預金なし!

預金なし! 30代独身女性、心機一転田舎に移住してみた

2021.10.17

仕事で東京を訪れたとき、街全体が巨大な工場に見えた。無表情で同じ方向へと足早に進む姿は、ベルトコンベアで流れている“モノ”のようだった。 東京に暮らして2年経った30代の私は、あるときはっとした。「今、ベルトコンベアで流れているモノの一つになっている!」そう気付いた私は猛烈に思う。「田舎で地に足のついた暮らしがしたい」と。 10年前、大都会の工場から抜け出して千葉の田舎へ単身移住した私の、女一人移住物語を紹介する。

下調べはどこまで必要? 鉄は熱いうちに打て!

移住することを考えたとき、あなたはどこまでリサーチする? その場所はどんな土地なのか、どんな人たちが住んでいるのか、移住者への支援はあるのか、格安のいい物件はあるか、生活していけるだけの収入を得られるかなど、考えだしたらきりがないだろう。それらを全てクリアにしてから移住しようと思うと、いったいいつ移住できるのやら。そうこうしているうちに、「移住したい!」という気持ちまで冷めてしまいそうだ。

不安で悩む女性

私の場合、移住前の一年間に5回くらい現地を訪れ、カフェで開催されているイベントに参加したり、田んぼ作業の手伝いをしたりした。そして思ったのは、東京にいながら理想の家を見つけるのは無理だということ。ときどき訪れて、「いい物件あったら紹介してください」なんて言っても、本気で力になってくれる人はそうそういないと思った。逆の立場だったら、どこまで本気か分からない人に対して、自分の時間を割いて協力することはよっぽどでないとやらないな、と。本気なら、自ら飛び込んで行って探すべきだ。行ってやるだけやってダメだったら、そのときは別の場所を探せばいいのだから。

家賃3万円以下のアパートに入居することだけを決め、ダンボールに詰めた荷物を友達の車に積み込んで、とりあえず千葉の田舎へ向かった。

預金なし、仕事なし、さぁどうする!?

田舎暮らしで心配なのが、収入だと思う。副業で細々とwebショップを運営していた私は、田舎暮らしを始めたら収入が減って当分海外には行けないと思い、買い付けに行くことにした。

荷物を新居に運んだあとそのまま空港から飛び立ち、3カ月ほど旅をしながら“買い付け”と称してぱ~っとお金を使って帰国。最低限、自由に使えるお金を10万円ほど残しておいたと記憶している。買い付けはしたので、いざとなれば本気で売りまくればいいだろうという安易な考えだ。

農作業をする女性

当てにしていた農業の仕事は、農閑期で募集なし。農家の仕事はいつでもあるものだと思っていたが、そうではないらしい。作物によって繁忙期があって、人手が欲しいのは繁忙期なのだ。

仕事が決まらなくても、地元のスーパーや景色が新鮮で、カフェなどで新たに出会う人たちと話をするのも楽しかった。出会った人たちには、理想の家と仕事を探していることを必ず伝える。移住相談のNPO法人の方とつながり、「ハローワークにこんな仕事が出ているけど、どう?」と教えてくれたのがきっかけで無事仕事をゲット。移住してちょうど一カ月後が初出勤となった。

今思うと、移住前に移住相談のNPO法人とつながっておくとよかったのかもしれない。そして田舎での求人はクチコミとハローワークでの募集が多いので、ハローワークにも行くべきだっただろう。

正社員になる必要ありますか?

移住後初めての仕事は期間限定の臨時職員だった。やりたい仕事内容だったのと、この仕事をしているうちに他にいい仕事が見つかるかもという考えもあったが、とにかく預金がないのですぐにでも働きたかったのが一番の理由だ。

ライフバランス

家族がいるとそうもいかないかもしれないが、単身での移住は最悪自分一人食べて行ければそれでいいのだ。やりたくない仕事をして食べていくよりも、例え質素な食事になってもやりたいことをやって生きていく方がいいと思っている。お金が底をつきそうになったら、自分のなかの天秤が仕事よりもお金に傾く。そのときは、一定期間お金のためにがんばって、自分にとってちょうどいいバランスを保っていけばいい。

正社員でなくてもいいなら、田舎でも仕事はたくさんあった。草刈り、別荘の清掃や管理、農家さんごとの繁忙期の仕事、カフェやレストランでの仕事など。私の場合はそういった仕事プラス、webショップやイベント出店があったのでそれだけでも心強かった。

仕事は自分で作れる!

田舎へ女一人での単身移住を考えている人は、何のために移住したいのか、移住して何をやりたいのかを明確にしておくと、そのためならがんばれるというパワーが湧いてくるだろう。あとは、なにか副業があると気持ちに余裕がでる。決まった職種に当てはめなくても、自分ができることを仕事にしていけばいいのだ。実際自分ができることを便利屋さんとして引き受け、家族を養っている人もいるのだから。

副業をする女性

最近はパソコンとネット環境さえあればできる仕事も増えているので、田舎ならではの仕事と組み合わせてバランスを取りながら、あなただけの女一人移住物語を満喫してほしい。

写真:イラストAC
文:鍋田ゆかり