大阪府池田市にある石橋商店街では、消費者との新しいつながり方を模索しながら、まちの明るい未来を創出する取り組みを実施しています。その一環として、2023年7月8日(土)~9日(日)に開催されたのが「おとな合宿」というイベント。いつもは客として訪れる大人たちが、さまざまな体験をとおして商店街を楽しみ尽くしました。この体験の先にどのようなまちの未来を思い描いているのか、イベントの模様と併せてレポートします。
まちの銭湯で風呂掃除
参加者の中には、平和温泉Tシャツを着て参加された大ファンの方や、仕事帰りにわざわざ下車して湯船に浸かりにくるという方もいらっしゃいました。ですが何度通っていても、風呂掃除は初体験。3代目の中野洋介さんに教えていただきながら、1時間ほど汗を流しました。
銭湯といえば、大きなお風呂でリラックスしたり、サウナで“ととのう”を感じたり、風呂上がりのコーヒー牛乳に感動したり。それらはすべて、中野さんの毎日の仕事あってこそなんだと痛感しました。
商店街で中国茶文化を体験
今回は「五感で楽しむ中国茶」というテーマで、中国茶をおいしく飲みながら、中国茶の種類や、およそ5,000年あるという中国茶の歴史などを丁寧に教えていただきました。
ちょうど、7月8日は中国語の七(チ)と日本語の八(や)で「ちゃ」(茶)と読む語呂合わせから「中国茶の日」と定められているそう。参加者は風呂掃除での疲れを癒しつつ、お茶を通じて弾む会話を楽しみました。
まちの写真屋で商店街の歴史を辿る
もともと写真は嫌いだったという3代目の藤井太郎さん。写真屋を継ぐことを意識してカメラについて学んでいくうちに、だんだんと写真のことが好きになっていったそう。毎年必ず家族で撮りにくるお客さまもいるほど、地域で愛される写真屋さんです。
写真館の地下室には白を貴重としたおしゃれなスタジオがあります。30年ほど前までは隣は池だったそうですが、現在は公園となっており、地下室でありながら、窓から光が入ってきます。不思議な地形に、石橋商店街の昔の名残も感じられました。
夜は大人のスパイスカレーとクレープづくり
「石橋商店街デイサービスセンター」の場所をお借りして、スタッフの皆さんと一緒につくります。代表の西村禎雄さんは、商店街の中にデイサービスセンターをつくろうとしたとき、役所の方から「高齢者=危ない」という理由で、最初は反対を受けたそうです。ですが、商店街で生まれ育ち、地元に元気を届けたいとの思いで、デイサービスを運営されています。
自家製のカスタードクリームが特に人気で、スイーツ系の甘いクレープからおかず系のクレープまで、いろいろな味を楽しめます。皆においしく食べてほしいとの思いで、かなりお求めやすい価格帯でクレープを提供していらっしゃるそうです。
スイーツ系のクレープは、一般的なクレープ屋さんと比べて生地を薄く焼き、具材を楽しめるようにしているとのこと。参加者は、均一の薄さで丸く伸ばすのに苦労している様子でした。
地元で長く愛されてきたパン屋さんでパンづくり
3代目の堤洋一さんの軽快なトークでパンの焼き上がりを待ちます。創業100年近いタローパンの工場には年季の入った機械や道具ばかりで、導入当時はとても珍しく、高価だったものもあるそう。参加者は、普段は入れないパン屋の裏側に驚きながら、写真におさめていました。
15分ほどでパンが焼きあがりました。オーブンから出して焼きたてのパンを食べるのも、なかなかない経験。とてもおいしくいただきました。
老舗和菓子屋さんでねりきり体験
3代目の松家光史さんによる、ねりきり体験を行いました。ねりきりは、白あんにぎゅうひや大和芋を混ぜてできているそうで、体温が伝わってしまうと、手にべったりとついてしまい、上手く作業ができません。とても扱いが難しく繊細な作業に、参加者は集中して取り組みました。
まちのふとん屋さんによるミニ座布団づくり体験
縫製や綿入れなど慣れない作業も、山口さんにサポートいただきながら、1時間半ほどでオリジナルの座布団ができあがりました。
これからも愛される商店街であり続けるために
浅田さん「商店街に来る人は減少傾向にあります。その一つの要因として、『個人店には入りにくい』といった心理的なハードルの存在が大きく影響しているんです。
今回のおとな合宿では、商店街での様々な体験を通して、商店街に馴染みのない人たちに、心理的ハードルを下げてもらいたいと考えました。
実際にやってみて、普段の生活ではできない体験や商店主との交流を通じて、また商店街に来てもらえるきっかけづくりにつながったと感じています」
浅田さん「商店街がこれからも元気であり続けるためには、従来の売買だけの関係では難しいと思っています。来てくれたお客さまに、どのような価値を提供できるのか。よりブラッシュアップしていくことが大切です」
「おとな合宿」に参加して、普段買い物を楽しんだり、利用したりするだけでは見えなかった“商店街のおっちゃんおばちゃん”の顔を見ることができました。思いやパッションに触れた、とても刺激的な二日間。これからも商店街がずっと元気であってほしいし、3代目、4代目、というように繫がっていってほしいです。
元気な石橋商店街の人たちのことや、今回感じた体験を、誰かに知ってもらいたいと思い、この記事を執筆するに至りました。石橋商店街を訪れ、好きだと感じてくれる人が一人でも増えるといいな、と願っています。
石橋商店街
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文:宮武由佳(@udon_miyatake)