【ソトコト×ヤモリの空き家エコノミー連載】第5回目(前編)。日本の各地域を再生して、地域を活性化、関係人口を推進していくプロジェクトが「ソトコト×ヤモリの空き家エコノミー」。毎回ゲストを迎えてソトコトと一緒に対談。
日本の築古戸建ての再生賃貸事業を手掛ける株式会社ヤモリ代表の藤澤正太郎さんが毎回、ソトコトと一緒にゲストを招いて、日本の各地域の空き家から推進する地域活性化、関係人口作り対談。
第5回目(前編)となる今回は、東京大学、ペンシルベニア州立大学で教授を務める吉田二郎さんが登場。国内外の不動産学会でも要職を務めています。そんな吉田教授に、新築至上主義な市場について、前編、中編、後編の3回に渡って、お聞きしていきます。
住宅問題は空き家だけでない!…高齢者の一人暮らし住宅の「空き部屋」も増えている…
藤澤 今回は、不動産金融経済に詳しい吉田教授をお招きして、お話を伺いしていきます。よろしくお願いします。
吉田 よろしくお願いします。私の主要な研究テーマは「住宅の経年減価」、つまり建物が時間とともにどのくらい価値を下げるのかという研究です。
藤澤 まさに私たちヤモリが取り組んでいる中古住宅の価値化…空き家エコノミーにも関係していくお話ですね!
吉田 最近では、人の住んでいない「空き家」だけでなく、実際に人が住んでいる家の中でも使われていない「空き部屋」にも注目しています。高齢化が進む中で、広い家に一人暮らしの高齢者が増えています。一人暮らしゆえに物置きと化した部屋が多く、「空き部屋」となって、全く使われていない住宅空間が増えている…これは経済的にも社会的にも課題だと思っています。

ヤモリ代表の藤澤が講義に招かれたのが、
2人の出会いのきっかけ。
戦後の経済成長の中で、産官学が推進する住宅供給施策が新築至上主義を作った…
藤澤 まさにヤモリが考えている課題と、一致します。日本の住宅業界は、古くなるとすぐに建て替える「スクラップ&ビルド文化」が根付いています。これは海外と比べてもかなり特殊だと感じます。なぜ日本ではここまで新築中心になったのでしょうか?
吉田 これは戦後の経済成長と深く関係しています。人口の都市集中が進み、東京を中心に住宅不足が深刻化していく中で、新しい生活スタイルとしての「新築マンション」や「新築戸建て」に、強い憧れが生まれました。「産」(=建設会社やディベロッパー)、「官」(=国の政策)、「学」(=教育機関)は、新築を推進。政府は住宅供給を増やすことでGDPや雇用を支え、教育機関は大量の建築士を育てた。実際、日本は人口あたりの建築士の数が世界一なんです。こうして新築至上主義の社会になっていったんです。
藤澤 確かに高度経済成長期には理にかなっていた仕組みだと思います。しかし、今は人口減少、経済も成熟が進み、既存住宅を活かす方向に変わらざるを得ない状況だと思います。
空き家エコノミーを推進していくには、インスペクション=住宅検査の制度の確立が必要!
吉田 もちろん新築の良さもありますが、価格が高い分、返済額は増えて、家計負担が大きくなる点がデメリットです。日本の住宅は平均で30〜40年で建て替えられると言われていますが、欧米では木造でも100年以上使うことが珍しくありません。経済が成長していた時代は良かったのですが、今の日本の所得水準を考えると、長く使う方が合理的なんです。住宅を長く使うためには「インスペクション(住宅検査)」の制度の確立が不可欠です。日本ではまだ売り手寄りの検査が多いですし、住宅審査はまだきちんと市場で確立されていないと言わざるえません。本来、住宅検査はとても重要で、独立した第三者が中立に住宅を評価すべきなんです。
藤澤 私もそれを強く感じています。もっとしっかりと住宅検査を確立できれば、買う人も金融機関も安心感が増します。融資も出やすくなれば、不動産市場全体も活性化されていきます。アメリカでは住宅検査の制度は確立されているんでしょうか?
吉田 アメリカでは住宅ローンや住宅の保険を契約する時は、インスペクション=住宅検査は必須です。つまり、金融機関が「信頼できる第三者の検査」を求めて制度を整えてきた。金融機関はリスクを取る立場なので、厳しすぎず緩すぎない適正評価を望みます。だからこそ、独立したインスペクション制度が機能しているんです。

インスペクション=住宅検査の制度。
日本では中古住宅に対する評価軸が時代遅れ過ぎ。
それによる新築だけが
優遇される住宅融資の歪みは明らか。
藤澤 日本でも耐用年数22年を超えた木造住宅は帳簿上価値がゼロになります。まだ住めるのに価値はゼロ…実態の経済的価値と乖離した評価です。ここが課題です。インスペクションでの適正な評価が必要です。リフォームされた物件の価値をきちんと認めてもらえるようになれば、資金の流れ方…不動産金融は大きく変わりますね。
吉田 おっしゃる通りです。現状の日本の住宅検査の制度では「耐用年数超過=価値ゼロ」というマニュアル的評価が多く、結果として市場が硬直化しています。実際は、同じ築年数の住宅でも管理や整備によって品質にバラつきがあります。きちんと整備されている家は、まだこれからも住めるので、十分に価値があります。それを見極める制度が確立されていけば、金融機関にとっても融資機会が広がり、活性化していくんです。(中編に続く)
中編
吉田教授、大いに語る! 中古住宅市場の歪みをなくせば、きちんと空き家が評価されるようになる時代がやってくる⁉【空き家エコノミー⑭】
【吉田二郎プロフィール】
1970年岩手県生まれ、1992年東京大学工学部卒業。MIT 修士、カリフォルニア大学バークレー校修士、博士号取得。現在、ペンシルベニア州立大学教授と東京大学大学院経済学研究科特任教授を兼務。MIT客員教授、日本銀行客員研究員、政府審議会委員など歴任。国内外の不動産学会でも要職を務める。
【藤澤 正太郎プロフィール】
株式会社ヤモリ代表取締役。2011年に慶應義塾大を卒業後、三菱商事株式会社に入社。インフラ事業の海外案件とアセットマネジメントに従事。南米チリに4年間駐在。その後、NY本社の不動産ユニコーン企業であるKnotel IncのJapan GMを務める。2018年に株式会社ヤモリを創業し、日本の中古戸建て市場の活性化を通じた地方創生を目指す。












