書店で見て驚愕したのを覚えている。出版不況、そしてコロナ禍を前に発刊された『TRAVEL UNA』。美麗な写真と、知的な文章。だけではない。ていねいな取材と緻密な研究データに裏打ちされた明瞭な誌面。英語での翻訳も付されている。編集の“解像度”が高い印象。
そして本誌は単なる雑誌ではない。「現地を訪れること」が一義。だからタイトルに“TRAVEL”を冠する。しかしなぜ、発刊することになったのか。
一言でいえば、未来のため。近代化の波にのまれ、なくなりつつある地域文化。が、九州にはまだ固有の文化が数多く残り、それを次世代に向けて伝えるのがミッション。そこで必要となってくるのが「情報と体感」。単なる消費を柱にしたツーリズムではなく、土地や地域のクラフトなどのつくり手が、訪問者と出会い、互いが学び合い、なにかを生み出せるような関係性へ。これはきっと、持続可能な地域文化に向けた新しい視座のガイドブックなのだ。
『TRAVEL UNA』
手がけたのは福岡県八女市を拠点に活動を続ける“地域文化商社”『うなぎの寝床』と、「シンク・アンド・ドゥタンク」を提唱する『リ・パブリック』による共同資本会社『UNAラボラトリーズ』。