地域に支えられる岡山の「池田動物園」。地元縫製メーカーが動物マスクに込めた思いとは

地域に支えられる岡山の「池田動物園」。地元縫製メーカーが動物マスクに込めた思いとは

岡山で65年以上もの歴史を誇る「池田動物園」。上皇陛下の実姉・池田厚子さんが園長をつとめる、民営の動物園である。ここ数年は経営難や老朽化が話題にあがるが、岡山県民にとっては幼い頃から親しんできた場所だ。2020年の春〜夏はコロナ禍でさらに来園者が激減。そんな中、地元の縫製メーカーが申し出て動物マスクを製造し、来園者に人気を呼んでいる。マスクに込められた思いを聞いた。

縫製メーカーとしてできることを


岡山市北区・池田動物園で、2020年8月から発売されている動物マスク。製造しているのは、ジーンズストリートが有名な倉敷市児島にある、縫製メーカーの有限会社ココロだ。同社もジーンズを中心にアパレルメーカーなどから受注し縫製している。コロナ禍で受注が減少してきた頃、なんとか仕事を生み出そうと当時手に入りにくくなっていたマスクの製造を開始。そんな時に、池田動物園の窮状を耳にした社長の山崎芳仁さんが同園を訪れる。
「もともと減っていた来園者がコロナの影響でさらに減少して、マスクもない状況だとますます厳しいと思い、自分たちで出来ることがあればと。動物園らしい旗印になるものをと、動物をプリントしたマスクを作ることにしました」と山崎さんは当時を振り返る。


池田動物園・動物マスク
池田動物園の売店で販売されている動物のイラストが入った布マスク。ライオンやホワイトタイガーなど人気者のイラストがプリントされている。サイズはS〜L、各税込1,210円

動物園は子どもの「心」を育む場所


幼少期には自身も池田動物園を訪れていたという山崎さん。幼稚園・小学校の遠足や家族で行った思い出など、今でもよく覚えているという。しかし今回久しぶりに訪れると、その頃とは全く印象が変わっていた。
「子どもの頃に来た時には動物もたくさんいて、とにかく広くて大きかった。今はとても小さく感じました。自分が大人になったこともあるけれど」と寂し気に話す山崎さん。
副園長の忠政智登士さんに案内され1周みて回ったが、キリンもゾウもおらず、ライオンは全く動かずじっとしていたという。そして3ヶ月後には、このライオンも亡くなった。
「副園長さんと、とても悲しいことではあるけれど、子どもたちがこうした命の尊さを直に学べることはすごく勉強になると話しました。動物園は地域にとって残していくべき価値があると思いますし、自分たちができることをやっていきたいと思っています」


池田動物園
池田動物園のゾウの園舎。2017年に長年の人気者だったメリーが亡くなったが、今でもこうして写真撮影スポットとして残している。

写真ではなくあえてイラストに


動物マスクの試作では、池田動物園で人気のレッサーパンダの写真をプリントして作ってみたが、温かみが感じられずに作り直した。
「副園長さんの甥っ子さんとその娘さんが絵を描いていらっしゃると聞き、手描きでイラストを描いてもらったところすごく温かみがあって良かった。そのイラストをデータにしてマスクの生地にプリントすることにしました」と山崎さん。
イラストのプリントには、ガーメントプリンターという生地専用のプリント機を使用。同社はもともと縫製のみの工場だったが、若い職人を育てたいと、縫製だけでなくオリジナル製品を作るため2年ほど前に導入したという。
「人を育てるために入れた機械を、このような形で活かせたことも嬉しいですね」
こうして作られた動物マスクは、最初のレッサーパンダ、次にペリカン、ライオン…と続き、現在では人気の動物たちが種類豊富に揃う。


有限会社ココロ/ガーメントプリンター
ガーメントプリンターでマスクに動物のイラストをプリント中。(c)有限会社ココロ

繊維・紡績のまちだからこそ。素材にもこだわって製造

繊維・紡績のまちだからこそ。素材にもこだわって製造


もちろんマスク自体に使用する素材にもこだわり、大手繊維メーカー・クラボウ(倉敷紡績株式会社)の抗ウイルス素材「クレンゼ」を使用している。繊維上の特定のウイルス数を99%減少させるクラボウ独自の加工が施されている。
「会社を立ち上げる前は素材メーカーに勤めていたので、クラボウさんともお付き合いがあり仕入れることができました」と山崎さん。


池田動物園・動物マスク
生地に使用されている素材はクラボウ製の抗ウイルス素材「クレンゼ」。(c)有限会社ココロ

動物マスクが発売され約2か月。売れ行きを副園長の忠政智登士さんに尋ねると、「ご家族連れの方に人気です。園内で誰かがこのマスクを着けていると、子どもさんが見て『これ欲しい』と買われて行かれます」と笑顔で話してくれた。


世代を超えて愛される動物園


このマスクのように、園内で飼育されている動物の園舎や備品の提供など、池田動物園は地元企業や有志によってさまざまな形で協力・支援されている。
「開園以来、多くのお客様が3代、4代に渡って来ていただいています。それで地元のみなさんが『思い出のある動物園をずっと残して欲しい』と色々と応援していただいて、本当にありがたいです」と忠政さんは話す。


池田動物園
2019年、池田動物園に仲間入りしたホワイトタイガー。

動物園で働く若い人も元気にしたい


今回マスクを作った有限会社ココロの山崎さんは、今後も別の形で動物園の盛り上げに関わっていけたらと話す。
「動物園で働く若いスタッフさんたちに話を聞くと、『動物が好きで働いている』と言います。そんな若い人たちのモチベーションが上がるようなものを、一緒に作れたらいいなと考えています」と山崎さん。


動物園経営の難しさ、支援のあり方には様々な意見がある。しかし人々にとって大切な場所を皆で支えていくことは、次世代を育て、地域の未来をつくることにつながるのではないだろうか。


 


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