問題:「沼垂」なんと読むでしょう?
全国にある難読地名。全然読めない!という楽しさもあり、見たことのない地名に出会うとついつい「どう読むんだろう?」と考え込んでしまいます。
今回の読めない地名は「沼垂」。新潟市中央区にある地名です。みなさん読めますか?
正解は「ぬったり」です!
新潟県内出身の私も、初めて見たときは読めませんでした……。言われてみれば、なるほど!と納得できる読み方です。「沼」を「ぬっ」と読めるかどうかが鍵になっている気がします。
実際に「読めない」という声をSNSなどでもよく見かけました。やはり「ぬまたり」や「ぬまたれ」といった読み間違いが多いようです。たしかに妥当な読み方。みなさんは正しく読めましたか?
「沼垂」の由来とは?
地名は、その地域の歴史を表すものでもあります。「沼垂」には、どんな由来があるのでしょうか。
新潟市観光推進課の島田さんにお話をうかがったところ、「もともと『渟足』と表記されていたものが、『沼垂』と表記されるようになったようです」と教えていただきました。しかし、なぜ『沼垂』の表記が使われるようになったのかは、わかっていないそうです。
では、もとの表記である『渟足』とは? 調べてみると、なんと大和朝廷から続く歴史があったようです。「沼垂町」としての歴史も含めて、こんな記述がありました。
沼垂(ぬったり)は、奈良時代の歴史書「日本書記」の中で「渟足の柵(ぬたりのき)」(大和朝廷の砦のようなもの、西暦647年)として出てくる、古くからの地名です。
江戸時代はじめ、沼垂町は日本一長い信濃川と阿賀野川が河口で一緒になるあたりに位置する湊町でした。しかし、洪水や浸水などで町が水没し、4回も町ごと引っ越し、1684年に今の場所に定住しました。
引用:「過去と未来が『醸す』まち沼垂」,沼垂見どころ,沼垂定住300年碑より
「沼垂」は、8世紀に完成された『日本書紀』にも記載のある、大和朝廷の防衛&行政施設でもあった「渟足の柵」がもとになった地名のようです。
『日本書紀』のなかでは、「大化三年(647年)渟足柵を造りて柵戸を置く」という記載があり、これが歴史上で新潟に関する初めての記載なのだとか(新潟市「渟足柵ってなに?」より)。
しかし、この「渟足の柵」がどこにあったのか、その場所はまだわかっていないそうです。
「沼垂」自体、4回も町ごと引っ越しをしています。「渟足の柵」も、今の沼垂がある場所ではなく、かつて沼垂だったところにあったということなのかもしれません。
いまは昭和レトロの香りが残る、発酵のまち
そんな沼垂のまちは、今では県内でも人気の観光スポットになっています!
島田さんによると、特に人気があるのは「沼垂テラス商店街」。昭和40年頃、ここは日用品店や青果店などが立ち並び、地元の市場として賑わっていた場所でした。その後、自動車の普及や大型スーパーなどの相次ぐ出店により、市場は衰退。しばらくシャッター通りとなっていました。
しかし、市場として使われていた長屋を改装し、2010年ころから次々にお店がオープン。今では、すべての長屋が店舗として活用され、再び賑わいを取り戻しています。
かつて市場だった雰囲気はそのまま、まちにはレトロな昭和の香りが漂います。昔ながらの長屋に、おしゃれなカフェや雑貨屋さん、古本屋さんなど、小さなお店が並ぶ通りを歩くだけでもワクワクが募ります。
また、かつて湊町として栄えた「沼垂」では、船で味噌や酒などの出荷をしていた歴史もあります。その名残から今でも沼垂には発酵食品の蔵元が集まり、「発酵のまち」として知られています。
2016年からは、沼垂のマイクロブルワリーで造られるクラフトビール「沼垂ビール」が誕生。「発酵のまち・沼垂」をさらに盛り上げています。
ぜひ、行き先は「沼垂」で!
古い歴史とレトロな町並みのなかに、現代の新たな空気が混ざり合う、沼垂のまち。新潟市のなかでも、注目エリアのひとつです。
今回ご紹介したところ以外にも、見どころはまだまだたくさんあります! 新潟駅から徒歩で行けるのも魅力的。「沼垂」という地名も読めるようになったところで、ぜひ現地を訪れてみては?
(※新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、営業時間などが変更されている場合があります。訪問の際は、事前に最新の情報をご確認ください。)
▼取材協力
新潟市 観光・国際交流部 観光推進課