【ソトコト×日本ワーケーション協会連載】ソトコトと日本ワーケーション協会がコラボして、各分野、各地域で活躍するワーケーション推進者をゲストに迎えて、毎回対談。ワーケーションにおける現在地や未来の展望を語ります。
前回の第3回目(中編)に続いて、今回は第3回目の後編で、ゲストは、「ワーケーション社労士」こと岩田佑介さん。前回は、企業がワーケションを実施する意義と効能について。今回は岩田さん本人のワーケーションにフォーカス。月に2〜3回ワーケーションしないと落ち着かない身体になった岩田さんに、ワーケーションにハマっている理由をインタビュー。(後編)
ワーケーション=遊びに行く…からの発想の変化
ソトコト 前回までは社労士の視点で、企業がワーケーションを導入する価値について、お話を聞いてきました。今回は岩田さん自身のワーケーションについてお聞きしていきたいと思います。岩田さん自身もワーケーションにハマっていて、月に2〜3回ワーケーションをしているそうですね?
岩田 私自身が、ここまでワーケーションにハマるとは思っていませんでした(笑)。今、いろいろなところでセミナー等を行って人前に出ていますが、元々人見知りでした。人前で話すのが苦手で、人と話すのがとても苦痛でした。だから、自治体等が企画しているような2〜3泊のワーケーションツアーに参加するなんて、絶対に考えられませんでした。
ソトコト なんと、意外です!
岩田 ですよね(笑)。性善説で人を見るようになれたこともワーケーションにハマる大きな要因で、個人的にもうれしい変化です。会社員として人事部で働いていた時は、管理部門ということもあり、性悪説で物事を見てしまう癖がありました。トラブルがある前提で、事前に対策を考えなければいけません。例えば、ワーケーションを導入したら、働く前に遊びに走るでしょう…サボったらどうする!?という発想でした。それが、私自らがワーケーションをするようになって、日本の各地域でがんばっている地元の人と話す機会も増えて、職業に対する熱い思いを聞いて、いろいろな感動と発見がありました。地域の人の善に触れて、性善説で人と接するようになりました。人間として大切なことを取り戻せたんです!

沖縄で体験した塩作りの工房にて。
職人さんの話は奥が深く面白い。
知識や言葉だけでなく、身体全体で学ぶ…それがワーケーション
ソトコト 地域の人との新しい出会いは刺激になりますね! 他にワーケーションでどんなところに面白さを感じますか?
岩田 この前、沖縄でワーケーションした時に、塩作りを体験したのですが、面白かったのは、水分を蒸発させる時の混ぜ方で味が変わるということ。早くかき混ぜると塩の純度が落ちて辛くなってしまうのですが、ゆっくりかき混ぜるとミネラルが浸透して、まろやかな味になるんです。他の参加者と味を比べてみたら本当に味が全然違っていて、とても盛り上がりました。日本のいろんな場所で新しい体験や新しい発見ができることも、ワーケーションする面白さです。

ゆっくりかき混ぜると、味がまろやかになる。
ソトコト 同じ材料で同じ道具を使っているのに、味が全く違う…何か仕事や働き方でも共通する部分がありそうな…。
岩田 そうなんですよ。この現象は企業の組織論にも通じるところがあると思いました。ビジネスの世界では「企業の組織作りには時間が大切」と言われています。頭では理解した気になっていましたが、塩作りを通じて「ゆっくり時間をかけることが大事なんだ」と体感をすると、より理解が深まっていきます。以前、他の地域にワーケーションに行って、木を切る体験をした時にも、同じような学びがありました。早く切ると断面がザラザラになるけれど、ゆっくり切ると滑らかな断面になる。その断面を触った感覚が残っているから、深い理解に繋がっていく。
ソトコト なるほど。深イイ話ですね!
岩田 ただ本を読むだけではわからない、腹落ちするまでの深い理解は、身体知を通さないと得られない…情報や知識、言葉だけでなく、身体の中から全身で「企業の組織作りには時間が大切」を理解できました。ワーケーションをすると、机上の学びと身体知が重なる出会い…その両方がリンクする…だから心が躍り、ワーケーションにハマっていくんです!
実は士業とワーケーションは相性良し!…そんな時代に!
ソトコト ワーケーション社労士として、今後やっていきたいことは?
岩田 会計士、税理士、社労士、行政書士…あらゆる士業が率先してワーケーションしていく文化を作りたいと思っています。昔は社労士としての事務手続きはすべて紙だったのですが、行政のデジタル化の流れで、24時間オンラインで提出できるようになりました。ですから、士業でも場所を変えて働くことがしやすくなったんです。
ソトコト 実は士業とワーケーションって相性が良い時代なんですね!
岩田 はい。私はクライアントとリモート契約を結んでいるため、相談もオンラインが基本です。リモートは、全国のクライアントとお仕事させていただける利点もあります。ただ社労士の専門書や資料は、まだちデジタル化されていないことが…ここが唯一の難点で、リュック1つでワーケーションとはならず、重い本を入れたキャリーケースは必須です(笑)。いつかリュックだけで身軽にワーケーションできる日が来てほしいと思います!

事務所として使うことも。
打ち合わせ内容は機密情報も含まれるため、
リモート環境には細心の注意を払う。
ソトコト 士業のワーケーション人口が増えたら、専門書のデジタル化も実現するかもしれませんね。社労士としての視点でのワーケーションのお話、とても面白かったです。我々メディアも時代に合わせて、OSをアップデートしていかなければですね!
【岩田佑介プロフィール】
岩田社会保険労務士事務所。ワーケーション社労士 ®。パソナにて官公庁の地方創生プロジェクトの立ち上げに従事。 2016年よりライフネット生命保険に参画し、人事部長としてテレワークや兼業・副業など働き方改革を統括したのち、独立。2021年より観光庁の「新たな旅のスタイル促進事業」「ワーケーション推進事業」のアドバイザーに就任。著書に「図解労務入門」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「ベンチャー・スタートアップ企業の労務 50のポイント」(セルバ出版)、「経営戦略としてのワーケーション入門」(金融財政事情研究会)など。
【一般社団法人日本ワーケーション協会プロフィール】
ワーケーションを通した「多様性が許容される社会実現」を目指し、2020年7月に発足。300を超える会員(自治体・企業・個人)とともに、様々な取り組みを行っています。












