尾道を舞台にした映画『逆光』
既成概念にとらわれず、違和感をごまかすことなくまっすぐにチャレンジする俳優で映画監督の須藤蓮さん。同氏が初監督を務めた尾道が舞台の映画『逆光』の挑戦を「THE KNOT(ザノット)」が応援しています。
映画は「東京から地方へ」公開していくということが鉄則であり、「地方から東京へ」という順番は、常識的にはありえないやり方だということをご存知でしたか?
須藤蓮さんの考える「本当に楽しい映画体験」とは?
蓮さんは、作り手と観客が言葉を交わしあうということ、喜びや苦しみを分かち合うこと。そういう時間には、単に作品を宣伝して興行を成功させるということ以上の価値があり、こういった体験の中にこそ作品の本当の価値、つまり「本当に楽しい映画体験」があるのでは、と話します。撮影舞台になった広島から映画を公開していきたい。この想いを実現するために自主配給・宣伝という選択をしました。
映画『逆光』の配給活動を通じて、新しい映画文化の可能性を掘り起こしたい
一方的な広告宣伝ではなく、制作側と観客側のインタラクティブな対話を通して、作品に対する個々の価値創造を試みようとしているのか? 蓮さんが何を大切にしていて、なぜ業界の非常識ともいわれる方法にチャレンジをするのか? 彼に直接話を聞く機会を得たので、少し紹介します。「須藤蓮」という人物はとんでもなくまっすぐで、それはこの映画の中で色々な表情を見せる「光」そのもののような人でした。
タイトル:「逆光」と光について
コロナ禍での撮影だった今回、蓮さん自身もどんよりとした空気があり、しかし、美しい日差しに癒されていたい自分がいたと話しています。
「逆光」というタイトルから撮影の技法のヒントを得たこともあり、また光とは、癒されたり、惑わされたり、見えなかったり、夜は月の光だったりと、様々な表情があります。場所によって全く違う色を放つもので、そういった感覚的なものを言語化せず、追いかけるように撮影したそうです。
「間のあいまいで混沌としている、ありのままを撮りたい
人はどこにスポットライトをあてるかによって見える面が違う。ファッションが好き、土臭いところが好き、美しい女性に惹かれる、または同性を魅力的だと感じる瞬間があったり。一見両極に見えるものが一人の人の中に存在することはごく当たり前で、人はそんなにシンプルではないし、わりきれないもの。人の魅力が違って見える「瞬間」がすきだ、と話す蓮さん。映画の登場人物たちも、そんな瞬間を意識したのだとか。
今回の映画の脚本を担当された渡辺あやさんが、監督である蓮さんの卓越した才能を「他人の潜在的な美点を見抜き最大限に開花する力」と表現されています。「あー、なるほど、彼の才能はこういう感覚から生まれているのか」と話を聞いて、妙に納得しました。蓮さんは今回の映画の中で「社会に認められない恋愛」を描きたかったのだと話します。
その中で、たとえ同性愛のストーリーを描くにしても、恋愛対象とならない異性を魅力的に撮らないという、そこに抱えていた想いが嘘になるような単純な表現ではなく、男性は男性の、女性は女性の、それぞれの美しさをそのままに、良い人悪い人なんて簡単にはわりきれない、人間とは本来混沌としている、そういうあいまいな部分をそのままの魅力で撮りたい。そう思ったそうです。
利他的である、という意味
「どうして恐れず挑戦ができるのか」の問いには、彼自身とても臆病な人間、と意外な答が返ってきました。そして
「本当はひとりで享受できないものを、例えば『愛』や『幸せ』、『生きる意味』など、ただ一人だけで享受をしたいと思った瞬間に『恐れ』というものがでるのではないんだろうか。大切にしたい人や、家族、もしかしたら業界かもしれない。誰か大切な人たちのために生きると思えたときに、自分に対する評価という小さなものではなく、より大切なものが見え、恐れがなくなる。自分以外の何かを背負った時に人は強くなれ、それはつまり自分らしくいられる、というところのかもしれない」
そう教えてくれました。
蓮さんにとって尾道の光はオレンジだったと言います。あたたかくもせつない色。セットでは出せない、自然が織りなす空気や色を大画面で見てほしい。ほんのり切ない終わり方が欲しかったというこの映画は、目を閉じてもじわっと映る残像が心地よい余韻の映画でした。
2021年7月17日(土)から尾道市「シネマ尾道」、7月22日(木)からは広島市「横川シネマ」にて上映開始です。
公開を記念して7月12日から広島市では映画「逆光」にまつわるさまざまなイベントが予定されています。広島蔦屋書店での蓮さんと脚本家渡辺あやさんのトークイベントや、人気セレクトショップref.でのコラボ商品の発売、『逆光』と同じ時代設定の70年代古着の展示、販売など魅力満載。
今年の夏の思い出に7月の連休は尾道や広島市内をイベントに合わせて旅をするのも贅沢ですね。「本当に楽しい映画体験」の実現を、蓮さんと一緒に体験してみませんか?