「世界一チャレンジしやすいまち」の実現をビジョンに掲げる宮崎県新富町。人口1万7,000人の小さなこの町で、なぜ1粒1,000円ライチや企業との連携事例が続々と生まれ、移住者たちが飛びこんできているのか。仕掛け人である地域商社こゆ財団の視点から、その理由と気づきをご紹介します。
今回のテーマは「ピンチはチャンス」です。どの地域にも財源や担い手不足、高齢化といった“課題”とされるものが山積していると思います。ただ、それは本当に課題でしかないのでしょうか。私たちは見方、考え方を変えたとき、そこにはチャンスが現れると思っています。2021年4月現在、地球上のすべての人がコロナ禍にあるさなか、私たちは一つのチャンスを見出しました。
コロナ禍の中で考えた「自分たちにできること」
私たちは、2017年の設立以来、多様な人が集まる場づくりを大切にしてきました。観光から人材育成、商品開発に至るまで、さまざまなテーマで人が交わり、互いに気づきを得ること、共創すること、創発することの大切さを重視してきたからです。
しかし、2020年2月からその状況は一変しました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、思うように場づくりができなくなってしまったのです。
東京都内で3月までに計画していた人材育成塾の最終発表会やSociety5.0関連イベントは中止。それ以降も、地元の新富町にもゲストをお呼びすることができなくなったほか、毎月第三日曜に商店街で開催してきた地域交流マルシェ「こゆ朝市」も、同年12月までの10ヶ月間は中止を余儀なくされました。
この状況は、間違いなくピンチです。私たちが運営している民泊やカフェ、観光体験に人を呼ぶことができず、事業としては大きな痛手を受けました。県外との往来がままならなくなり、新たな企業や人材との出会いも思うようにできなくなりました。
この影響は2021年4月現在もつづいていて、予断を許さない状況に変わりはありません。
オンラインに見出した活路
新型コロナウイルス感染症の流行が全国的なものとなった4月、チームでの会議で私たちはオンラインをフル活用することを決定しました。
当時はまだオンライン会議ツールのことも、その使い方もよくわからないメンバーが大半でしたが、往来や対面での機会が限定される中、自分たちができることをやろうと決めたのです。
まずは人材育成チームから講座やプログラムのオンライン化にチャレンジ。モデレートやファシリテートの経験を持つメンバーを中心に、参加者の主体性や相互の交流をオンラインでどう生み出すかを議論しながらオンライン化をはかっていきました。
その結果、対面では多くても50〜60人程度と限定的だった集客が、オンラインのライブ配信で10倍近くに増えたり、これまでにはない短いスパンで多数のオンライン講座を実行することができました。
学校や生涯学習のオンライン支援も開始
前述の通り、オンラインでの講座やイベントの企画運営は、私たちにとっても未知の領域でした。ですが、私たちがモットーとしている「まずやってみよう」の精神でチャレンジを始めた結果、ピンチはチャンスとなりました。
私たちがオンライン講座の企画運営にトライし続けた結果、動画コンテンツは50以上がインターネット上にアーカイブされ、多くの方が私たちを知るきっかけとなっています。
また、トライし続けたメンバーのスキルも上がり、現在では他のオンライン講座にファシリテーターやモデレーターとしてお招きいただいたり、学校の授業や生涯学習講座のオンライン化についてご相談をいただくケースも生まれています。
ピンチはチャンス。何事も、見方や捉え方を変えれば、活路は必ず開けると思います。