

富津市のホームページによると、江戸前海苔を作り続ける千葉県のなかでも富津市は海苔生産の8割を占めているのだとか。
参考:富津市のホームページ
https://www.city.futtsu.lg.jp/0000003680.html

今回お話を伺った松下さんは、潜水士だった義父が海苔師になり、夫である2代目の真也さんや義母とともに現在も海苔師として江戸前海苔を作り続けています。

海苔の養殖工程

網に海苔の種を付ける
網に海苔の種を付ける種付け作業 写真提供:松下久美

江戸前海苔の収穫時期は11月~4月ですが、海苔の種付け作業は9月後半に始まります。牡蠣殻のなかで育った海苔の種を水槽に入れ、そこに網を回転させて種を付着させます。松金さんでは、約1200枚分の網に4日間で種付けを終了。

江戸前海苔の養殖作業
浮きの付いた筏を養殖場に入れる作業 写真提供:松下久美

10月に入ると、筏(いかだ)入れ、網張り、網出し、網を縛り、干出(かんしゅつ)と作業は続きます。

江戸前海苔の養殖作業
船上から網の縄を筏に縛る 写真提供:松下久美
干出の様子
干出の様子 写真提供:松下久美

松下さん「干出作業が始まると、ここから本冷凍まではノンストップで網のお世話が始まります。海苔師的には網地に海苔が見えてくるワクワク期間プラス全く休めないし気が抜けない期間でもあります。海中にある網は、珪藻やドタなどで汚れてしまうんです。その汚れを落とし病害などを防ぐために行うのが干出作業。雨でない限り連日行います」

干出を始めて2週間ほどで海苔がしっかり見えてきます。秋に収穫する分の網はそのまま育苗し、それ以外の網は陸に回収して網専用の脱水機で脱水してから手作業で広げて水分が飛ぶまで干します。その後網を袋に入れて冷凍庫へ。

松下さん「海苔が見えるくらい生えてる網を本格的に冷凍保存する作業で、漁期中の全てを賄う網の確保で、非常に大切な作業になります。冷凍作業が終わると、干出に使っていた筏の撤去が始まります。撤去後、今度はアバ綱と呼ばれる網を海上施設に縛りつけて、その綱に海に残した網を張ります。網を張ったら、食害対策に網の下に防御ネットをさらに張ります。ここまでやると、やっと海苔を採る準備が終了で、あとは健康に育つようにお世話しつつ、伸びるのを待つのみです」

刈り取りと乾燥。入札にかけられて商品化

真也さんが、「もぐり船」と呼ばれる刈り取り専用の船で刈り取った海苔は、松金さんの乾燥工場へ運びます。乾燥工場では松下さんが付きっきりで機械を操作し、2時間半で7800枚の海苔を乾燥させます。

江戸前海苔の乾燥作業

その日の風や天候によって機械の温度を変更。最初に網に入った新芽とそれ以外でも乾かし方が異なり、カットの仕方も異なるので機械の刃の大きさを調整していると松下さんは言います。採れた海苔の状態によっても調整が必要なので、松下さんのノートには海苔の状態や温度を何度に設定したかなどが細かく記録されていました。

おいしい海苔の見分け方と保存方法

スーパーでも安価でおいしい海苔を購入することができますが、こだわりのおいしい海苔を入手したいなら「海苔屋さんで買うのをお勧めします」と松下さん。色が濃くて、つやのあるものがお勧めなだとか。

海苔の比較
左:松金さんの乾海苔 中:松金さんの乾青混ぜ海苔 右:スーパーで購入した焼き海苔

保存は空気に触れない、日に当てない、湿気が大敵なので、松下さんは遮光性のアルミ製の保存袋に乾燥剤と一緒に入れて保存しているそうです。

おにぎりだけでなく、ちぎった海苔をお味噌汁に入れたり、サラダに入れたり、卵焼きに入れたりと、ふだんの料理に足すだけでいつもと違った味を楽しめるので、千葉の江戸前海苔をぜひご賞味ください。

写真:松下久美、鍋田ゆかり
文:鍋田ゆかり
取材協力:松下久美(松金)