しかし、帝国データバンクが実施した『DX推進に関する企業の意識調査』 によると、「DXの意味を理解し、取り組んでいる」企業は15.7%と7社中1社でした。また、企業規模間に格差がみられたほか、取り組んでいる企業のうち、「製品・サービスの高付加価値化や創出」や「ビジネスモデルの変革」といった本格的なDXに取り組む企業は37.4%にとどまっています。
なかでも、半数の企業で人材やスキル・ノウハウの不足がDX推進の足かせとなっています。そこで帝国データバンクは、『DX推進に関する企業の意識調査』および企業概要データベース「COSMOS2」(約147万社収録)よりDX推進に関する企業の実態について分析しました。
調査結果(要旨)
2、企業年齢が「5年未満」の企業でDXへの取り組み割合が最も高く、全体を9.3ポイント上回る
3、地域別では、1都3県でのDXへの取り組み割合が最も高い
4、「ソフト受託開発」などを含む「情報サービス」および「金融」でDXへの取り組み割合が突出して高い
1. DXを理解し取り組んでいる企業割合、社長年齢が「39歳以下」の企業がトップ
帝国データバンクの調べ[1]によると、全国の社長平均年齢は60.3歳ですが、社長の年齢が平均よりも若い企業の方がDXへの取り組みが進んでいるという結果になりました。
企業からは、「DXとは一番遠い業界なのでなかなか進まないが、若い後継者が入れば、今まで以上に取引の電子化や、会議のオンライン化は進むと思う」(運輸・倉庫、大分県、50歳代)や「DXについては、20代など若い従業員に対応してもらっている。50代にはなかなか難しい」(専門商品小売、広島県、50歳代)など、若い世代の方がデジタル化などDX推進に向けた取り組みのハードルが低いといった意見があがりました。他方、「具体的対応方法の理解が出来ていない。理解を深めるように努力をしたい」(機械・器具卸売、東京都、70歳代)といった声にあるように、現段階では理解できていないが、前向きに取り組む姿勢を示す企業もみられます。
また、DXに取り組んでいる39歳以下の社長からは、「ITやデジタルなどには抵抗がない。人口の減少などでビジネス環境が変化し続けるいまの時代では、生き残るために同業他社よりも一歩先を行かないといけないと意識している」(化学品製造、静岡県、30歳代)や「人口が減少し人手不足も深刻化しているため、デジタル化などDXへの取り組みの必要性が増している。個人的にITやデジタルの活用はハードルが低く、30代~40代前半の知り合いの経営者もそうである」(化学品製造、長野県、30歳代)といった声が聞かれ、デジタル化への抵抗が少ないことがDXへの取り組みの一つのきっかけである様子がうかがえました。
その背景として、「39歳以下」の社長はパソコンやインターネットが普及した時代に育った30代と、デジタルが当たり前の時代に生まれた20代が含まれているため、比較的デジタルに慣れ親しんでいる傾向にあることが考えられます。
さらに、上述のコメントによれば、学生時代から少子高齢化問題を目の当たりにする当世代の社長における人口の減少や人手不足に対する強い意識も、DX促進の一因であるとみられます。
[1] 帝国データバンク『全国「社長年齢」分析調査(2021年)』(2022年3月4日発表)
2. 企業年齢が「5年未満」の企業でDXへの取り組み割合が最も高く、全体を9.3ポイント上回る
企業からは、「チャットワークを活用したリモートワーク事業部をもっており、試験的に運用していて成果が出ている。システムをつくりたいアイデアはあるが、具現化に向けて課題がある」(専門サービス、岐阜県、5年未満)といった声があり、DX実現に向けて前向きに取り組んでいる企業でも、課題は残っています。
3. 地域別では、1都3県でのDXへの取り組み割合が最も高い
なかでも「東京」のDXへの取り組み割合は22.3%にのぼっています。他方『近畿』ではDXへの取り組み割合は全国に近いものの、DXにこれから取り組みたいと思っている企業の割合が29.1%と比較的高く、『DXに積極的』な企業は45.1%と1都3県(『南関東』)をやや上回りトップとなりました。
なかでも、「大阪」ではDXに取り組みたいと思っている企業は30.4%にのぼっており、今後のDX推進が期待されます。一方で、『東北』において『DXに積極的』な企業は33.3%と最も低く、全体を約8ポイント下回りました。
4. 「ソフト受託開発」などを含む「情報サービス」および「金融」でDXへの取り組み割合が突出して高い
企業からは、「ソフトウェア開発会社として新しい仕組みを提案し、外食産業の情報システム化を更に推進していきたい」(情報サービス、東京都)や「社長が率先して推進しており、事業戦略上一番重要と位置付けている」(情報サービス、東京都)などといった声が聞かれ、本来の業務内容が企業のDX支援となっているほか、経営者のDXに対する意識の重要性がうかがえました。
また、金融業界からは「テレワークなどは業務内容によって進んでいる部署と進んでいない部署がある。デジタル技術を活用した新規サービスの創出については、住宅ローンなどを審査から契約の手続きまでネットで完結するサービスを提供」(金融、愛媛県)や「良い悪いは別として、必然的な流れ」(金融、東京都)といった声があがっています。
一方で、「繊維・繊維製品・服飾品製造」において『DXに積極的』な企業が26.3%、ガソリンスタンドや燃料小売が含まれる「専門商品小売」では30.8%にとどまっています。なかでも「専門商品小売」におけるDXへの取り組み割合は10.7%と全体を5.0ポイント下回りました。
企業からは、「DX推進のメリットと推進しなかった場合のリスクが理解できていない」(繊維・繊維製品・服飾品製造、埼玉県)といった声が聞かれた一方、「中小企業のため、費用面での採算を考えると踏み出せないが、出来ないと言っていてはますます出来ないので、優先順位を見極め出来ることから取り組んでいる」(繊維・繊維製品・服飾品製造、愛知県)や「必要性は理解できるが、現状から改革すべき部分の工程、プロセス管理が出来ない」(専門商品小売、鳥取県)など、必要性は感じているものの、課題があるといった意見もあげられました。
このような支援策はもちろん、多くの企業でDXを推進するうえでの問題となっている人材やスキル・ノウハウの不足を踏まえて、DXへの取り組み事例などノウハウを発信していくことが重要です。加えて、デジタルコンサルティングなど外部委託にかかる費用に対する支援も一つの手だと考えられます。
なかでも経営者の年齢が高い企業への重点的なサポートが肝要となるでしょう。本格的なDX実現に向けて、政府による手厚い支援とともに、企業には社会のニーズを見極め、どのようにデジタル技術を活用してビジネスを変革していくかを検討することが求められます。