小さな畑からそっと顔を出す、土から生まれ、土に還る食べ物。飽食のなかにあって消費されず生ゴミになっていく食べ物。わたしたちは食べることが大好きなのに、どうしてもう少し食べるという行為に、繊細に、意識的になれないのだろう。“女性が元気になれる食堂”をテーマにヘルシーな餃子や中華料理を提供する「按田餃子」を東京都内に2店舗展開する按田優子さんの著書であるこの本には、わたしたちが本来立ち返るべき、食べることの喜び、収穫された食物を味わいきることの愛おしさに満ちあふれている。食べ物を食べきる、という当たり前のこと、余った食材の保存方法、路地に咲く野草を食べるという選択を含め、なるべく食べ物を買わない食生活のあり方。レシピ本の体裁を借りながら、ここに書かれていることはひとつの生活の思想であり、生きるための叡智だ。清貧のなかにある尊い喜び、そのなかにわたしたちの未来を見た。これはそんなことを感じる一冊だ。
『食べつなぐレシピ』
著者: 按田優子 出版社:家の光協会