「世界一チャレンジしやすいまち」の実現をビジョンに掲げる宮崎県新富町。人口1万7,000人の小さなこの町で、なぜ1粒1,000円ライチや企業との連携事例が続々と生まれ、移住者たちが飛びこんできているのか。仕掛け人である地域商社こゆ財団の視点から、その理由と気づきをご紹介します。今回のテーマは「起業家精神を磨こう」です。日本中に起業家育成塾は数あれど、起業家精神を磨く場というのは多くないのではないでしょうか。今回は、こゆ財団が2017年4月から8月まで実施した人材育成プログラム「児湯シータートル大学」がテーマです。
「児湯シータートル大学」は、こゆ財団が設立直後から始めた3つの事業のうちの一つで、現在にいたるまでの人材育成事業の原点とも呼べるプロジェクトです。
新富町内はもちろん、県内から新しいことへのチャレンジを志す20名の人材を募集し、全6回のゼミ形式の人材育成講座を実施しました。
最大のポイントは、起業家ではなく起業家精神を学ぶ場であること。プログラムを通じて、受講生はマーケティングや会計といったビジネスの基礎知識ではなく、チャレンジすることの大切さを地域の現場で体感し、学びます。独立や開業をゴールとしていないことから、受講生は農業経営者やパン店主、ジュエリーショップのマネージャー、看板店の後継ぎといった多彩な顔ぶれが新富町を含む県内各地から集まりました。
全6回のプログラムでは、地域づくりの先進地を訪れてのフィールドワークを実施。「黒川一旅館」(温泉街全体を一つの旅館と捉える)をコンセプトにさまざまな地域づくりに取り組んでいる熊本県南小国町の黒川温泉や、阿蘇の大自然をMTBで体感できるサービスの事業者らから、チャレンジした理由、課題をどう乗り越えたかなどをお聞きしました。
受講生が学んだことは、「まずやってみること」、「失敗を早く重ねるほど成功に近づくこと」、そして「自分の枠(固定観念や先入観)の外を意識すること」。どれも特別な能力や経験を必要としないので、いつでも、誰でもできることです。
かくして、こゆ財団として初めての人材育成事業は2017年8月に最終プレゼンテーション大会を実施し、終了しました。
その成果は、受講生の変化にあらわれました。受講生20名のうち、6名がクラウドファンディングにチャレンジ。3つのプロジェクトが立ち上がり、合計150万円の支援を獲得しました。
また、独立開業して整体サービスをはじめたり、地元の農産物を活用した甘酒造りで話題になるなどの人材も生まれています。
クラウドファンディングを立ち上げた若手農家の一人は、テクノロジーを活用した農業にチャレンジ。取り組みの先進性はもちろんのこと、自分の枠の外を意識したアクションで、某経済紙でも記事として取り上げられています。
起業家精神を磨く場としての「児湯シータートル大学」のコンセプトは、2018年からは都市部在住の人材を対象とした「宮崎ローカルベンチャースクール」、2020年には改めて地元人材向けに開講した「こゆソーシャルビジネススクール」に受け継がれ、新しいチャレンジを志す人材との出会いの機会でありつづけています。
そして2021年夏、「児湯シータートル大学」が再び帰ってきます! 新富町でチャレンジしたいという方、続報をお待ちください。