宇宙でもサステナブルな農業を。名古屋大学発のスタートアップがつくる「宙ベジ」って何?

特集 | 【2022年10月の特集】取り寄せて楽しむ“サスティナブル”な秋の味覚 | 2 宇宙でもサステナブルな農業を。名古屋大学発のスタートアップがつくる「宙ベジ」って何?

2022.10.06

宇宙開拓時代に向けて、月や火星でも作物栽培ができるシステムの実現を目指すTOWING。そんなワクワクする壮大な目標を掲げた名古屋大学発のスタートアップが9月、オンラインストアをオープン。「宙ベジ(そらべじ)」と名付けられた野菜が買えるという。

どんな農法による、どんな野菜が買えるのか、TOWINGで広報や人事を担当する沖 直人さんに教えてもらいました。

株式会社TOWING 沖 直人さん

沖さん:宇宙における循環型農業の確立を目指し、高機能ソイル(*1)を使った栽培システムの開発をしています。高機能ソイルは植物の炭に微生物を加えた人工の土壌。有機肥料を高い効率で無機養分に変えることができ、病原菌の増殖を抑えて連作もできる。月面のような農業に不向きな環境でも、地産地消を叶える循環型の野菜づくりにつなげられると考えています。

人工の土壌を使った宇宙農業の実現を目指すTOWINGのプロジェクト「宙農(そらのう)」。イラストは月面基地での農業イメージ
植物の炭に微生物と有機肥料を加えた、高機能ソイル

炭素を農地に固定して、CO2排出量を削減

植物の炭でできた土を使った栽培は、炭素を農地に固定することにもなります。さらに高機能ソイルの材料は、廃棄や焼却されるはずだった作物残渣なのだそうです。

沖さん:苗で計算すると、1株あたり200gのCO2を削減できます。これは自動車が1km走行するときに排出するCO2と同じ。栽培量が増えればそれだけ多くのCO2を削減できる。宇宙だけでなく地球上の栽培システムとしても、サステナブルな農法といえます。

高機能ソイルで育てたピーマンの苗

大手建設会社とともに月の模擬砂を使った植物栽培の実証実験をするなど、宇宙農業の可能性を探る
TOWING。その一方で、今春には愛知県刈谷市に自社農園をオープン、高機能ソイルを使った本格的な野菜づくりを始めています。

沖さん:人工土壌をベースにした農法で、農業自体のサステナビリティ向上に寄与したい。私たちが育てたピーマンをとある小学校で試食してもらいましたが、「苦くないのに味が濃くておいしい」と好評でした。実際に、アミノ酸やビタミンの量が多くなることが、栽培試験から明らかになっています。

自社農園のピーマン栽培風景

「宙ベジ」ファンを増やし、サステナブルな農法を広めたい

9月に開設したオンラインストアで、「宙ベジ」として一般向けの販売もスタート。今はピーマンのみですが、話題性の高さもあって出品するたびにすぐ売れてしまうといいます。

「宙ベジピーマン」1kg:1,080円、2kg:2,160円、4kg:4,320円(すべて税込)

沖さん:サステナブルな農法による野菜として「宙ベジ」をブランド化し、自社以外にも栽培を広めて行きたい。高機能ソイルは土壌改良剤としても優れていて、休耕地への利用も期待されています。通常3~5年くらいかかるところ、わずか約1カ月で良質な土壌をつくることができます。

今後は品目もトマトやショウガ、ウコン、イチゴなどと増やしていく予定。どんな味か試してみたいと思ったら、売り切れも多いのでこまめにサイトをのぞいてみるのがオススメです。

(*1)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発した技術に基づき、TOWINGが栽培システムとして実用化。

▼「宙ベジ」のオンラインストア
https://soravege.towing.co.jp/

文/時津 木春