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古い倉庫や建物を新たな価値で再生し個性豊かな人が集まる街に。 埼玉・戸田発、建築会社の挑戦

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埼玉県戸田市を拠点に、住宅や店舗の設計・施工を手掛けているサンクジャパン株式会社。同社では、コロナ禍を機に不動産事業をスタートし、地域で使われていない倉庫や建物をリノベーションし、飲食店、クリエーターや設計事務所に貸し出す事業を展開しています。戸田の街が抱える課題、そして、企業自らまちづくりを推進する理由とは何か。代表取締役の清水公彦さんにお話をうかがいました。

目次

300人以上の職人と協力し、内装・外装仕上工事をトータルで受注

ソトコト まずは御社の事業について教えていただけますか?

清水公彦(以下、清水) 住宅設備メーカーの営業を経て2007年に起業し、建物の内装・外装の仕上げ工事を請け負っています。社員は10数名と少数ですが、300人以上の職人さんとの協力体制を持ってプロジェクトを受注しているのが特徴です。その他にも設計や不動産、まちづくり事業、職人さん向けの経営塾なども運営しています。

独立前には5年間、建築の現場で勉強をさせてもらい、そこで初めてものづくりの世界に触れたのですが、さまざまな課題があることがわかりました。建築の仕事は細かい分業制です。内装・外装仕上工事のほかにも、大工や基礎、水道、電気やガス工事など20〜30の工種があり、それぞれ別の職人さんが関わっています。それらをまとめる工務店の現場監督の仕事はとても大変で、「これでは将来成り手がいなくなるのでは」と感じていました。

そこで、多岐にわたる仕上工事をすべて請け入れできる会社があれば、作業もスムーズに進み、現場監督さんの負担も軽減できるのではと現在のビジネスモデルを思いつきました。

ソトコト 「職人不足」ともいわれている中、300人規模のネットワークをどのように作り上げていったのでしょうか。

清水 初めは職人さん一人一人に地道に声をかけて関係性を広げ、そこから複数の職人を抱える社長に打診して、現在の規模になりました。埼玉県内を中心に東京にもネットワークを持ち、住宅や店舗、オフィスなどの工事を手掛けています。

私自身、住宅設備メーカーの営業の経験があり、職人さんと営業の勝負をしたら負けない自信があります。しかし、職人さんと現場でものづくりで勝負したら、必ず負けます。ならば、自分の強みである営業力と、職人さんたちの技術力を掛け合わせてお互いのスキルを発揮すれば、よりよいソリューションを提供できると考えました。職人さんとサンクジャパンの役割分担を明確にし、自分たちが得意なことを活かして協力しあう組織です。

コロナ禍で不動産事業に進出。 古い建物をリノベーションして個性的な人たちの活動の場に

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ソトコト 不動産事業を展開しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

清水 不動産事業を立ち上げたのは2年前、新型コロナ感染拡大の真っ只中です。当時は緊急事態宣言や外出自粛によって遠出できない期間が続いていました。

コロナ禍では、自宅の近場で旅行や観光を楽しむ「マイクロツーリズム」というスタイルが広く知られるようになり、そのスタイルにとても共感したんです。そして、「戸田にもサンダルで気軽に行けるような面白いお店や場所が増えたら、もっと暮らしやすい街になるだろう。そんな場づくりができないか」と考えるようになりました。

一般的の不動産屋さんは設計やリノベーションまで自社で手がけている企業は多くはありません。自分たちには設計と施工チームがいます。「どうせ始めるなら、サンクジャパンらしい強みを活かそう」と、現状のままではスクラップされてしまう古い物件をこれまで8件ほど取得し、設計・リノベーションしてリーシングしています。

ソトコト 古い建物に注目した理由は?

清水 もともと古着やロングライフデザインのプロダクトが好きで、古くて味のある建物を見ているだけでワクワクするんです。また、自分たちの建築現場で出た廃材を利活用したり、地域の人に無料で配って再利用してもらっています。

戸田の街を歩いてみると、駅周辺にも長く使われていない倉庫や建物があります。現在のオフィスも元々は自動車整備工場で、偶然見つけて大家さんと交渉し、リノベーションさせてもらっています。ただ、古い建物の弱点は水回りが古かったり断熱性が低かったりするため、従来の佇まいは残しながらも、意匠や機能性をプラスして新たな空間へとアップサイクルしています。

ソトコト 現在、どのような方が入居されているのでしょうか。利用者の反応はいかがですか?

清水 居酒屋やイタリアン、ステンドグラス工房、設計事務所や自転車工房などにご入居いただいています。みなさん喜んでくださっていて、古い建物が好きな方や個性的な方が多く集まっている印象です。「不動産情報サイトで長らく物件を探していたが、ようやく気に入る物件に出会えた」と言っている方もいらっしゃいます。

街をもっと面白くするなら、大企業を誘致するよりも個性的なクリエイターや個人事業主が集まることが大切だと思っていて、それが結果的にまちづくりにつながると考えています。

振り返ってみると、コロナ禍は自分の仕事観を見つめ直す良い期間になったと思います。サンクジャパンの社是は「仕事を楽しむ」ことです。今までの頑張りで事業の礎を築くことができたので、新規事業もポジティブに挑戦することができました。

人が集まる拠点を増やし、戸田を“ごきげんな街”にしたい

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ソトコト 近年、戸田市は若い方を中心に人口が増えているとお聞きしました。戸田の特徴にはどのようなものがありますか?

清水 戸田は埼京線で池袋まで20分と都心へのアクセスが良好な街です。昨今、特に若いファミリー層が多く移住し、平均所得も埼玉県内で上位に位置しています。

街の機能を有しながら、自然との距離が近いのも特徴です。周辺は緑や公園が多くあり、彩湖・道満グリーンパークではBBQやテニス、サッカーなどのレジャーも楽しめます。私は東京・文京区の生まれですが、戸田に住むようになって、こんなに自然豊かで暮らしやすい場所があったんだと驚きました。

一方でいくつかの課題もあります。戸田で暮らす方の多くは都心に通勤しているため、昼夜間人口の差が大きいです。また駅前にはいわゆるチェーン店が多く、“戸田らしさ”のような街の個性が育めていないと感じています。できれば「戸田で働き、戸田で暮らせる街」にしたい。そのためには、個性的な個人店や会社が増えることが街の魅力創出につながると考えています。

私たちは長らく店舗設計施工に携わってきました。レストランや美容院、商店のような地域に開かれた場所を増やすことで、街に活気が生まれ、魅力が増すのではないでしょうか。理想を実現するには5年、10年では足りませんが、自分たちが始めたことで、最近では同じ問題意識を持つ方々が増えているようにも感じます。

ソトコト まちづくりに関する知見はどのようにして深めていったのでしょうか。

清水 約10年前からまちづくりの成功事例を視察していて、尾道や徳島、北海道浦幌町など全国各地を訪ねています。活気あるまちに共通しているのは、使われていない建物や校舎などをうまく活用して人が集まる拠点を生み出していること、またそのまちが大好きな熱のある人たちがいることです。私たちも各地の事例を参考にしながら、リノベーションや不動産事業に活かしているところです。

スタートアップに経営のイロハを指南する勉強会もスタート

ソトコト 最後に、今後の展望を教えてください。

清水 若く活気のある経営者やスタートアップを支援するため、今年から「39スクール」という勉強会を始めました。物件をご紹介しているうち、「独立してお店を開くため、いい物件を見つけたものの、必要な開業資金が調達できず契約できなかった」といった事例に多く出会いました。そこで、経営戦略の作り方や事業計画策定のサポート、金融機関との交渉の仕方などを無料で勉強会を開催しています。

「不動産屋さんがそこまでやるの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。でもいい意味で、地域にとっての“おせっかい”な存在でありたいと思ってるんです。戸田で働きたい、暮らしたいと集まる人が増えて個性豊かな街になるためにも、長い視点で続けられたらと思います。

■ソトコト×GOMITAIJI

SDGs の目標12「つくる責任 つかう責任」のターゲットである「廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」への啓蒙活動として、企業のアップサイクルや、GOMITAIJIの取り組みを紹介するコンテンツを「ソトコト×GOMITAIJI」としてソトコトオンラインにて掲載していきます。

一般社団法人GOMITAIJI:https://www.gomitaiji.or.jp/

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