福井県の中央部に位置する丹南エリアは、伝統工芸品との出合いや旧街道のまち歩き、登山、鉄道のトンネル遺構巡りなどいろいろなテーマで旅を楽しめる場所。2024年春には北陸新幹線が延伸開業(金沢・敦賀間)し、エリア内では越前たけふ駅が新設されます。ますます注目される丹南エリアの魅力を紹介します!
海、山、伝統と文化、なんでも楽しめる丹南エリアはここ!
福井県の真ん中に位置する丹南エリアは鯖江市、池田町、越前町、南越前町、越前市の5市町で構成されるエリアです。2024年春、石川県・金沢から福井県・敦賀間にて北陸新幹線の延伸が予定され、注目が集まっている福井県。その中でも丹南エリアは、「越前たけふ」駅が新たに開業を控えていることもあり、”モノづくり”が盛んなことで特に注目を集めています。海あり山あり、旧街道や近代以降の鉄道遺構・旧跡の歴史ありで、伝統と文化、自然を楽しめます。丹南エリアの各市町を巡る旅に出かけてみましょう。

歴史を感じる旧北国街道で、“おいしい”まち歩き/鯖江市
まず旅の始まりは、江戸時代に北陸の基幹道路だった「北国街道」から。京の都を出発し、滋賀を経由して福井に入り、その先は新潟まで続く全長約520キロの旧街道です。
鯖江市にはその痕跡が各所に残り、今もその歴史を感じることができます。細い路地を歩くと、昔ながらのお屋敷や土蔵造りの醤油屋さん、宿場跡などを見ることができるのです。
ここでおすすめするまち歩きルートが『泰澄(たいちょう)寺』から『誠照寺』を通り、『萬慶(ばんけい)寺』までの「歴史の道」。徒歩で1時間半から2時間程度の距離です。
スタート地点となる泰澄寺は福井市三十八社町にあり、ゴールの萬慶寺は鯖江市深江町にあります。かつて街道を行き交っていた旅人たちの休憩所になっていた「一里塚」や、旅の安全を祈願して祀られたお地蔵さんなど、当時の面影が道沿いに残っています。
また、途中の福井鉄道・神明駅近く、『神明社』境内にある福井県内最古の古民家『旧瓜生家(うりゅうけ)住宅』にはボランティアガイドが常駐し、鯖江の歴史を教えてくれます。


途中、歩き疲れたら「鯖江グルメ」で一休みを。
鯖江市の中心エリアには7つの商店街があり、南北朝時代から続く『誠照寺』の参道から現在の商店街へと発展したところもあります。
100年以上続くレトロな食堂があったり、売り切れ必至のスイーツやパンの店など、立ち寄りたい店がたくさんあります。歴史散策の途中に地元店でのグルメやショッピングを楽しんでみてください。


参考サイト:https://craftinvitation.jp/spot/ajimiya/

参考サイト:https://www.instagram.com/__la.couronne/
山の自然を満喫。ファームハウス・コムニタで宿泊/池田町
一方、山の静かな自然が好きな方には、足羽川の上流部に位置する池田町がおすすめです。面積の約9割が森林を占め、空気も澄んでいるため、星空観察や秋の焚き火、初夏にはホタルの鑑賞が楽しめます。

山の“夜”を心ゆくまで満喫するためには、宿泊をしてゆっくりと過ごしたいものです。
池田町にある『ファームハウス・コムニタ』は、自然と人にやさしい農業を手掛けている素朴な山のホテルで、旬の野菜や山菜をふんだんに使った郷土料理を提供してくれます。
肉や魚も池田町産、福井県産のものをできるかぎり使用し、化学調味料は極力使わないというこだわりを持っています。特別栽培米として有機肥料・減農薬の規定のもと、手間と愛情をかけて育てたコムニタ自慢のコシヒカリは土鍋で炊き上げてくれます。
また、お子様向けにお子様プレートも用意されています。福井県産和牛とミディトマトが入った手作りハッシュドビーフにコロッケなど、キッズに人気のおかずがいっぱいで、野菜嫌いなお子様でも楽しく、おいしく食べられると評判です。食物アレルギーにも対応してくれます。
森と川、田畑に囲まれた環境にあり、窓から見える四季折々に移り変わる色彩豊かな山の風景は、額縁に入れて飾った絵のようで、一日中眺めていても見飽きることはありません。夏にはハンモックに揺られながら星空観察もできます
部屋は洋室、和室の両タイプがあり、全室にユニットバス、トイレ、テレビが付いています。自然を感じる一日を、池田町でぜひ過ごしてみてください。




登山を楽しみたい方は、越知山(おちさん)へ!/越前町
山が好きで、登山にも興味があれば、越知山を目指してみてください!日本百霊峰にも選定されている越知山は、福井市と越前町をまたぐ標高612.8メートルの山です。
冒頭で紹介した『泰澄寺』の泰澄大師(682~767年)が修行し、悟りを得た山として知られています。その修行した道などが現在の登山ルートとなっていて、多くの登山客が登っています。


また、泰澄大師のほかにも、多くの僧侶が修行したと伝えられ、周辺には泰澄ゆかりの御本社をはじめ、奥の院・別山・石仏・修行場となった遺跡など、多くの歴史遺産があります。山頂にある越知神社もその一つです。
社伝によると、泰澄大師が仏像を造り、山頂に社堂を建立して「越知山三所大権現」と称して祀ったのが始まりといわれ、江戸時代の最盛期には数万人の崇敬者が参られたそうです。
山頂の展望台からは福井市、鯖江市、越前市、越前町のまち並みや、白山連峰を眺望でき、風光明媚な観光名所として多くの人々に親しまれています。

さらに自然の宝庫として、さまざまな自然や山野草を感じたり、見られることも魅力となっている山で、学術研究の場にもなっています。春は桜、夏はブナ林をはじめとした原生林の新緑、秋は紅葉……と、四季折々の彩りを楽しむことができます。


旧北陸線・鉄道トンネル遺構を巡る/南越前町
鉄道や近代以降の旧跡に興味がある方にぴったりな旅が、南越前町でできます。明治時代に敦賀―南越前町今庄(いまじょう)をつないだ、旧北陸線の鉄道トンネル遺構を歩いて巡る旅です。
明治29年(1896年)に敦賀―福井間で開業した旧北陸線は、最大の難所である険しい峠を越える敦賀―今庄の間で13基のトンネルが掘られました。
現在、11のトンネルが国の登録有形文化財になっており、100年以上経った今も道路用の現役トンネルとして使用されていて、中を歩いて散策することもできます。それぞれ、レンガや石組みが異なり、中を歩けばちょっとしたタイムトラベル気分が味わえます。




また今庄はかつて、宿場町『今庄宿』として栄えていました。山深い北陸随一の難所を背にし、旅人は今庄宿で疲れを癒やしていったそうです。
今も今庄の旧北国街道沿いにその風情を残しており、大正時代に建てられた古民家『旧斎藤家』を活用した『土の駅 しげじろう』では、地元のおいしい伝承料理の数々が越前漆器で提供されます。


※令和4年8月豪雨災害により、トンネル周辺は悪路となっております。道路規制状況等をご確認のうえ、安全に留意してご通行ください。
「タンス町通り」でモノづくりの伝統を知る/越前市
丹南エリアは越前漆器、越前和紙、越前打刃物、越前焼、そして越前箪笥(たんす)といった伝統工芸品の産地としても知られています。眼鏡、繊維も加え、7つの地場産業が半径10キロ程度の圏内に集積している、ほかにはない場所です。
越前市にはその名も「タンス町通り」があり、約200メートルの間に越前箪笥を製造・販売する店などが集まっています。江戸後期から指物職人らが多く暮らし、明治の半ばに現在のまち並みが形づくられました。
かつて、この界隈にはさまざまな嫁入り道具を商う店も多く集まり、賑わいを見せていました。越前市の中心市街地にあり、隣接するエリアには歴史ある寺院が多数軒を連ね、ノスタルジックな雰囲気が漂う散策にぴったりのエリアです。

越前指物の木工技術を基礎に、越前打刃物の金工の技や越前漆器の漆塗りの技が生かされた越前箪笥は、見るからに重厚な造りが特徴です。
越前箪笥の飾り道具に施されるハートの形は、魔除けを意味する「猪目」の文様で、飾り金具は越前打刃物の技に由来します。

このタンス町通りに2019年10月、越前箪笥のシンボル施設『越前箪笥会館』が新たに誕生しました。
手仕事の粋を極めた越前箪笥の展示・販売のほか、越前箪笥の歴史を遡る奈良・法隆寺の国宝「橘夫人厨子」の複製の展示もあります。
また、最近は箪笥職人たちによる、一見、本業と一線を画すようなものづくりも注目されています。お洒落な木製雑貨や思いがけないキャリーケースを生み出す職人が出てきているのですが、ただそこには、精巧で緻密な越前箪笥づくりの技が盛り込まれています。伝統を受け継ぎ、創意と工夫で新たな価値を創り出すことが職人たちの真骨頂です。


タンス町通りのほかにも、奈良時代に国府がおかれた当時に遡る寺町通りや、北陸の玄関口として栄えた記憶を残す蔵の辻など、深い歴史がつまったエリアです。数日滞在してみてもおもしろいまちです。
伝統工芸品から自然まで、いろいろな楽しみ方できる丹南エリアをぜひ一度、旅してみてください!