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“仁淀ブルー”の町が実践する「物語で食べる」新しい観光の形(高知県仁淀川町)

ソトコトオンライン編集部

ソトコトオンライン編集部

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清流日本一の高知・仁淀川町で、地域の飲食店が結束して生み出した新しい観光スタイル「まちゆうでグルメ」。一皿ごとに食材の背景や作り手の想いを伝える「物語」で、観光客の心を掴む試みが注目を集めている。

目次

清流の町が直面した「素通り観光」の現実

高知県仁淀川町は、その美しさから「仁淀ブルー」として全国に知られる清流を持つ観光地だ。しかし、多くの観光客が川の美しさを楽しんだ後、食事や宿泊は町外で済ませてしまう「素通り観光」に長年悩まされていた。

「町にお金が落ちない」──この切実な課題に立ち向かうため、2022年に仁淀川町観光協会と町内事業者が結束。「まちゆうで事業」を始動させた。

「まちゆうで」は土佐弁で「町のおじちゃんおばちゃんたちが待っていますよ」という意味。温かな方言に込められたのは、観光客を家族のように迎え入れたいという地域の想いだった。

補助金に頼らない「自立型地域創生」の実践

注目すべきは、この取り組みが国や県からの交付金・補助金を一切使わず、すべて事業者の自主的な意思で進められていることだ。月1回、有志の事業者と観光協会が集まり、「食べる」「楽しむ」「泊まる」の3つの領域で課題解決を検討してきた。

事業3年目の2024年、ついに結実したのが「まちゆうでグルメ」。単なるご当地グルメではない、独自のコンセプトを持った取り組みだ。

「物語で食べる」新発想のおもてなし

まちゆうでグルメの核心は「食にまつわる物語を楽しむ」こと。料理を提供する際、食材の歴史や作り手の想いを記載した「まちゆうでだより」を添え、一皿に込められたストーリーを伝える。

この発想の背景には、全国の観光地との差別化への切実な想いがある。どの土地にも美味しい郷土料理はある中で、仁淀川町が選ばれるためには何が必要か──答えは「物語」だった。

6店舗が織りなす多彩な「仁淀川物語」

5月23日からスタートした「まちゆうでグルメ」には、個性豊かな6店舗が参加している:

①秋葉の宿「生きくらげギョーザ」(700円) 仁淀川町産の生きくらげのプリプリ食感と、高知の酒文化で愛されるギョーザが融合した新食感メニュー。

②喫茶○まるはち「キクラゲとトマトピューレのカレー」(1,200円) キクラゲの黒色が印象的な、見た目にもインパクトのあるオリジナルカレー。

③茶農家の店あすなろ「お山のからあげ」(800円) こんにゃく、しいたけ、きくらげを使ったヘルシーな唐揚げ。茶葉の薬味で山の香りを演出。

④てっぺんテラス「土佐あか牛サーロインステーキコース」(18,000円〜) 宿泊者限定の贅沢コース。地元野菜とハーブが彩る最高級の一皿。

⑤土佐料理きたはら「あめごの焼き浸し」(8,800円〜) 清流で育ったあめごを使った、仁淀川町ならではの郷土の味。

⑥中津渓谷ゆの森「明神山のめぐみと四季折々の小鉢」(1,200円) 稚あめごのマリネと季節の小鉢で、四季を通じて楽しめる構成。

地方創生の新しいロールモデル

この取り組みが示すのは、地方創生における新しい可能性だ。行政頼みではなく、地域の事業者が主体となって課題解決に取り組む「自立型」のアプローチ。そして、単なる「食べ物」ではなく「体験」を提供することによる付加価値の創造。

「稼げる観光」を目指す仁淀川町の挑戦は、全国の観光地が抱える共通課題への一つの解答といえるだろう。

観光客の心に残る「物語」を紡ぎ、リピーターの獲得につなげる──。清流の町から始まった小さな革命が、地方観光の未来を変えるかもしれない。


まちゆうでグルメの詳細

取材・文/ソトコトオンライン編集部

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